【AC】Step8「傷つけた人」その④『高校からの同級生Sさん』

step8.傷つけた人の棚卸しです。

Sさんとの関係

Sさんは、高校時代からクラスメイトでした。

小さい頃からピアノを習っていたそうでショパンやラフマニノフやリストが弾ける子でした。学校の成績は良く、顔も良かったので、リア充寄りのキャラクターでした。

私みたいな根暗は本来なら縁遠いタイプの人でしたが、高校時代はテニスで県内ベスト4で「スポーツができる人」と一目置かれていたことと、共通の特徴として、教師に非常に反抗的な性質を持っていたことから、よくつるんでいました。

彼との関係が一変したのは、大学受験からです。

私はある程度の私立大学に合格し、彼は上を狙って全て落ちました。

彼は正直、学力の面では自分の方が上だという優越感を、私に対して抱いていたようにみえました。私より偏差値の低い大学に行くのは、プライドが許さなかったのか、留年して大阪にある河合塾の予備校に通い始めました。

私が大学で狂ったようにエチルアルコールを摂取し始めたのと同じように、彼もまた酒を飲み、あまり真剣でない予備校仲間に唆されて、夜遊びが中心の生活を送るようになりました。

当然学力の向上は見込めず、彼は現役のときに合格できた実力よりも偏差値の低い大学に、行かざるを得なくなりました。

それから彼は私に対してコンプレックスを抱くようになりました。会っても私より優れているところ、つまり容姿や女性ウケの良さを自慢するようになりました。

かつて教師という共通の敵を持っていたころの関係の心地よさは消え失せ、徐々に居心地の悪い間柄になっていきました。

そして、私が4年の大学生活を終えて最初の会社に就職するころ、彼は統合失調症を発症しました。

自分の自尊心を保つために彼を利用した

私の反省は、ここから深いものになります。

なぜなら、私は彼を自分の自尊心を保つために利用したからです。

私は就職はしたものの、ブラックすぎるベンチャー企業の実態に「失敗した」という忸怩たる思いを抱えていました。

酒に逃げたのと同様に、私を安心させてくれる「下」を探していました。

それがSさんでした。

彼が連絡してきて、「今中学生と付き合っている」とか「オタサーに入って一番モテている」というような自慢話をしました。大して興味もないくせに彼の話を聞いたのは、自らの欲求を満たすためでした。

すなわち、彼を下にみて「こいつは俺より何もない」と確認し、安心したがったのです。「まだ女の話なんかして、バカじゃないのか、それしか話すことがないのか」と馬鹿にして腹の中では嗤っていました。

とてつもなく醜い心でした。

「彼がさびしいだろうから」などと優しさを取り繕った吐き気を催す建前に隠して、こんなにも利己的な本心を持っていると認めたくなかったので、私は無意識に目を背け続け、努めて認識しないようにしました。

私は彼が、自分が働けていないことを気にすると容易に想像できていたのにあえて「仕事がいかに大変か」「どれだけやりがいがあるか」というような話をしました。

彼が目をピクピクさせながら聞くのを見て日頃の溜飲を下げました。

対人依存が決定的になった借金

彼の統合失調症は悪化しました。

あるとき、「治療費が払えなくなった」「金を貸してくれ」と彼から言われました。

それは甘美な申し出でした。

頼られる、養う、そういう扶養側の立場にいることで、もはや朧げだった存在意義を繋ぎ止めるのに、彼を利用できるからです。

渋るふりをして、私は内心いそいそと、30万を用意したのでした。

完全な対人関係依存だったといま振り返ると、思います。

金を貸した側という正しさを振りかざして、自分が彼を利用したくせに、なかなか返ってこないばかりかさらに上乗せで借金を申し出てきた彼を罵倒しました。

人を正しさで攻撃することは、気持ちの良いことでした。

彼を責めている私は正しい、彼が間違っているのだから、相対的に私が正しい、なぜなら是正する側なのだから、という考え。

下を捕まえて叩きのめすことで自分の自尊心を回復させようという下卑た意図がありました。

彼の病気を理解しようとせず、「働こう、返そうと思えば返せるはずだ、それがないのは、返す気がないからだ」と言いました。

「絶交だ、そんなようだとこれからも友人をなくすよ」と言いました。

自分が精神疾患に罹り、それがどれほど酷い言葉かよく分かりました。働きたくても働けない、そんな状態だったかもしれないのに。そんなとき、こんな言葉をかけられたら、私はとても辛い気持ちだったでしょう。

謝罪のことば

彼がどうしているかは、今はわかりません。

Sさん、私は自分のために、あなたを下に居させて利用しようとし傷つけたことを、心から謝ります。

本当に申し訳ありませんでした。

金を返す返さない、そんな問題より先に、私はあなたを傷つけ、追い詰めるような接し方をしました。自分のことしか考えていませんでした。

あなたにも尊敬するべき個性があり、目に見える物差しで推し量ることなどできない尊厳があったのに、それを当時わからずに貶めました。

私なら許さないでしょう。

そういうことをしたと、ここに改めて認めて、謝罪させてください。

本当にごめんなさい。

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