【メンタル】知ってるつもりでよく知らない「ホルモン」のトリセツ①(ホルモンと神経伝達物質の違い)

こんにちは、ちあき です。

最初にお詫びしておきたいのが、この情報は何かの薬学系の雑誌で個人的に勉強していた時のメモなのですが、出典がわからず、引用元が記載できないものもございました。

申し訳ありません…。こういうのはメモっとかなきゃな…。

というわけで、知っているようでわかりにくい「ホルモン」と「神経伝達物質」について解説していきたいと思います。

ホルモンって?

ホルモンは種類によって、分泌される部位がいろいろ分かれています。

画像引用:東京女子医大学 高血圧・内分泌内科 患者さん向けHP

視床下部:ドーパミン

下垂体:成長ホルモン、オキシトシン

松果体:メラトニン

副甲状腺:副甲状腺ホルモン

胃:グレリン

副腎(皮質):コルチゾール、アルドステロン

副腎(髄質):アドレナリン、ノルアドレナリン

膵臓:インスリン

腸:インクレチン、セロトニン

卵巣:エストロゲン、プロゲステロン

精巣:テストステロン

ホルモンは、細胞から血管の中に放たれ(ホルモン分泌)、血管を通って全身を循環します。

ホルモンの種類には、蛋白質のもととなるアミノ酸が数個から100個以上つながった形のペプチドホルモン(成長ホルモン、インスリン、オキシトシン)、コレステロールを材料につくられるステロイドホルモン(副腎皮質ホルモン、エストロゲン、テストステロンなど)とアミノ酸のチロシンの誘導体であるアミン(甲状腺ホルモン、アドレナリン、ノルアドレナリン)があります。

引用:看護roo!ナースみんなのコミュニティ 標的細胞を刺激するホルモン|調整する(3)

神経伝達物質って?

神経伝達物質は、神経細胞間の領域であるシナプスにおいて情報伝達を介在する物質です。

神経伝達物質は大きくアミノ酸、ペプチド類、モノアミン類の3種類に分けられます。

神経細胞には神経伝達物質に対応する、アセチルコリン受容体、アドレナリン受容体、GABA受容体、ドーパミン受容体、セロトニン受容体などが存在し、受け取ることで活動電位が発生します。

神経細胞から放出される各種神経伝達物質のざっくりとした働きのイメージは下記の図の通りです。

引用:https://www.igaku.co.jp/pdf/1205_medicinal02.pdf

ノルアドレナリンやドーパミンはこのうちのモノアミン類に含まれます。

モノアミンは、アンモニアの水素原子を炭化水素基で置換した化合物であるアミンのうちで、アミノ基を一個だけ含むものを指します。ノルアドレナリンドーパミンセロトニンはいずれも非常に重要なモノアミン神経伝達物質です。

またオキシトシンはポリペプチド類で、中枢神経での神経伝達物質としての作用があります。

(引用:https://sankyobo.co.jp/dicdet.html)

この二つは何が違うの?

ここまで見て、あれ?とお気づきの方もいるかもしれませんが、先のホルモンの一覧の中には、神経伝達物質でもある、同じ名前がありますよね?

そう、「どこからどこに放出されるか」でホルモンと呼ばれたり、神経伝達物質と呼ばれたりするのだけで、同じ物質です。

「末梢組織から血液中に放出される」なら、ホルモン。(血液中を船で航海して遠くまで運ぶイメージ)

「神経細胞からシナプス間隙に放出される」なら、神経伝達物質。(神経細胞をA駅から近場のB駅まで快速電車で手紙を送るイメージ)

どちらも「細胞間情報伝達物質」というのが、最も誤解のない共通の呼び方だと言えます。

神経細胞の軸索から同じ物質が放出されたとしても、シナプスで放出された場合は神経伝達物質という括りになり、血液に放出された場合は、ホルモンという括りになったりします。

神経伝達物質の多くとホルモンと化学的特性としては、実はほぼ同じものなのです。

ですので、特にピンク色の物質については、どちらのほうが早いとかどちらのほうが遅いとか、そんな違いはありません。

だって、どこに放出されるかが違うだけで、神経にも血液にも流れる、同じ化学物質だからです。

引用:https://www.kango-roo.com/sn/k/view/1709

例えば、オキシトシンってどんな働きをするの?

オキシトシンは、情動に関するホルモンとして大変重要な働きをしています。

J-stageで「オキシトシン神経系を中心とした母子間の絆形成システム」(永澤美保,2013)において、以下のようにオキシトシンと内因性オピオイドの関係が分かりやすくまとめられていましたので、引用しながら紐解いていきます。

社会的接触はオピオイドの分泌を促すため、気持ちよさを感じる

“Love is addiction”(Insel, 1997)という言葉の通り、社会性を持つ動物は同種の動物に強く惹きつけられ絆を形成します。絆形成によってもたらされる社会的接触はオピオイドの分泌を促しますが (Panksepp & Bishop 1981;Nelson & Panksepp 1998)、オピオイドは鎮痛や不安緩和の効果を持ち(Panksepp他,1980;Billington他,1990)、さらにこのような鎮痛効果は、接触した相手との親和の程度に依存します(D’Amato 1997, 1998)。

つまり、他者と強い絆を形成し、社会的接触を持つことは強力な報酬効果をもたらし、社会的親和関係構築へのさらなるモチベーションを生じさせることが考えられます。

オキシトシンは長期的な内因性オピオイドの分泌を促し報酬効果を増強する作用がある

オキシトシン神経系の活性化はオピオイドの放出を促進すると言われています。

長期的なオキシトシン投与は、ストレスを軽減するのみではなく、鎮痛効果を持つことも実証されています(Uvnas-Moberg他,  1993)。

この長期投与による鎮痛効果はオピオイドアンタゴニストであるナロキソンによって抑制されるものの(Uvnas-Moberg, Bruzelius, Alster, et al., 1993;Uvnas-Moberg, 1997)、オキシトシンアンタゴニストでは効果が認められないことから、長期的なオキシトシン神経系の 活性化は内因性オピオイド伝達を増強していると考えられます。

オキシトシン神経系の活性化は、中脳辺縁系ドーパミン経路も増幅させます(Wang & Aragona 2004;Young & Wang 2004)。

つまり、オキシトシンは内因性オピオイドを適量に調整するというよりは、むしろ増強作用をしめすホルモンです(抑制作用を発揮するのはナロキソン)。

オキシトシンはストレスホルモン(コルチコステロイド)を抑制する

下垂体後葉から循環血中に放出された末梢性のオキシトシンは,副腎に作用してコルチコステロイド(副腎皮質ホルモン・ステロイドホルモン=コルチゾール・アルドステロン等)の分泌を抑制します。

コルチゾールは、俗に「ストレスホルモン」と呼ばれており、コルチゾールの分泌が慢性的に高い状態が続くと、うつ病、不眠症などの精神疾患の発症、高血圧や糖尿病など生活習慣病や骨粗鬆症の発症など、ストレス関連疾患の発症原因になると言われています(https://www.jniosh.johas.go.jp/publication/mail_mag/2016/87-column-2.html)。

たとえば、人前でスピーチさせるなどメンタルに負荷をかけた場合、10~20分で2~3倍に増加すると言われており、過剰なストレスにより大量に分泌され続けた場合、脳の海馬を委縮させることが、PTSD患者の脳のMRIなどを例として観察されています。

(「うつ病の脳科学的研究(最近の話題)」山脇成人,2005)

オキシトシンが抑制作用を示して調整するのは、コルチコストロイド(ストレスホルモン)の方、というのが医学的に正しい理解ということになります。

オキシトシンは発達障害(ASD)に関連がある

オキシトシンは、発達障害とも深い関連があると言われています。

一部の自閉症スペクトラムでは遺伝子変異によりオキシトシン分泌異常の可能性があると言われているのです。個体識別能の低下はヒトの自閉症にみられる症状の一つであり、その原因のひとつにオキシト シン異常による可能性が示されています。

たとえば、自閉症児の血中オキシトシン濃度は健常児よりも低いことが明らかになっています(Modahl他,1998 )。

また一部の自閉症患者では、オキシトシン分泌に関わる分子であるサイクリックADPリボースをつくる膜タンパク質であるCD38の遺伝子に特徴的な変異があることも報告されています(Munesue他,2010)。CD38遺伝子欠損マウスは社会記憶や養育行動が低下しますが、そのマウスにオキシトシンを投与すると、それらが正常化することから(Jin他, 2007)、オキシトシン投与による自閉症の症状改善の期待が持たれています。

一部の自閉症患者としたのは、2011年7月に『Archives of General Psychiatry』に発表された研究(カリフォルニアの192組の双子の調査と数学的モデルにより、自閉症のリスク要因は遺伝子が約38%であるのに対し、環境的要因は約62%であることを示した)によって、最新の研究では、遺伝的要因のみが注目されてきた今までの風潮から環境的要因にも目を向けるべきだという方向性に舵を切られているからです。

このあたりは親の愛情不足が原因になる可能性を過小評価する形で誤解されるケースがあり、その危険性についてアスペルガー等発達障害を中心に詳しくまとめておられる下記のブログでも警鐘を鳴らしています。


そんなわけで、自閉症スペクトラムの発達障害に悩む人たちのために薬剤開発も進んでいます。

研究代表者の山末教授らは、ASDの中核症状に対する治療薬の候補として、オキシトシン経鼻剤の有効性や安全性を検討してきました(JAMA Psychiatry 2014; Brain 2014; Molecular Psychiatry 2015; Brain 2015)。

欧米でも行われてきた研究と山末教授らの研究を統合してみると、オキシトシンの社会的コミュニケーションの障害への効果は、単回投与では有効だったと一貫して報告されている一方、反復投与では、効果がなかった、あるいは山末教授らの研究のように、副次評価項目で効果を示したものの、主要評価項目に対しては有効性が見られなかった(Molecular Psychiatry 2018a)などと報告されており、結果が異なっています。

この結果が食い違う理由として、評価方法の客観性が不十分であること、反復投与することでオキシトシンの効果が減衰すること(Molecular Psychiatry 2018b)、などが疑われていました。

そんななか、浜松医科大学精神医学講座の山末英典教授は、東京大学大学院医学系研究科の大和田啓峰医師らとともに英科学誌Brainに「Quantitative facial expression analysis revealed the efficacy and time-course of oxytocin in autism」を発表しました。

自閉スペクトラム症の方の表情の特徴である『中立症状』(=顔の表情に現れるとされる基本的な6種類の感情(喜び、悲しみ、怒り、嫌悪、驚き、恐れ)に沿って表情を分類した場合、特定の感情に分類されない表情を指します。)が、オキシトシンの投与で改善することが再現性をもって検証されました。さらにこの改善効果は時間と共に変化することが分かりました。これによって、オキシトシンによる自閉スペクトラム症の治療が最適化され開発が進むことが期待されます。

リンク:「世界初 自閉スペクトラム症へのオキシトシン経鼻スプレーの治療効果を検証しました | 国立研究開発法人日本医療研究開発機構」 

リンク:オキシトシン治療で表情が豊かに?―自閉スペクトラム症の改善効果とその経時変化―

このように、オキシトシンは分娩誘発や帝王切開術など産婦人科ですでに薬剤として使われていますが、今後は精神医療の観点から活用されることが期待されています。

次回は、様々なホルモンの生成部位や、働きについてまとめられればなーと思います。

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