【依存症】禁煙したいひとへ①:タバコの実害を論理的に考えてみよう

こんにちは、 ちあき です。

私は何もタバコやアイコスを吸っている「人」が嫌いなわけではありません。

嗜好品の選択権は個々人にあると思ってます。

タバコやアイコスそのものが、個人的に嫌いなだけです。

ニコチン依存症になってしまったらたばこを手放せなくなるのは、脳医学的には仕方のないことで、その「人」そのものに罪はありません。依存性の物質である「ニコチン」こそが諸悪の根源です。

タバコをやめられない人に対して「意志が弱い人」とか「自堕落な人」とか「ヤニカス」などという評価をするのは、もはや前時代的といえるでしょう。

と偉そうなことを書いている私は、大学1年生から社会人8年目までの12年間、1日2箱~3箱を消費するチェーンスモーカーでした。

現在は卒煙して4年が経ち、タバコを欲しいとは全く思わなくなりました。

 

 

なぜタバコはやめたほうがいいのか?

タバコやアイコスを吸う人は、「いいじゃん、自分の勝手なんだから、誰にも迷惑かけてないし、税金払ってるんだから文句言われる筋合いはない!」と思うひともいるでしょう。

正直、やめるまえは私も思っていましたし、言ってました。(笑)

何より、他人に自分の行動を指図されるのが嫌なので、論理的に説明されればされるほど意地になって従おうとはしませんでした。

でも、うすうすは貴方も、「これなくていいなら、無いほうがいいよな」と思っていませんか?

ここでは、一度フラットかつ客観的に、タバコのデメリットについて整理してみましょう。

 

①臭いがくさいから

シンプルに、くさいです。

吸っている当時はわかりませんでしたが、止めてみてわかるこの悪臭。タバコを吸った直後は、コーヒーとの相乗効果で、吐く息はとんでもない毒ガスと化します。

営業職でもまだ喫煙する人はいて、会議のたびに喫煙所に行っては戻ってくるのですが、スーツも吐く息もくさいので、正直隣になりたくない、と思ってしまいます。

本人は気づいていないので、おそらく営業先でもそんな臭いを漂わせながら接客しているのか、と思うと、すこし顧客の心労がしのばれます。

 

②かかる経費が高いから

タバコは純粋に製品として高いと思います。

タバコでもアイコスでも1日1箱だとして、約500円/日。月間1.5万円=年間18万円。

アイコスの場合は、本体料金で約2万円の初期投資で、各部品の耐用年数が約1年なので、プラス2万円かかり、トータル年間20万円かかります。

耐用年数は、1日1箱の喫煙量で計算しています。チャージャーは約400回充電だから毎日充電すると1年1ヶ月で交換になりますし、ホルダーは約7,300回充電だから20本×365日=7,300で、ちょうど1年で交換になるという根拠に基づいています。

私が現在通っている専門学校の社会福祉士講座は約40万円。2年間の通学なので、年間20万円です。

つまり、タバコやアイコスを吸っている人は、ただタバコを嗜んでいるだけで、国家資格を取得できる専門学校の学費と同等の金額を毎年支出していることになります。

 

③人体に悪影響だから

こんなにお金がかかるタバコやアイコスが健康やメンタルに好影響だったら、年間18~20万円の投資も悪くはないのですが、残念ながら人体には悪影響しかありません。

ニコチンは体内に入ると様々な神経伝達物質を分泌促進させます。

一見いいように見えますが、「タバコによって」分泌促進されることが問題です。

タバコの刺激がなくては、なかなか分泌されないようになるからです。

だから、タバコがないと不安になったりイライラしたり集中できないような気がしたりする、という状況になります。

つまり、「タバコを吸うと集中力が高まる」のではなく、もともと何もなくても分泌できていたものが、タバコのせいで不自然に多量に分泌されることにより、タバコがないと通常の刺激では分泌されにくくなるので、「タバコを吸ってやっと標準レベルに戻れる」体になってしまっただけなのです。

ゆえに、タバコを吸うとストレスが解消されるのではありません。

タバコを吸っているからストレスが生じていて、タバコ由来のストレスなのを忘れて、あたかも全てのストレスがタバコを吸うと解消できていると勘違いしているだけです。

タバコが解消できるストレスは、タバコが吸えないストレスだけです。

また、メンタル面だけでなく、フィジカル面でもタバコの影響にいいものはありません。

血管を収縮させるため、血圧をあげます。末梢血管が収縮して皮膚の温度を下げます。ですので、高血圧や冷え性の原因になります。

高血圧は、3大生活習慣病のひとつで、慢性的に高血圧の状態が続くと、そうでない場合に比べて狭心症や脳卒中で死亡するリスクが高くなります。

タバコに含まれるタールは、肺に付着して肺胞を汚染します。

赤血球は通常、ヘモグロビンというたんぱく質と結合させて酸素を運ぶ役割をしています。しかし、一酸化炭素を摂取すると、一酸化炭素がヘモグロビンの中の多数のヘムのひとつに結合するとヘモグロビンの立体構造が変化して、酸素親和性が以上に強くなり、酸素を放出しにくくなるため、極度の酸素欠乏を引き起こす中毒症状となります。タバコを吸っていて長距離走をすると息切れをしやすいのはこのためです。

妊婦・子供に対する悪影響は、成人よりも高リスクです。

旦那さんが吸うたばこの副流煙はより有害で、妊婦さんが吸っていなくても、旦那さんの副流煙で間接的に喫煙状態になれば、血管が収縮して胎盤や臍の緒に十分な血液がいかなくなれば、胎児である赤ちゃんに十分に栄養と酸素が送られず、苦しい思いをさせています。

胎児がニコチン中毒になる可能性があります。

流産の確率が2倍・早産の確率が1.5倍になります。

子供が無事生まれても、発育遅延リスクが2倍、肺がんになるリスクが2倍、呼吸器系の病気になるリスクが2倍、乳幼児突然死症候群になるリスクが10倍になります。知能指数が低くなるというデータもあります。

奥さんが妊娠したのにタバコを吸っていて、何か言われたら「何をそんな神経質な」と笑っている人をよく見かけます。知識がないことは恐ろしいことだな、と思います。

 

④仕事に影響するから

喫煙者は、得意先から嫌われるリスクが高いことは明らかです。なぜなら、顧客がタバコを嫌いなケースがあるからです。どのような顧客にも好意的に対応できるよう努力するべき営業職などはもってのほかだと思います。星野リゾートなどホスピタリティの高い企業は喫煙者を採用しません。製薬会社でも、世界でTOP企業の一つ、ファイザー社は、禁煙補助医薬品を扱っている関係で社員は全員禁煙です。

また、営業職でなかったとしても、労働者として能力が低くなる可能性があります。仕事をさぼる時間が増加が増加するからです。

タバコに含まれるニコチンの血中濃度は、吸った瞬間に一気に上昇し、30分後には血中半減期(つまり半分になる)を迎え、1時間後には1/4になり、ニコチンに対する飢餓感が高まります。

喫煙者がだいたい1時間ぐらいでイライラしだすのはこのためです。

1時間に1回タバコを吸いに行っていたとすると、8時間勤務として8回。1回10分として80分。年間300日勤務だったとして、24,000分=400時間。

タバコを吸っていなかったら400時間自由に使える労働可能時間があると考えると、同じ能力でも喫煙者と非喫煙者をどう評価するかは明白です。実際、大阪府職員が2年で440回タバコ休憩で150m離れた別の建物に日参していたことがバレて処分を受け、依願退職しています。

参考:アイコスは特別ではなく少しマシな代用品

「アイコスとタバコは違う」「アイコスだからくさくないし他の人の健康に配慮している」と言うひとがいますが、それはあまり正しくありません。

 

科学的に解明できていないだけ、エアロゾルの有毒性について軽視するのは極めて危険です。

日本呼吸器学会において、非燃焼・加熱式タバコや電子タバコについても同様に健康被害の懸念を示す発表がなされています。

1.非燃焼・加熱式タバコや電子タバコの使用は、健康に悪影響がもたらされる可能性がある。

2.非燃焼・加熱式タバコや電子タバコの使用者が呼出したエアロゾルは周囲に拡散するため、受動吸引による健康被害が生じる可能性がある。従来の燃焼式タバコと同様に、すべての飲食店やバーを含む公共の場所、公共交通機関での使用は認められない。

有害物質や副流煙についても、決して安心というわけではありません。

新型タバコは周囲の人々への受動喫煙の危険が指摘されています。「煙が出ない、あるいは煙が見えにくい」とされていますが、特殊なレーザー光を非燃焼・加熱式タバコ使用者の呼気に照射すると、大量のエアロゾルを呼出していることが明白になります。燃焼式タバコ 使用者の呼出煙(“見える煙”)と同様に、大量の“見えにくいエアロゾル”を呼出しています。

世界保健機構では、「電子タバコのエアロゾルにさらされると、健康に悪影響がもたらされる可能性がある」と指摘しています。

世界保健機構がレビューした複数の研究では、電子タバコ使用者の呼出煙中のニッケルやクロムなどの重金属濃度は、燃焼式タバコの呼出煙よりも高い、PM2.5、ニコチン、アセトアルデヒド、フォルムアルデヒドなどの濃度は燃焼式タバコの呼出煙中より低いが、通常の大気中濃度の 14 – 40 倍(PM2.5)、10 – 115 倍(ニコチン)、2 – 8 倍(アセトアルデヒド)、20%高い(フォルムアルデヒド)、とされています。

燃焼式タバコの受動喫煙による健康リスクに対しては明確な科学的根拠がありますが、新型タバコの受動喫煙による健康リスクについて科学的証拠を得るにはかなりの時間を要します。有意な健康リスクではないとの主張もありますが、根拠はありません。

しかし、“見えにくいエアロゾ ル”中には通常の大気中濃度を上回る有害物質があるわけですから、「受動喫煙者の健康を脅かす可能性があると考えることが合理的である」、と世界保健機構は述べています。特に、呼吸器疾患を持つ患者さん、冠動脈疾患をもつ患者さん、などにとっては有害な影響がでることが懸念されます。また、何よりも、このような有害物質を含む呼出煙を吸わされることを望む方はいないでしょう。 新型タバコは、従来の燃焼式タバコに比べてタール(タバコ煙中の有害物質のうちの粒子成分が削減されていますが、依存性物質であるニコチンやその他の有害物質を吸引する製品です。従って、使用者にとっても、受動喫煙させられる人にとっても、非燃焼・加熱式タバコや電子タバコの使用は推奨できません。

 

タバコやアイコスを吸ってもいいことはない

いかがでしたか?

私は吸っていた当時、耳が痛い話を聞かされても「そんなの俺の勝手だろ!」と思っていました。

でも、よくよく冷静に考えてみると、それってこれらのデメリットに対する根拠にひとつも反論できてないですよね。

その深層心理にあるのは、「依存している」という事実を認めたくない気持ちです。

だから、真の理由である依存とは別の理由を話さざるを得ず、その理由は論理的かつ学術的に考えれば全く合理的ではない内容になってしまいます。

そして、賢い皆さんはじつは言いながら、もうそのことには気づいているのはありませんか?

ニコチンに脳みそを乗っ取られるなんて、馬鹿らしいと思いませんか?

賢い皆さんなら、必ずやめられます。

こんなアホな私でも、アルコール依存症で4回も再飲酒する私でも、止められたんですから。

たばこ税は年間約2兆2000億円ですが、毎年11万人以上の死者を出し、医療費支出増は約5兆円、家事や清掃等の諸経費で約1兆円かかってます。ですので、実質4兆円の赤字です。

よって、「税金払ってるんだから」は通用しません。

タバコをやめたほうがこの国の財政上明らかに有益です。

次回は、なぜ私はタバコをやめようと思ったのか、どうやってやめたのか、についてお話ししたいと思います。

では、また!

【依存症】厚労省監修の依存症啓発漫画がスゴすぎる件

韓国の金浦空港で航空会社の職員に暴行、警察に拘束された、厚生労働省のキャリア課長のニュースが話題になっていますね。

酔って空港に到着し、ホテルに帰ると言い出したり、殴りかかったり。

これら酩酊状態で行った行為を「覚えていない」ということでした。

これは「ブラックアウト」と呼ばれる状態です。

酔って行動したことについて記憶がない状態で、医学的には「異常酩酊」という酩酊状態だったといえます。

安易に非難する前に

「もしかしたら『お酒をやめられない病気』なのでは?」

と思い至った人は、世の中にどれだけいるのでしょうか?

 

話は変わりますが、

「厚生労働省 依存症対策推進室」監修による

「だらしない夫じゃなくてアルコール依存症でした」

という三森みさ先生が描いた漫画が巷で今、大変話題になっています。

この漫画が本当に素晴らしく、我が家は感動しっぱなしでした。

依存症当事者や家族がどんな点が共感され、高く評価されているのか、

恐縮ですがすこしだけ感想を交えながら紹介してみたいと思います。

 

⭐︎追記:ついに書籍化!(2020年3月2日)

 

 

オールカラーなのでWEB版と同じまま読めます。
■実はWEB版よりちょっぴり色味が明るくなってます。
■全国の依存症相談窓口の紹介付き
描き下ろし50ページ以上!
タフラブ(18p)とスリップ(27p)について、2話追加。
■最終話も調整して+10P以上変更
■WEB版の本編の扉絵6話分変更
描き下ろしの挿絵12個あります
裏表紙にちょっとしたおまけもつけておきました。
番外編も入ってます
全話ちょこちょこ作画修正しました
■WEB掲載時、スクロール用のコマ割りを書籍用に整えました。

名作と名高いweb版からさらに改良が加えられた本書は、アディクションに関わる人間は必携と言っても過言ではありません。

どんな作品か、少しだけ紹介と感想を書いています。

 

作品紹介

題 : 「だらしない夫じゃなくて依存症でした」

略称 : だら夫

作・画 : 三森みさ https://mimorimisa.com

監修 : 厚生労働省 依存症対策推進室、特定非営利活動法人アスク、時事通信社

取材協力 : 琉球GAIA、那覇断酒会、Karma

趣旨 :

「この漫画は、依存症全般に関する知識を普及する目的で制作しています。

アルコールの摂取・文化を否定する意図はありません。

また、この物語の登場人物は全て架空の人物ですが

依存症者・関係者の方の実体験談・見聞を参考に造形しております。」

とあります。

つまり、内容自体は、リアルな体験から語られたノンフィクションだということですね!

しかも三森先生によれば「聞いた話を希釈して、内容を読みやすいようライトにしている」とのこと。

壮絶な体験からエッセンスを抽出して読みやすくするのは、相当な苦労だったと想像します。

 

あらすじ :

大学の頃から付き合って結婚した「山下ショウ」と「山下ユリ」。

どこにでもある普通の夫婦の日常は、少しずつ影を落としていた。

ユリは気になる悩みがあった。

ショウが就職して社会人になり、お酒の付き合いがだんだん増えてきたころ、少しずつ彼のお酒の飲み方が変化してきたことだった…。

何よりもストーリーと登場人物がおもしろい

主人公的立ち位置の2人以外にも登場するキャラクターそれぞれに個性があり、それぞれが「あぁ、こういう人いるいる!」という親近感があります。

 

武田: ユリの勤務先の憧れの先輩。面倒見よくて社交的で明るくて優しくて気遣い抜群でしかもお酒飲まない。野球で小中高と抜群の成績を残し推薦で体育大学へ進むも、結果が出せなくなった不安からパチンコにのめり込み始める。ギャンブル依存症。

 

マユ:ユリの幼馴染。美大出身のアーティスト。個展を開くほど作品が評価されているプロ。育ってきた家庭環境が複雑。母親の再婚相手からのDV経験あり。薬物依存症。モデルは実際に活動されているフリーランスのプロカメラマンでミュージシャン・シンガーでもあるkarma(カルマ)さん。児童福祉×芸術をテーマにした「educart」でdirectorをなさってます。https://mobile.twitter.com/k6rm6

 

新藤:ショウの会社の先輩で、大学時代の武田の先輩でもあり、武田にパチンコを教えた人。お酒を飲むのが好きな面倒見の良い先輩キャラ。依存症について知らなかったが、後輩の武田からアルコール依存症やイネイブリングについて教えてもらい…。

 

これらの人々のピースが少しずつ合わさり、依存症からの回復に向かっていくのですが、毎回きになる終わり方をします。

続きが気になってたまんなくなります。

8話の終わりなんて…なぁ。

最後の一行で悶絶すること間違いなしです。

 

当事者と家族の両サイドの気持ちが描写されている

「依存症者の家族」のユリちゃんの視点、「依存症当事者」ショウちゃんの視点、それぞれの主観で物語が構築されていて、ココが「家族も当事者も共感できる」という最大のシナジー効果を生み出しています。

片側の描写のみで描かれる素晴らしい作品は今までにもありら私が好きな代表的な作品としては、以下の作品がとても勉強になりました。

 

◾︎当事者サイドの作品

まんしゅうきつこ先生の「アル中ワンダーランド」

吾妻ひでお先生の「失踪日記」「アル中病棟」

◽︎家族サイドの作品

菊池真理子先生の「酔うと化け物になる父がつらい」

 

依存症に悩む家庭では、当事者も家族もそれぞれに辛さを抱えていますが、病気についての正しい知識や周囲の理解がなくては、お互いのことを考え「許す」ことなど、到底できない修羅の中にあります。

 

いえ、正しい知識を持っていたとしても、もう一度愛したいのに、どうしても消せない記憶と憎しみと後悔を抱えて、パートナーとの深い溝を埋められずにいる依存症患者と家族のほうが多いでしょう。

 

私自身、アルコール依存症を患い、断酒を始めて4年。スリップ(再飲酒)を4回していて、直近の連続断酒期間もうすぐ2年7ヶ月になります。(2020年2月現在)

毎週断酒会に通い、支えてくれている妻の気持ちを分かったような気になっていました。

何も分かっていなかったのだ、とこの作品を通じて痛感しました。

妻と2人でこの作品を読みながら泣きました。

 

どんなサポートが望ましいか、具体的に書かれている

ユリちゃんは本当にすごすぎます。

正直、ここまで理想的な姿はなかなかできないし、ご家族は本人より辛い、と言われているので、出来なくても誰も攻めることなどできません。

「イネイブリングを止めるのはすっごく辛い(妻談)」のに、共感してアイメッセージで気持ちをアサーティブに伝えるなどして、ショウちゃんと共に回復する道を歩いて行く姿は、妻はすごく勉強になった、と言っていました。当事者にとっても、ご家族の気持ちと今までの言動の数々の背景を知る上で重要であり、ユリちゃんとショウちゃんを涙無くして応援できないでしょう。

 

依存症からの回復には、本人・家族、そして、周囲の理解が必要不可欠です。

 

アルコール依存症は過去「アル中」などと呼ばれて揶揄されてきました。

作中でもユリちゃんですら、最初のアルコール依存症に対する考えは以下の通りでした。

「私は『酔っ払うと暴力を振るって、飲んでばかりで仕事もせず、酒が切れると手が震える。』ろくでもない人がアルコール依存症になると思い込んでいた。」

依存症のイメージは、皆さんの頭の中に間違って固定されているかもしれません。

 

「意志が弱いやつがなる病気」

「だらしないダメなやつがなる病気」

「依存症になったらもう社会的に終わり」

という間違ったステレオタイプの依存症患者のイメージが未だに是正されず、それが回復を妨げています。

 

この作品は、

「依存症は誰でもなる可能性がある病気」

「心の穴を埋めるためになってしまう病気」

「回復を目指すことができる病気」

という真実を、当事者たちではない方々にも依存症を正しく知ってもらうことを考えて構成してくれています。

新藤先輩が、そのモデルケースの最たるものです。

依存症について知らなくて、後輩のショウちゃんが凹んだら良かれと思って飲みに誘う、どこにでもいる面倒見のいい先輩。

私は、断酒を継続して1年半を越えたころに立候補して時間をもらい、「私は依存症です」と会社の同僚全員に定例会議で10分間のプレゼンで病気を公表して社内で勉強会をすることで、理解してもらえる環境を自分から整えようとしました。

しかし、この方法はすごく精神的にシンドイのでお勧めできません。(笑)

プレゼンでは緊張で口がカラカラになって唾も飲み込めないし、脂汗が止まらなかったです。

 

全く理解してもらえていなくて辛かった時期、私の会社での日々は、こんな言葉を常に投げかけられる毎日でした。

「飲まなくなってつまらなくなったなぁ」

「本当は飲めるのに飲まないなんて失礼」

「酒も仕事のうちなのに、できねーやつ」

「依存症ってほどじゃないよ普通でしょ」

 

 

面倒見の良い新藤先輩みたいな優しい人ほど

「本当は飲みたいのに我慢しててかわいそう」

とか

「酒癖が悪いだけだから気にしない方がいい」

とか

言ってしまいやすいことを、この作品はよーく踏まえています。笑

そのうえで、先輩が正しい知識を知り、本来持っている優しさをどう発揮すれば本人のためになるか、理想的な姿が描かれています。

私の妻が

「こんな先輩が一社に1人、一家に一台みたいな感じでいてくれたら、すごくいいのに!」

と叫んだほどです。笑

 

ハラスメントがさかんに取り沙汰される現代。アルハラも例外ではありません。

会社のマネージャークラスは必見、といっても過言ではないでしょう。

 

また、ご家族が陥りやすい「イネイブリング」についても、丁寧に描かれています。

 

「次、飲んだら、離婚だから」

「何回同じこと繰り返すの?」

「いっそ事故で死んでくれたらいいのに」

「あなたには断酒なんて無理」

「妻の私のことなんてお酒以下なの?」

 

今まで突き刺さってきたこれらの言葉は、家族も悩み苦しみ、本人のためを思って必死にやってきた結果なのだと、当事者である私たちも理解できます。

私はユリちゃんを妻に重ねて、純粋にただ感謝しかないな、と思い至り、救われた気持ちになりました。

アルコールだけでなくいろいろな依存症を知ることができる!

私はアルコール依存症については当事者なので勉強してきましたが、ギャンブル依存症や薬物依存症についてはあまり知りませんでした。

この漫画を読んで「あぁ、おんなじだ」と思いました。

依存対象が違うだけで、スリップの仕方とか、全く同じでした。

武田先輩のスリップの話、すごく共感しました。

「節酒でいけるんじゃないか?」って試すんですよ。

最初は1缶でやめられて「なんだ節酒できるじゃん」って思います。

でも翌日から2缶になり、

その翌日には1ケースになり、

1週間で元通り。

頭の回路が故障してる事を体感します。

ギャンブル依存症も同じなんだなーってすごく共感できました。

 

いかがでしたか?

依存症に悩んでいる人も、

「ひょっとして私も?」と揺れている人も、

全然関係ないや、と無関心だった人も、

全てのひとに、知ってもらいたい。

できるだけ多くの人に、読んでもらいたい。

作者の三森先生のTwitterをリアルタイムで読ませていただいて、キャラクターとストーリーに文字通り命を削りながら魂を込めて下さったのだと、胸が熱くなりました。

本当に頭が下がります。

キャラクターに感情移入しすぎてメンタル持っていかれかけながらも、執筆してくださった三森先生には感謝してもしきれません。

本当に、本当に、ありがとうございます。

素晴らしい作品を世に出してくれて。

私たちのことを理解してくれて。

未だ見ぬ人たちに道を指し示してくれて。

 

こんなにも心揺さぶられる作品を、見なきゃ損ですよ!

 

なんと!

こちらから無料で読むことができます。

こんな素晴らしい作品が無料?!

https://www.jiji.com/ad/korosho/izonsho_manga_v01.html

(↑こちらは2020/3/31まで有効です。)

 

⭐︎追記:もう見れなくなる無料web版が、さらに豪華なって、ついに書籍化されました!(2020/3/2)

 

https://mimorimisa.com/memo/20200212/

これはぜひ、常に手元に置いておきたい。。

届いたら断酒会に持って行こうと思ってます。

 


アルコール依存症ランキング

【依存症】依存症における「スリップ(再飲酒)」の4つのタイプ

こんにちは ちあき です。

断酒から1年半~2年たつと、完全に安定期に入るといわれている断酒期間ですが、2週間前後、2~3ヶ月前後、6ヶ月~1年前後の3つのタイミングで特に再飲酒(スリップ)しやすいことを以前記事にしました。

今回は、再飲酒に陥ってしまうときの4つのタイプについて整理したいと思います。

 

①抑うつ型

→ 抑うつ気分・意欲低下・不安定・疲れやすい・食欲減退

飲酒なしの社会生活にはまだ不慣れな時期に、知らず知らずのうちに精神的疲労感が増大しており、それがストレスとなって抑うつ状態になります。

このストレスをお酒で晴らしたい欲求にかられ、スリップすることがあります。

 

②衝動型

→ 著しいイライラ感・衝動的な行動・不機嫌で怒りやすい・攻撃的になる

些細なことでイライラしやすくなります。運転していて無理な割り込みをされたときなど、普段ならそんなに癪に障らないことにカッとなってしまいます。

私の場合、特に約束を破られたり予期せぬ予定変更をされたりすると激しくイライラしました。車の中で声が枯れるまで叫んだり、ハンドルをこぶしから血が出るほど殴ったりしないと収まりませんでした。

 

③神経症型

→ 頭痛・食欲不振・心気症

慢性的な頭痛に悩まされたり、極度に食欲が落ちたり増進したりして極端に痩せたり太ったりします。これも、今までアルコールでごまかしてきた生きづらさに直面することによるストレスによるものです。発汗・下痢や便秘などの消化器症状・頭重感など、自律神経障害の症状に見舞われ、不眠に悩まされる人もいます。

 

④精神病型

→ 躁うつ病状態・精神病状態

理由のない万能感(何でもできるという不自然な力の漲り)に満たされて、大量の株を購入してしまったり、会社を立ち上げてしまったり、多額の借金をしてすべてギャンブルに投じてしまったり、突飛な行動をするのがこのタイプです。

また、「誰かに監視されている」「携帯電話が傍受されている」「仕事中に休憩しているとき、サボっていないか追跡調査されている」などの根拠のない妄想に苛まれ、精神衰弱してしまうこともあります。

私はMRとして営業している日中、車の中で休憩していても、「常に監視されているような気」がして、実は未だにどこにいても落ち着けません。

休憩していても携帯電話の着信があると、何の用件なのか気になるのですが、電話する気力がないのでコールバックができず、毎日目がピクピク痙攣します。

 

意識していなくても、実はストレスがかかっている

できるだけ無理せず安静にしているのでストレスはかかっていない、と錯覚しがちですが、飲酒しない社会生活を始めるだけでも、実はかなりストレスがかかっています。

今まで飲酒して脳を抑制し感覚を誤魔化していた生活から一変して、すべてを素面のまま受け止める生活になっただけで、かなり環境の変化が起きています。

精神的疲労感が増大しているにもかかわらず、「疲れていないはずだ」「こんなことではだめだ」と頑張りすぎると、ストレス過多になり、お酒の魔力に囚われやすくなってしまいます。

まずは、激しい気分の動揺・焦燥・攻撃性UP・不機嫌・抑うつ・不眠・食欲不振などの症状が出てもしかたがない、と割り切るのも大切です。

断酒しているだけでも相当の努力をしています。

 

 

これは、なかなかお酒を飲まない人や家族には理解してもらえないかもしれません。

でも、断酒している人間ならわかってくれます。今、あなたがどれだけ苦しいか。

だから、断酒会やSNSで同じ立場の人と交流することが、この時期救いになるのです。

そのうえ、転職したり、再就職するなどして、家族や職場など対人関係が変化したりすれば、尚更です。

「今まで入院していたのだから早く社会復帰しなくては」

「家族や会社の信頼を取り戻すためにも頑張らなければ」

などと無理をして働きやすいのですが、これが大きな落とし穴になるのです。

焦ってはいけません。断酒に向き合っているだけでも、あなたは偉い。

2年間はまともなメンタルで居られなくて当然です。

なかなか安定しない自分を、ある程度、許してあげましょう。

 

 

いかがでしょうか。

私も自分を許せなくて焦り、何度も失敗しました。

そもそもこの病にかかる人は、自堕落でいい加減な人ではなく、「真面目で几帳面で完璧主義」の人が多いと言われており、余計に再飲酒(スリップ)しやすいのですが、社会的な評価や偏見は正反対のキャラクターとして認識されているので、しばしば誤解され必要以上に叱責を受け、ますます自分を責めることになりやすいのです。

そんなときは、1日1日断酒を続けている自分に〇をあげてほしいと思います。

では、また!


アルコール依存症ランキング

【依存症】アルコールの作用とアルコール依存症のメカニズム

こんにちは、 ちあき です。

ミュージシャンで俳優のピエール瀧容疑者がコカインを使用した疑いで逮捕された事件が話題になっていますね。

瀧容疑者は「20代からコカインや大麻を使用していた」などと供述していることが捜査関係者への取材でわかりました。

若年から常用していたところを考えると、瀧容疑者は「薬物依存症」だった可能性があります。

メディアで面白おかしく揶揄されているのを観ると、苦々しくてたまりません。

知識のないひとが、心が弱いだとか適当な事を言って人格否定することで、当事者と家族の依存症からの回復はどんどん困難になってしまいます。

私は、ピエール瀧さんの回復を心から応援しています。

依存症は、だれにでもありえる、本当にすぐ隣にある身近な病気のひとつです。

依存症は、だらしないからなるわけでも、ダメな人がだからなるわけでも、悪い人だからなるわけでも、心が弱いからなるわけでもありません。

決して、人格の問題ではないのです。

実は、成人を過ぎた半数以上の人々が口にしているアルコールも、コカインに近い依存性を持っているのですが、ほとんどの人がそんな認識を持っていません。

今日は、アルコールが脳にどう作用して、どこをおかしくし、その結果何が起こるのか、を医学的側面から分析したいと思います。

なぜ酒が止まらなくなり、なぜ思考がおかしくなるのか?

依存症は、決してあなたの意志が弱いわけでも、あなたの性格が悪いわけでもないんです。

脳を溶かし脳を騙す?「アルコール」という物質の特性

 

脳は、半分以上が脂質で構成されており、残りが蛋白質です。

アルコールは、水溶性が高く、分子が小さく、脂質を溶解します。

つまり、水に溶けやすくて小さくて脳を溶かす物質、ということです。

 

脳の血液脳関門『BBB(Blood Brain Barrier)』というバリアをスルリと通り抜け、血液に乗って脳に入り込みます。

 

だから、酒を飲み続け体内にアルコール血中濃度が常時高かった人は、ずっとアルコールに脳が漬かっていた頭だったといえます。

その場合、6ヶ月しないと健康な人の脳には近づけません。

ただ、断酒していれば脳萎縮と脳機能はある程度回復すると言えます。

酒を止めても6ヶ月までドライドランクなどに悩まされるのは、脳の機能が回復していない、アルコールの影響から完全に抜け切れていないからだとされています。

 

なぜ酔っぱらうと理性が働かなくなるのか?

飲み会でよくある光景ですが、酔うと気が大きくなったり、感情的になったり、セクハラやパワハラしてしまう人、いますよね?

 

それは、本性が現れた、などと勘違いされていますが、正確には間違いです。

 

本当の理由は、理性を司る『前頭葉』という脳の部分に血がなかなかいかなくなるからです。

 

アルコール依存症の脳は、前頭葉の血流が低下しています。

つまり、理性を働かせる部分に血が行かず、理性が働かなくなっているのです。

 

そうした脳の血流低下により、アルコール依存症であろうとなかろうと、酩酊すれば理性は働かなくなり欲望が剥き出しになります。

さらに連続飲酒や習慣飲酒になっていると常時理性が働かなくなっていて、当然なのです。

酒を飲んでバケモノになるのは、医学的にはこのような背景があります。

 

飲酒運転をしてひき逃げしてしまうのも、酒を飲めば誰でも正常な判断ができないから。

「責任感がない」「人として間違っている」などと飲酒による失敗をした人の人間性や人となりを叩いたり、「お酒が悪いんじゃない」「私は酔ってもそんな風にはならない」と自分を棚に上げて飲酒による悪影響を見て見ぬふりをするのは、間違っていると考えています。

だって、現実に脳を溶かし脳の血流を低下させ、倫理的な判断を阻害しているのは、酒なんですから。

お酒が悪いし、動物学上のヒト科である限り同じである以上だれでも酔ったらそんな風になるし、責任感があろうが人として全うだろうが間違いはあるのです。

 

 

なぜアルコールをたくさん飲んでしまうようになるのか?

アルコールは麻酔薬なので、中枢神経を抑制する方向に働きます。

興奮剤かと思いきや、脳の活動を抑制する物質です。

アルコールはドーパミン受容体(=ドーパミンを出させるスイッチ)に作用して、快楽のホルモン、ドーパミンを放出させます。

 

しかし、あまりにドーパミン受容体を刺激し続けると、カラダが、

「おいおい、出しすぎだよ」

同じ量のアルコールではあまりドーパミンを出さないようにしたり、ドーパミン受容体自体を少なく調整したりします。

(この変化をダウンレギュレーションと言います。)

 

そうなってしまうと、同じ量アルコールを飲んでもドーパミンが足りなくなります。

ということは、快感が足りない、と感じます。

だから、もっと大量にお酒がほしいと脳が勘違いしてしまいます。

こうして、酒量はどんどん増えていきます。

だから、アルコール依存症はあんなに狂ったように大量のお酒がほしくなるのです。

 

だから、私たちに飲むという選択肢はない
(再飲酒しやすい時期と注意点)

私が通院する病院で学んだ再飲酒しやすい時期の変遷や要因をまとめると、以下のような図になります。

 

①断酒後2週間前後

…自覚症状の軽減に基づく安心の時期。治療の動機づけがまだ不十分であり、病識が欠けていることが多い。

 

②断酒後2〜3ヶ月

…断酒継続のための精神的緊張の弛緩の時期。一般的に緊張が高かった状態から緩みやすい。(私はここで結構やられました。)

 

③断酒後6ヶ月〜1年前後

…断酒生活への憧れからくる病識の退行の時期。正常飲酒ができるんじゃないかと勘違いしてしまう。「もしかしてお酒とうまく付き合えるかも」という思いが沸き上がりやすい。

 

 

断言できますが

この病気になってしまったら

適量飲酒など

絶対に無理です。

 

なぜなら、「コントロール障害」だからです。

もうすでにコントロールできなくなっているのです。

 

どうしてか?

 

脳が変質しているからです。

アルコールが体内に入ると

際限なく求めてしまう

ドーパミン報酬系回路がすでに出来上がっていて、

1滴でもアルコールが入れば

スイッチがいつでも入るからです。

 

 

断酒会やSNSで酒害を繰り返し思い出して、言葉やtweetに出して、ほかの人のtweetを読んで、はっと気づくことがあります。

その繰り返しにより、1日1日を、薄氷を踏むように、断酒しながら進んでいけます。

 

「やはりお酒をやめていてよかった」

「お酒は飲んではいけないな」

と確認させてくれます。

その気づきが途絶えると、

「あれ?いけんじゃね?」

という謎の自信を脳が創り出します。

 

4回スリップして、

私はそれが間違いであることを

嫌というほど思い知りました。

 

 

誰でもおそらく、

いけるかも

と思ってしまうときはあります。

飲んでいたころの心情をふと思い出して、

郷愁のような感情を抱くときもあるでしょう。

 

でも、それは脳が作り出しているまやかしです。

この記事を思い出して、「いやいや、ダメダメ」と理論的に自分を説得する材料にしていただければ幸いです。

では、また!


アルコール依存症ランキング

【発達障害】やたらと尊大な態度の人が周りにいて悩まされていませんか?(ASDにおける自己愛性パーソナリティ障害対策)

こんにちは、 ちあき です。

春が近づいてきました。

人事異動の季節ですね。

私の務めている製薬会社では春と秋に人事異動があります。

だいたい内資はそんな感じなんですよね。

さて、私があまり好きではない、というか心のなかで見下していた男性MRのHさんが異動になり、同じチームではなくなったので、ちょっとウキウキしています。

今日はASDの天敵である「自己愛性パーソナリティ障害」持ちの傾向と対策についてまとめていきたいと思います。

 

とにかく自分が一番でないと気が済まない「自己愛性パーソナリティ障害」

自己愛性パーソナリティ障害の大まかな特徴…周囲の人々を軽視し、周囲の注目と賞賛を求め、傲慢・尊大な態度を見せることが特徴です。

アメリカ精神医学会の診断と統計マニュアル「DSM-5」によると、自己愛性パーソナリティ障害の特徴は、「自分は特別で重要な存在である」と誇大な感覚を持っていることです。常に自分の能力を過大評価し、しばしば自慢げに見栄を張っているように見えます。自分は褒められて当然であると思い込んでおり、賛美が得られない時は驚くかもしれません。自分の成功や権力、美しさ、理想的な愛などについての空想にふけっていることもあります。

自己愛性パーソナリティ障害の人達は、自分を理解できるのは特別な人か地位が高い人だと思っていますし、そうした人達と関係があって当然だと思っていることがあります。一方で、他人の努力や貢献は過小評価します。相手の気持ちに共感できないため、しばしば人間関係上の困難を抱えます。

この障害のある人は心が傷つきやすく、抑うつ傾向があります。表には出さないかもしれませんが、批判された言葉が脳裡を離れず、恥をかいた、うつろで空しいなどと感じ続けるかもしれません。

診断基準…DSM-5

誇大性(空想または行動における)、賛美されたい欲求、共感の欠如の広範な様式で、成人期早期までに始まり、種々の状況で明らかになる。以下のうち5つ(またはそれ以上)によって示される。

  1. 自分が重要であるという誇大な感覚(例:業績や才能を誇張する、十分な業績がないにもかかわらず優れていると認められることを期待する)。
  2. 限りない成功、権力、才気、美しさ、あるいは理想的な愛の空想にとらわれている。
  3. 自分が“特別”であり、独特であり、他の特別なまたは地位の高い人達(または団体)だけが理解しうる、または関係すべきだ、と信じている。
  4. 過剰な賛美を求める。
  5. 特権階級(つまり、特別有利な取り計らい、または自分が期待すれば相手が自動的に従うことを理由もなく期待する)。
  6. 対人関係で相手を不当に利用する(すなわち、自分自身の目的を達成するために他人を利用する)。
  7. 共感の欠如:他人の気持ちおよび欲求を認識しようとしない、またはそれに気づこうとしない。
  8. しばしば他人に嫉妬する、または他人が自分に嫉妬していると思い込む。
  9. 尊大で傲慢な行動、または態度。

DSM-IV(1994年に出版されたDSM)の定義に基づく自己愛性パーソナリティ障害の有病率は、調査を実施した地域で0~6.2%の間と見積もられています。また、この障害と診断される人のうち、50~75%が男性です。

そして、自己愛性パーソナリティ障害の人は、障害を指摘されても、絶対に認めようとしないし自覚がない、というのが最大の特徴です。

そこはアルコール依存症にそっくりです。

 

※参考文献

『ICD-10 精神および行動の障害 臨床記述と診断ガイドライン(新訂版)』(医学書院)

『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』(医学書院)

『カプラン 臨床精神医学テキスト』(メディカルサイエンスインターナショナル)

 

実際にいたのはこんなやつ

職場を離れるHさんですが、まさにこの自己愛性パーソナリティ障害の典型的なタイプでした。

・自分は優秀だ、デキる男だ、と自慢する

・その自慢を聞き流している人に異常に嫉妬して認めさせようと躍起になる

・他人の成功を喜べないか、過小評価して影口を言う

・自分の権力を誇示して、従わせようとする

・ただヤりたいという自らの欲望を満たすためだけに女性に近寄る

・他の女とヤっても怒らないから、という理由で妻を選ぶ

・深夜に帰宅しておいて妻を叩き起こして性交渉をせまる

・得意先に共感しているようで気持ちがわかっていない言動が目立ち、大して認められていない

こんな感じで、大したことないくせに実にめんどくさいやつでした。

しかもこのHは、自分の自尊心を保つために、定期的にあまり物言わぬ温厚な人をターゲットにしては対象を軽んじたり罵ったりしていたので、側から見て「うわー…」とドン引きしていました。

 

なぜこんな事になってしまったのか?

一般にこれらの性質は、強力な劣等感および決して愛されないという感覚に対する防衛によるものと考えられています。

Hの幼少期の話を聞いてみると、親に認めてもらえなかった、という強烈なコンプレックスを抱えていました。

「医者か弁護士になれ」と言われて勉強漬け。クラスで一番でも、偏差値が全国トップクラスじゃないからダメ、薬学部に入ってもダメ、と、本人は親の期待をかけられるプレッシャーのなかで勉強を諦めない強靭な精神力があると自慢したかったようですが、その経験から人格が歪んでいったようです。

その辛い過去に目を背けるため、防衛本能で他人を軽く見て自分を褒めてもらわないと安心できない人間になってしまったと考えると、少し同情できます。1mmくらい。

 

ASDは真面目に取り合ってしまうのでターゲットにされやすい

ASD(自閉症スペクトラム)は、人とのコミュニケーションがうまく取れないので、他人にバカにされやすく、自己愛性パーソナリティ障害にとっては公然とバカにしても周囲から共感が得られるので、格好の餌食となります。

また、みんな実は聞きたくない自慢話をASDは真面目に取り合って話し相手になってしまうので、自慢話を延々と聞かされる羽目になります。

しかし、ASDは基本的に論理的なので、しばらく聞かされていると自慢話の矛盾に気づき、つい指摘してしまいます。

そうすると、自己愛性パーソナリティ障害は、自分より下の人間に馬鹿にされた、と怒り狂い、マウンティングしてこようとアレコレ指図し始めます。

ASDは論理的に間違っていたら従わないので、完全に対立の構図が出来上がってしまいます。

このように、相性最悪な組み合わせです。

 

ではどう対処すればいいのか?

「関わらない」

それだけです。

というか、もうそれしかありません。

それっぽい人がいたら、必要以上に話さないようにしましょう。

向こうは深く付き合えばいずれ敵になる存在だと認識して、必要以上に関わらず放置しておきましょう。

たまに「すごいね」とか「よかったね」とか言って遠巻きに見ておくのが一番です。

彼らは自分の承認欲求を満たすために他人を利用する寂しい人間とは別の生き物なのだと、理解しましょう。

「あちゃー、もうすでにターゲットだよ」

そんな人は、「この人たちに言われる事に意味はなく、彼ら自身のただのオナニーだから、聞かなくていい内容だ」と脳にプログラミングしましょう。

そして周囲は実はあなたと同じように「コイツめんどくさいからとりあえず同意しとこ」くらいの気持ちしかないので、あなたをみんなで悪く言っているような印象を持つかもしれませんが、それが自分の勘違いだと認識しておきましょう。

そうすれば、特に何か言われたりやられたりしても、「コイツは過去のトラウマで寂しいからこんな不毛なことしかできないんだな」と憐れむくらいしか、感情は湧いてこなくなります。

そして、相手が堪りかねて法に触れるような事をしてきたら、警察沙汰にして追放しましょう。

その前により簡単に欲求を満たせるターゲットを見つけたら、そちらに変更して去っていくこともあります。

これで対策は完璧です。

 

まとめ

彼らは、実に可哀想な存在です。

アダルトチルドレン に近いような満たされなかった幼少期のトラウマを抱え、それを自覚できずに満たされない承認欲求を抱えて必死で「だから私を見て」と言っているだけなのです。

エヴァの惣流・アスカ・ラングレーを彷彿とさせます。

こんな可愛い女の子だったらツンデレ的な立ち位置で、いいんですけどね。

ムカついたらアスカ思い浮かべて心のなかでヨシヨシしてあげましょう!

では、また!

【社会福祉士】戦後~現代社会における社会福祉の位置づけの変化をまとめてみた

日本における戦後社会と現代社会における社会福祉の位置づけは、時代の変遷の過程で、例えるなら「セーフティネット」から「トランポリン」に役割を変容してきた。

 

戦後社会における社会福祉

戦後社会において、被援助国として援助を受けつつGHQの福祉改革による旧生活保護法に始まり、日本国憲法が公布・施行されて、特に幸福追求権や生存権を規定した第13条・第25条がしめす民主主義的な機運が本格化され、社会福祉の出発点となった。

戦後社会の制度は、「措置制度」として徐々に拡充されていく。

生活保護法・児童福祉法・身体障害者福祉法の福祉三法が成立した。社会福祉事業全分野の共通事項の規定のため、社会福祉事業法(現・社会福祉法)が成立した。その後、精神薄弱者福祉法・老人福祉法・母子福祉法の立法により、前三法と合わせて福祉六法体制が確立した。

国家としての責任は、日本国内において「日本型福祉社会」を確立することであった。

それはつまり、「個人の自助努力」と「家族や近隣・地域社会等の連携」を基礎に、「効率の良い政府が適正な公的福祉を重点的に保障」することで「わが国独自の道」を目指すことであった。

まだ国際化が進んでいない戦後社会において、復興のために汗を流す製造業の工業労働者の都市生活や農民の生活を送る国民たちは、伝統的家族制度と近代的家族制度に根ざした家族による家族介護等のケアを頼りに、家族・近隣・地域社会との協力関係の下、基本的には社会福祉を当てにせず自助努力で生活するよう促す、形成途上の福祉国家として歩みを進めてきた。国としては、個人の自由を抑制しながら国民生活全般の支援を国家自らの任務ととらえていた。

それゆえに、公的福祉の位置づけが「選別主義」的であったことは否めない。実際に展開される公的部門の支援は限定的なものであり、自立できない者への対応は厳しいもので、道徳的に低位なものに対する差別が存在した。

まとめると、戦後社会の社会福祉の姿は、措置制度に象徴される行政主導のパターナリスティックな福祉供給システムであり、供給されるサービスは施設収容を中心とした非民主的で非対称的な処遇によって特徴付けられる「旧構造」であり、実質自立できない者への「セーフティネット」だったのである。

 

現代社会における社会福祉

そのような戦後社会から現代社会に時代が流れ、グローバル化と少子高齢化が進み、今まで当てにしてきた家族制度は崩壊し、終身雇用制度も終焉を迎え、旧態依然とした地域社会システムを前提としてきた社会福祉は再構築する必要に迫られた。

つまり、国民の産業が第一次産業から第三次産業(サービス業や知識産業)にシフトし、生活スタイルも「個別化」が進んだ現代において、個人を低としつつ社会的連帯によって成立する社会保障の役割が重要になっていったのだ。

そのような時代背景に呼応する形で制度も拡充・見直しが進められてきた。

1973年は福祉元年と称され、低水準の社会保障から脱却し西欧の社会福祉に近づこうと試行錯誤を開始した年である。特に、戦後差別され隔離されてきた社会福祉の対象者に愛して、1980年代からノーマライゼーションが認知され、今日の社会福祉全般にわたる理念として定着している。

その発展形態である「社会的包摂」は、多様な異質性をそのままに社会に包摂する、という、移民や少数民族のみならず、貧困者・障害者・高齢者・女性・非正規雇用者などのマイノリティに向けられた社会的な関係性からの排除=社会的排除と理解する重要な基本理念である。その基本理念のもと、老人保健法の改正による医療コストの見直し・福祉関係八法の改正を経て、介護保険法が施行された。

そして、今日の社会システムとしての社会福祉の制度的基盤、到達点である2000年の社会福祉法制度が確立した。貧困者にはホームレス自立支援法が制定され、障害者には障害者雇用促進法の改正が行われ、高齢者には高齢者雇用安定法が制定され、女性の社会進出の支援や非正規雇用者の待遇是正など、企業の取り組みも活発化している。多くの福祉分野において就労支援を含む自立支援政策が導入されていった。

 

セーフティネットではなく、自立支援(トランポリン)へ

戦後の「措置制度」「セーフティネット」としての社会福祉とは対照的に、現代の社会福祉の理念は「自立支援」であり、「トランポリン」である。多様な異質性をそのまま受け容れ、ダイバーシティ&インクルージョンを前提とし、自立と連帯のなか誰もが尊厳を持って国民が主体的に福祉サービスを受給して暮らせる社会を共に作り上げることが、現代のおける国家の責任であり国民の役割でもある。

【社会福祉士】発達障害(ASD)のクライエントに対する支援

発達障害には、自閉症スペクトラム、ADHDなど、さまざまなものがある。

今回は、大人の自閉症スペクトラムの発達障害を持つクライエントをサポートするケースでそのような点に気をつける必要があるか、についてまとめる。

 

自閉症スペクトラム(ASD)とは?

自閉症スペクトラムとは、精神障害の診断と統計マニュアル第5版(DSM-5)における精神発達症群における診断名のひとつで、しばしば医療関係者の間ではASDと略される。この第5版において、今まで別の疾患として扱われていたアスペルガー症候群・自閉症・その他広汎性発達障害を包括的に総称して扱う単語として、ASDは再定義された。

ASDの診断基準は「社会的コミュニケーションの障害」と「限定された興味」の2つを満たすとDSM-5では定められている。

症状としては生後2年以内に明らかになる場合が一般的である。子供のころに鑑別できなかった場合には、成人してから社会に出て就職した際に周囲とのコミュニケーションが図れず孤立してしまい、職を転々とする、または失業することがある。

特定の事柄や物事の進め方の順序に固執する性質が災いして職務を遂行できず評価されない状態が続いた結果、精神疾患を合併症として発症し、精神科や心療内科に繋がって初めて診断が下されるケースもある。

いずれにしても、集団や組織のなかでの人間関係に難があり、本人は生き辛さを感じ社会生活に悩みを抱えているケースが多い。

 

ASDのクライエントへのアプローチの方法

ASDのクライエントに対して、我々ソーシャルワーカーは発達障害者支援法に基づいて支援を検討することができる。

支援を行う場合、発達障害の場合は特に、大きく分けて医療・教育・福祉、労働の多職種連携が必要になる事例が多い。

発達障害者支援センターが都道府県・指定都市において運営されていて、発達障害児・障害者の地域における支援のために、関係施設職員や学校の教職員、福祉事務所、児童相談所、更正相談所、保健所、医療機関、学校、職業安定所等の関係機関との連絡調整業務を実施している。

発達障害者支援法にはないが、関連性のある支援制度が「発達障害情報・支援センター」のホームページに掲載されており、本人やご家族だけでなく、支援に関わる関係者の知識を補完する役割を果たしている。

 

精神障害者保健福祉手帳を取得するメリット

関連性のある支援制度の活用における具体的な支援行動のひとつとして、精神障害者保健福祉手帳の取得支援がある。

精神障害者保健福祉手帳は精神障害者が一定の精神障害の状態であることを証する手段となり、各方面の協力を得て各種支援策を講じやすくすることにより、精神障害者の自立と社会参加の促進を図ることを目的としている。

「障害者手帳を取得すると差別や偏見があるかも知れない」と心配されるクライエントには、障害者手帳を取得したからといって必ず周囲にオープンにする必要もないため、周囲に知られなくない場合は知られないようにすることもできると、障害者手帳のメリット・デメリットを正しく伝える必要がある。

精神障害者保健福祉手帳の申請は、市町村の窓口で行い、都道府県知事(指定都市にあってはその市長)の認定に基づいて交付される。

交付後、精神障害者に対する援助措置は下記のものがある。

① 心身障害者扶養共済

② 国税、地方税の諸控除及び減免税

③ 公営住宅の優先入居

④ NHK受信料の免除

⑤ 生活保護の障害者加算

⑥ 生活福祉資金の貸付

⑦ NTTの無料番号案内

⑧ 携帯電話使用料の割引

⑨ 公共施設の利用料割引や公共交通機関の運賃の割引 などである。

各自治体により対象者、サービス内容は異なる場合があり、福祉担当窓口に確認する必要がある。この手帳の取得により障害者雇用での就職を選択することが可能になり、働き方や通院などの配慮を受けやすくなる。

このことはASDのクライエントで「配慮があった方が働きやすい人」にとって大きなメリットがある。

なぜなら、ASDにおいては得意なことと苦手なことの差が著しいため「苦手なことでも、慣れればできるようになる」といったような一般的な考え方が通用しないケースがあるからだ。業務や環境のミスマッチは、本人自身にストレスがかかることはもちろん、周囲も対応に疲弊してしまい悪循環を招く。したがって、特に就労支援においては、障害特性による強みと、一人ひとりの得意なことと興味関心を活かすことが大切になる。

 

まとめ:ASDという素晴らしい「個性」を活かした支援がカギ

ASDのクライエントの強みと興味関心について理解し、その長所を活かすサポートを可能にするために、我々は地域連携を推進していかなければならない。

地域連携をつくるベースの活動は、個別ニーズへの対応と、支援期間の役割分担によるコラボレーションである。

すべては、個別ニーズからスタートし、人と人、機関と機関が持てる機能を出し合い、補完し合うことで生み出されるということを常に忘れず、支援に取り組まなければならない。

【メンタル】あなたの脂質異常はストレスのせいかも?

こんにちは、 ちあき です。

健康的な食生活を心がけ、週3回以上の運動を習慣化して取り組んでいるのに、なぜか脂質だけが引っかかる…。そんな経験はありませんか?

私は、血圧・血糖・尿酸の値は正常値なのに、高コレステロール血症だけが健康診断でいつも引っかかってしまいます。

スポーツジムで週3回ウエイトトレーニングと有酸素運動を合計1時間/回実施し、毎日炭水化物を摂るのは朝のみのローカーボ食を採用して食事制限をしているにもかかわらず、です。

今回は脂質異常症、特に高コレステロール血症に悩む社会人のみなさんにとっての一つの可能性を探ってみたいと思います。

そもそも、高コレステロール血症って?

高コレステロール血症とは、文字通りコレステロールが高い状態を言いますが、具体的な基準値としてLDL-C、HDL-Cの数値を用いて診断します。

「LDL-C」=いわゆる悪玉コレステロール。中性脂肪がリッチなこのコレステロール。この数値は70~139が基準値で、これより高いとよくありません。

「HDL-C」=いわゆる善玉コレステロール。中性脂肪の比率が少なく、血管内を循環する際中性脂肪を吸収して肝臓に帰っていくため、善玉と言われています。男性は40~80・女性は40~90が基準値で、これより少ないと脂質のバランスが良くない状態といえます。

ちっちゃいLDLを含めて診断できるトレンドの検査数値:Non-HDL

最近では、Non-HDL-C(HDLではないコレステロールの総量)を基準にする考え方が実臨床において一般的になりました。

Non-HDL-C=総コレステロール-HDL-C(基準値:)

メタボリックシンドロームや糖尿病など生活習慣病を合併している患者さんの場合、LDL-CのちっちゃいVerである「small dense-LDL-C」が増えて、単純にLDL-Cの数値では計測できないからです。

この「small dense-LDL-C」が怖いのは、血管壁の細かい傷にくっつき、プラークという血管内にできる油の塊になりやすいのです。このプラークが大きくなる(肥大化する)と、動脈が狭くなり、動脈硬化が進んでしまいます。プラークに免疫細胞が寄ってきて炎症が起き、ますます大きくなると、その場で血管をふさいでしまうか、突然破裂して細かい血管をふさいでしまうリスクがあります。

また、Non-HDL-Cは2つの論文でその有用性が証明されたため、循環器の専門医だけでなく非専門医にも注目されるようになりました。

①Health Professional Follow Uup study において、non-HDL-Cが高ければ高いほど、心血管イベント(心筋梗塞や狭心症など)が上昇することが示されました。

②Women’s Health Study において non-HDLコレステロールが 果たして心血管イベントを予測しうるかどうかということも重要なポイントですが、このstudyでLDLコ レステロールよりもnon-HDLコレステ ロールのほうが予測因子として重要であったということがいわれております。

こうした学術的背景と、small dence LDL-C も計測できる現代の身体状況に即した測定が可能なことから、「Non-HDL-C」は、重要です。みなさんやご家族も健康診断の結果をよく見ておいたほうがよいでしょう。

ストレスでコレステロール高値を呈した自衛隊の論文

陸上自衛隊には、レンジャーという部隊があります。隊員の中でも特別な訓練を受けた精鋭集団で、有事の際には困難なミッションを遂行する特殊部隊です。

そんなレンジャー隊員において、レンジャー訓練後に高コレステロール血症が認められるという報告があります。

17名のレンジャー隊員に対し、想定訓練前後の健康診断時に循環器検診項目の採血検査を実施した。82%(14/17)の隊員で訓練後に高コレステロール血症を認めた。 総コレステロール(TC)は,訓練前平均160±26mg/dlから訓練後平均248±37mg/dlに上昇し、その増加率は,平均55%であった。 中性脂肪、HDLコレステロール、LDLコレステロールは、全て上昇し、増加率はそれぞれ平均74%,65%,63%であった。血中コレステロール濃度を規定しているのは、肝臓におけるコレステロール代謝と皮下や内臓の脂肪組織からのコレステロール動員である。 米陸軍レンジャー訓練における報告においても、訓練後にTCは上昇し、その原因を半飢餓状態における甲状腺機能低下及びインスリン分泌の低下とインスリン抵抗性増大を伴う糖尿病様状態としている。我々は、レンジャー訓練後に認めた高TC血症を、摂食制限、不眠不休によるレンジャー訓練のストレスが、これら内分泌学的変化を惹起し、肝臓におけるコレステロール代謝及び脂肪組織からのコレステロール動員に影響を与えた結果と考察した。 (著者抄録) Hypercholesterolemia after ranger training (レンジャー訓練後に認めた高コレステロール血症について) より

レンジャー訓練は壮絶で、普通に「あー、ストレスだなぁ」ぐらいのものではなく、「このままじゃ本当に死ぬ」というくらいの重圧を昼となく夜となくかけられ続ける状態ですから、そこまで追い込まれてはじめてコレステロールに影響を及ぼす、ということでしょう。

まとめ:厳格な食事制限・運動療法をしていてもコレステロールが高い場合は、もしかしてストレスかも?と考えてみる

もしも、あなたが強いストレスを抱えている状態がずっと続いていて、脂質のみ異常値をきたしているとしたら、それはストレスホルモンの過剰生成によるものかもしれません。

食事制限・ハードなトレーニングをしているのに何故?と思い、個人的に調べてみました。しかし、基本的には主治医の診断と治療方針にしたがってくださいね。治療中なのに、自己判断で服薬をやめたり通院を止めることは絶対にしないでくださいね。

ただ、近年ではバターコーヒー に代表されるように、良質な脂質を摂ることは動脈硬化をはじめ心血管イベントに悪影響を及ぼさない、ということが示され、新常識となっています。自らの身体を知る意味でも、常に新しい情報を得ていく努力は必要ですね。

では、また!

【子育て】発達障害持ちの私が親にしてほしかったこと(自閉症スペクトラム障害:ASDの場合)

こんにちは、 ちあき です。

 

さて、私はASD(自閉症スペクトラム障害)ですが、この事実に気づいたのは32歳になってからでした。

 

私の母は、私が ASD(自閉症スペクトラム)の傾向があることを、知識がないばかりに理解できず、上手に対応できなかったのだろう、と思います。

 

それは、仕方のないことです。

 

私も自分の違和感に向き合い続けてようやく、ASD.ADHDの知識を持つことができたぐらいです。当事者でもわからなかったことを理解するのは難しいことです。

 

母を責めるつもりはありません。しかし、苦しんだのは事実でした。

 

今日は私の子供時代を振り返りながら、もしも同じようなお子さんがいらっしゃるなら、その子が「自分らしく」生きられるように見守ってあげてほしい、という願いを込めて話をつづりたいと思います。

 

私が子供心に「諦める」までの軌跡

 

母はよく怒りました。

ヒステリックに怒鳴り散らして。

 

「なんで普通のことができないの?!」

「なんで約束を守れないの?!」

「なんで嘘つくの?!」

 

私だって、普通にしたかった。約束を守りたかった。嘘をつきたくなかった。

 

したくてもできないから困っている私に、

「なんでできないか?」を問うことは、まさに愚問であり、

その問いからは沈黙しかうまれないことが想像できない母ではないはずなのですが、

 

終ぞ「どうやったらできるか一緒に考えよう」と寄り添ってくれることはありませんでした。

 

その姿勢を見ていて、幼いながらに、子供だった私も本能的に理解したのです。

 

「あぁ、この人には理解してもらえない」

「この人には何をいってもダメだ」

 

ということに。

 

 

諦めの先にある自由意志の喪失と生きにくさ

 

頭ごなしに怒鳴られ続けて、分からないできない理由を問われ続けて、やがて、子供は、意志を諦めてしまいます。

 

だから、嘘をつくしかなくなってしまいます。

自分がやることや、やりたいと思うことは、悪いことだと思うからです。

 

美味しくないものは、美味しいといいました。

欲しいものは、欲しくないといいました。

好きじゃないものを、好きだといいました。

幸せが何かわからないのに、幸せだといいました。

1ミリも楽しくないのに、楽しいといいました。

辞めたくて仕方ないのに、続けたいという。

 

自分の意志を殺して、他人の意思を最優先にするようになりました。

 

母を、この人を怒らせないために、今何をすべきか。

 

パターン化して原因を分析して、叱責を回避することと褒められる行動を当てて実行することのみを追求するようになります。

結果として、ふと気づいたら自分が何をしたいか、完全に見失ってしまいます。

 

そんな私のような人間が「大人」になれないまま「成人」になって抱くのは、世の中や他人に対する言い表しようの無い怒りと純粋な興味です。

 

「なんでみんな普通にできるんだろう」

「それ、どうやってやるんだ?」

 

普通、と表現されることが理解できないのです。

皆がなんの気なしにできていることがさっぱりできない、これはとてつもない恐怖です。

 

 

「空っぽの子供」を育てる親の特徴

 

今振り返れば、父は当初約束を守れなくてよく母に怒られたと言っていました。

仕事のスケジュールに穴を開けることもあったといいます。

しかし、書の才能を開花させ腕一本で家族を食べさせた一点突破の鬼才だった父。

典型的な高機能型 ADHD ASD の特徴です。おそらくその遺伝子を受け継いで私が生まれたのでしょう。

 

そして母は、AC(アダルトチルドレン)でした。

祖父がアルコール依存症から荒れ、祖母は長女の母に辛く当たったそうです。

親の期待に応えるために進学し、なりたくもない教師になりなさいと言われたから地方大学の教育学部に入学した母。

 

彼女は、人とうまく話せません。

友人が作れず、長続きしません。

 

自己肯定感が低いため、形にこだわる完璧主義です。

社会的ステータスや、他人の評価に執着します。

こうした承認欲求の強さからくる思考の偏りは、自分に自信がない人に顕著です。

自分で自分にOKを出せないので、他人が与えてくれる価値や評価にすがりやすいと言われています。

 

よって、母が私に求めたことは以下のことでした。

 

「良い大学を出て、良い会社に就職して、良い家柄の人と結婚して、安定した生活をしてくれ」

自分が歩きたかったレールの上を代行して歩ませる事に大いなる期待を寄せ、熱量を費やし、転ばぬ先の杖を用意し続け、自発性や個性を重視して傾聴することなど一切せずに私を調教することが、彼女の唯一の生き甲斐になってしまったのです。

 

彼女自身の人生をほったらかしにして。

 

そんな彼女がもし正しい発達障害の知識を得ていたとしても、自分の宝物である我が子(私)が「発達障害」という「欠陥品」だと勘違いして、普通のレールから外れる恐怖に勝てず決して認めようとはしなかったでしょうから、やはり、この承認欲求に囚われている限り彼女の生き方は変わらなかった可能性が高いと言わざるを得ません。

 

発達障害は、欠陥ではなく、個性である、という見地に立つには、フィルターが多すぎるので、残念ながら期待できなかったでしょう。

 

そんな親でも子供は信じてついていく

 

私はといえば、必死でした。

 

親は、子にとってある意味世界そのものですから、当時は「親にまで嫌われたら私の存在は世界の中で一番完全に無価値なものになる」と恐怖していました。

 

だから全力でその期待に応えようとしました。生きるために。

 

結果はこのとおり、強迫性障害と不安障害を抱え、アルコール依存症になった立派なAC(アダルトチルドレン)に成長したわけです。笑

 

機能不全家族のゴールデンスタンダードを見事に体現した我が一家は、家族内にしか信頼を見出せない共依存にドップリとハマっていました。

他の家族の在りようとは、どんどん離れていって孤立しました。

それがさらに多様な価値観との交流を妨げ、コミュニケーション能力を欠落させる原因になったと思われます。

 

 

私が親になるにあたって思うことと切なる願い

 

そんな私も来月に長女が生まれ、親になります。

 

私は、この呪われた負の連鎖を私の代で、断ち切りたい。

願わくば、当時の私のような子らの不可解に今まさに直面している保護者が、ADHD ASD などの発達障害の正確な知識を持ち、人と違ったり理解に苦しむ行動をしたりする我が子を、ありのまま信じてあげてほしいです。

 

「なんでできないの⁈」系の答えられない質問 や

「そんな悪い子は知らない」系の存在否定 で

頭ごなしに子供の気持ちを叩き伏せる前によく耳を澄まし、

本心を話しているうちに、その声に耳を傾けてあげてほしいと思います。

 

親も人間だから、完璧じゃ無い、ミスもします。

それは仕方のないことだと思います。

同じように、子供達には、人生の選択権があり、ミスの練習をする権利があります。

彼ら彼女らが、自分の人生や気持ちに向き合い決定する権利を唯一有しているのです。

 

親は、水槽の金魚を見守るが如く、ただ、見守ることが、できる唯一のこと。

彼らの生き方をコントロールすることなどできないのです。

 

私も妻も自分がしてほしくなかったことを、我が子には絶対にしないように、お互い失敗を繰り返しながらも、子供と一緒に「自分らしく」楽しく生きていきたいと願っています。

では、また!

【社会福祉士】ソーシャルワーカーに学ぶ人間関係の考え方

社会福祉士の国家試験に向けて専門学校で勉強中です。

通信制の専門学校に入学し、土日にスクーリングを受けたりレポート提出したりしています。 個人情報保護の観点から書けないことのほうが多いのですが、勉強になったことで一般化できそうなことは書いていきたいな、と思っています。

ソーシャルワーカーって、何するひと?

ソーシャルワークとは、グローバル定義において以下のように定義されています。

ソーシャルワークは、社会変革と社会開発、社会的結束、および人々のエン パワメントと解放を促進する、実践に基づいた専門職であり学問である。 社会正義、人権、集団的責任、および多様性尊重の諸原理は、ソーシャ ルワークの中核をなす。 ソーシャルワークの理論、社会科学、人文学および地域・民族固有の知を 基盤として、ソーシャルワークは、生活課題に取り組みウェルビーイングを高め るよう、人々やさまざまな構造に働きかける。 この定義は、各国および世界の各地域で展開してもよい。 日本ソーシャルワーカー連盟(JFSW)公式WEBサイト より

つまり、ソーシャルワーカーとは、社会において様々な状況に置かれている人々が、本来持っている強み(ストレングス)を自覚し、必要なサポートなどを活用して、「自立して生きる」ことをサポートする人を指します。

例えば、ケースワーカー・生活相談員・児童相談員・成年後見人などの職業があてはまります。少し前にドラマで放映された「健康で文化的な最低限度の生活」で主人公たちがやっていた仕事といえば、わかりやすいかもしれません。先生方によれば、あれはとても分かりやすく教材にしたいくらい出来がいいドラマだそうです。ソーシャルワーカーを目指す人は全部見たほうがいい、と大変高評価でした。

どんな人にも偏見なく、という難しさ

非常に難しいのは、「偏見を持つことなく、その人そのままを見て話をして、本人の『自己決定』を支援する」というところです。

現在南青山に建設予定の児童相談所を含む複合児童施設を巡って港区と区民の間で対立が起こっていることが、ニュースになっていますね。なかなか理解は得られにくいのが世の常だと思いますが、とても胸が痛みますね。

生活保護を受けている人、障害をもっている人、DVやネグレクトを受けて保護された児童などに対して、どうしても接したことのない人は、想像で先入観を持ってしまいます。それは、ある種しかたのないことです。経験しなくては、人は想像することができないからです。

その結果、先入観や偏った価値観だけでイメージを作り上げてしまい、その人そのものを知らないまま、差別意識を持ってしまうという悲しいことが起こります。

「青山のブランドイメージが落ちる」と主張する人々の潜在意識には何があるかといえば、「我々はハイレベルな生活を手に入れた成功者である」という自尊心と、「児童相談所や社会福祉の補助を受けるような人は社会的地位が下で私たちとは違う存在である」という差別意識なのではないか、私には感じられてしまいます。また良くないことに、今回の反対運動を煽るように仕向けた不動産業者も、実は影に存在します。複合施設が建つ場所で商売をしようとしていた不動産業者です。

背景や金銭的思惑はあれども、本当にハイレベルな人々であれば、高い倫理観と社会的知識を持っているので、こうした困難に立ち向かっている人々も自分たちも「みな同じ」であること、一歩違えば逆の立場になる可能性について認識するのは、そう難しくないでしょう。

そのような人々からは、「青山のブランドイメージが落ちる」とか「物価の高さや華やかな生活に馴染めないのではないか」などという見当違いな反対意見は生まれないのではないでしょうか。

ましてや、同じ港区内で起きている児童虐待問題に対処するために企画されているのです。平成27年度の港区における児童虐待件数は478件で平成24年度の3倍です。新規受理件数は926件と過去最多。重篤化も進んでいるため、今回の施設建設が検討され始めたことすら、頭にないのかもしれません。

しかし、正論は言うに易く、行うは難し。現実にはとても難しいことです。誰しも今までの人生で培った経験や文化を背景にして「色眼鏡」をかけているものです。その「色眼鏡」は、かけていることすら気づくことが難しいからこそ、自分の判断や価値観が常に偏りがないか意識し続けなくてはいけません。

ソーシャルワーカーは、南青山の本来知識レベルや品行方正か素晴らしいはずの人々ですら獲得しえなかった「どんな人にも偏見なく公正で平等な視座」を獲得していることがプロとして前提条件となります。

「偏見」には「自分」が隠れている

ソーシャルワーカーは、「汚いな」「醜いな」「嫌いだな」「しんどいな」というマイナスの感情を感じたとき、その感情を否定せず、まずは素直に受け止めます。

そのあと、なぜ、自分はそういう受け止め方をしたのか?を考えます。

たとえば、私はアルコール依存症になる前、依存症患者に対して「だらしない人の病気」「自制心の無さからくる病気で自業自得」「もう依存症になったら人生の終わり」などとマイナスなイメージを持っていました。

なぜ、そういう受け止め方をしたのか?それは、『他人にそう思われたくない』という私の願望が背景にありました。

だらしない、自制心がない、何かに依存する弱い人間。

そんな風に思われたくない、という私自身の願望が、依存症患者を通して顕れていたのです。

実際、アルコール依存症は「真面目なひとがなる病気」で「アルコールは自制心とは関係なく飲まずにはいられなくさせる物質」であり、「依存症になったとしても人生が終わるわけではない」のです。治療に繋がり専門家から学んだ事実は、私が色眼鏡で見ていた患者像とは正反対の姿でした。

まとめ:人間関係のカギは、素直さにある

「あの人嫌いだな」「なんだかあの人疲れるな」

それはそれとして事実なので、まずは素直に受け止めましょう。注意してほしいのは、無理に仲良くしようとする必要はないし、合わない人はいても当然だということです。

誰にも嫌われない、みんなに好かれる、などということは不可能です。あなたは、あなたらしく生きる権利があり、あなたがあなたらしく生きていれば、人と違った価値観をもつことを恐れる必要はありません。

もし、あなたが「いろいろな人の価値観を認めて人間関係を広げてみたいな」と自ら願って行動するときは、なぜ嫌いだと思うのか?なぜあの人といると疲れるのか?を素直に考えてみましょう。

その背景には、あなたが「こう思われたい」とか「こう思われたくない」とか「こうあるべき」という、今までの人生や経験で培われた価値観や偏りが見つかるはずです。それ自体がいいわけでも悪いわけでもなく、「ああ、自分はそう思っているんだな」と思うことが重要です。

自分の偏りを傍らにおいて、改めて苦手意識のある人を見てみると、また違った見え方をしてくることが体験できると思います。

私もまだまだ学んでいる途中ですが、私が人生の課題だと感じている「人間関係」の考え方に一石を投じる考え方だと思ったので、記事にしてみました。

では、また!