【社会福祉士】発達障害(ASD)のクライエントに対する支援

発達障害には、自閉症スペクトラム、ADHDなど、さまざまなものがある。

今回は、大人の自閉症スペクトラムの発達障害を持つクライエントをサポートするケースでそのような点に気をつける必要があるか、についてまとめる。

自閉症スペクトラム(ASD)とは?

自閉症スペクトラムとは、精神障害の診断と統計マニュアル第5版(DSM-5)における精神発達症群における診断名のひとつで、しばしば医療関係者の間ではASDと略される。この第5版において、今まで別の疾患として扱われていたアスペルガー症候群・自閉症・その他広汎性発達障害を包括的に総称して扱う単語として、ASDは再定義された。

ASDの診断基準は「社会的コミュニケーションの障害」と「限定された興味」の2つを満たすとDSM-5では定められている。

症状としては生後2年以内に明らかになる場合が一般的である。子供のころに鑑別できなかった場合には、成人してから社会に出て就職した際に周囲とのコミュニケーションが図れず孤立してしまい、職を転々とする、または失業することがある。

特定の事柄や物事の進め方の順序に固執する性質が災いして職務を遂行できず評価されない状態が続いた結果、精神疾患を合併症として発症し、精神科や心療内科に繋がって初めて診断が下されるケースもある。

いずれにしても、集団や組織のなかでの人間関係に難があり、本人は生き辛さを感じ社会生活に悩みを抱えているケースが多い。

ASDのクライエントへのアプローチの方法

ASDのクライエントに対して、我々ソーシャルワーカーは発達障害者支援法に基づいて支援を検討することができる。

支援を行う場合、発達障害の場合は特に、大きく分けて医療・教育・福祉、労働の多職種連携が必要になる事例が多い。

発達障害者支援センターが都道府県・指定都市において運営されていて、発達障害児・障害者の地域における支援のために、関係施設職員や学校の教職員、福祉事務所、児童相談所、更正相談所、保健所、医療機関、学校、職業安定所等の関係機関との連絡調整業務を実施している。

発達障害者支援法にはないが、関連性のある支援制度が「発達障害情報・支援センター」のホームページに掲載されており、本人やご家族だけでなく、支援に関わる関係者の知識を補完する役割を果たしている。

精神障害者保健福祉手帳を取得するメリット

関連性のある支援制度の活用における具体的な支援行動のひとつとして、精神障害者保健福祉手帳の取得支援がある。

精神障害者保健福祉手帳は精神障害者が一定の精神障害の状態であることを証する手段となり、各方面の協力を得て各種支援策を講じやすくすることにより、精神障害者の自立と社会参加の促進を図ることを目的としている。

「障害者手帳を取得すると差別や偏見があるかも知れない」と心配されるクライエントには、障害者手帳を取得したからといって必ず周囲にオープンにする必要もないため、周囲に知られなくない場合は知られないようにすることもできると、障害者手帳のメリット・デメリットを正しく伝える必要がある。

精神障害者保健福祉手帳の申請は、市町村の窓口で行い、都道府県知事(指定都市にあってはその市長)の認定に基づいて交付される。

交付後、精神障害者に対する援助措置は下記のものがある。

① 心身障害者扶養共済

② 国税、地方税の諸控除及び減免税

③ 公営住宅の優先入居

④ NHK受信料の免除

⑤ 生活保護の障害者加算

⑥ 生活福祉資金の貸付

⑦ NTTの無料番号案内

⑧ 携帯電話使用料の割引

⑨ 公共施設の利用料割引や公共交通機関の運賃の割引 などである。

各自治体により対象者、サービス内容は異なる場合があり、福祉担当窓口に確認する必要がある。この手帳の取得により障害者雇用での就職を選択することが可能になり、働き方や通院などの配慮を受けやすくなる。

このことはASDのクライエントで「配慮があった方が働きやすい人」にとって大きなメリットがある。

なぜなら、ASDにおいては得意なことと苦手なことの差が著しいため「苦手なことでも、慣れればできるようになる」といったような一般的な考え方が通用しないケースがあるからだ。業務や環境のミスマッチは、本人自身にストレスがかかることはもちろん、周囲も対応に疲弊してしまい悪循環を招く。したがって、特に就労支援においては、障害特性による強みと、一人ひとりの得意なことと興味関心を活かすことが大切になる。

まとめ:ASDという素晴らしい「個性」を活かした支援がカギ

ASDのクライエントの強みと興味関心について理解し、その長所を活かすサポートを可能にするために、我々は地域連携を推進していかなければならない。

地域連携をつくるベースの活動は、個別ニーズへの対応と、支援期間の役割分担によるコラボレーションである。

すべては、個別ニーズからスタートし、人と人、機関と機関が持てる機能を出し合い、補完し合うことで生み出されるということを常に忘れず、支援に取り組まなければならない。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする