【依存症】アルコールの作用とアルコール依存症のメカニズム

こんにちは、 ちあき です。

ミュージシャンで俳優のピエール瀧容疑者がコカインを使用した疑いで逮捕された事件が話題になっていますね。

瀧容疑者は「20代からコカインや大麻を使用していた」などと供述していることが捜査関係者への取材でわかりました。

若年から常用していたところを考えると、瀧容疑者は「薬物依存症」だった可能性があります。

メディアで面白おかしく揶揄されているのを観ると、苦々しくてたまりません。

知識のないひとが、心が弱いだとか適当な事を言って人格否定することで、当事者と家族の依存症からの回復はどんどん困難になってしまいます。

私は、ピエール瀧さんの回復を心から応援しています。

依存症は、だれにでもありえる、本当にすぐ隣にある身近な病気のひとつです。

依存症は、だらしないからなるわけでも、ダメな人がだからなるわけでも、悪い人だからなるわけでも、心が弱いからなるわけでもありません。

決して、人格の問題ではないのです。

実は、成人を過ぎた半数以上の人々が口にしているアルコールも、コカインに近い依存性を持っているのですが、ほとんどの人がそんな認識を持っていません。

今日は、アルコールが脳にどう作用して、どこをおかしくし、その結果何が起こるのか、を医学的側面から分析したいと思います。

なぜ酒が止まらなくなり、なぜ思考がおかしくなるのか?

依存症は、決してあなたの意志が弱いわけでも、あなたの性格が悪いわけでもないんです。

脳を溶かし脳を騙す?「アルコール」という物質の特性

脳は、半分以上が脂質で構成されており、残りが蛋白質です。

アルコールは、水溶性が高く、分子が小さく、脂質を溶解します。

つまり、水に溶けやすくて小さくて脳を溶かす物質、ということです。

脳の血液脳関門『BBB(Blood Brain Barrier)』というバリアをスルリと通り抜け、血液に乗って脳に入り込みます。

だから、酒を飲み続け体内にアルコール血中濃度が常時高かった人は、ずっとアルコールに脳が漬かっていた頭だったといえます。

その場合、6ヶ月しないと健康な人の脳には近づけません。

ただ、断酒していれば脳萎縮と脳機能はある程度回復すると言えます。

酒を止めても6ヶ月までドライドランクなどに悩まされるのは、脳の機能が回復していない、アルコールの影響から完全に抜け切れていないからだとされています。

なぜ酔っぱらうと理性が働かなくなるのか?

飲み会でよくある光景ですが、酔うと気が大きくなったり、感情的になったり、セクハラやパワハラしてしまう人、いますよね?

それは、本性が現れた、などと勘違いされていますが、正確には間違いです。

本当の理由は、理性を司る『前頭葉』という脳の部分に血がなかなかいかなくなるからです。

アルコール依存症の脳は、前頭葉の血流が低下しています。

つまり、理性を働かせる部分に血が行かず、理性が働かなくなっているのです。

そうした脳の血流低下により、アルコール依存症であろうとなかろうと、酩酊すれば理性は働かなくなり欲望が剥き出しになります。

さらに連続飲酒や習慣飲酒になっていると常時理性が働かなくなっていて、当然なのです。

酒を飲んでバケモノになるのは、医学的にはこのような背景があります。

飲酒運転をしてひき逃げしてしまうのも、酒を飲めば誰でも正常な判断ができないから。

「責任感がない」「人として間違っている」などと飲酒による失敗をした人の人間性や人となりを叩いたり、「お酒が悪いんじゃない」「私は酔ってもそんな風にはならない」と自分を棚に上げて飲酒による悪影響を見て見ぬふりをするのは、間違っていると考えています。

だって、現実に脳を溶かし脳の血流を低下させ、倫理的な判断を阻害しているのは、酒なんですから。

お酒が悪いし、動物学上のヒト科である限り同じである以上だれでも酔ったらそんな風になるし、責任感があろうが人として全うだろうが間違いはあるのです。

なぜアルコールをたくさん飲んでしまうようになるのか?

アルコールは麻酔薬なので、中枢神経を抑制する方向に働きます。

興奮剤かと思いきや、脳の活動を抑制する物質です。

アルコールはドーパミン受容体(=ドーパミンを出させるスイッチ)に作用して、快楽のホルモン、ドーパミンを放出させます。

しかし、あまりにドーパミン受容体を刺激し続けると、カラダが、

「おいおい、出しすぎだよ」

同じ量のアルコールではあまりドーパミンを出さないようにしたり、ドーパミン受容体自体を少なく調整したりします。

(この変化をダウンレギュレーションと言います。)

そうなってしまうと、同じ量アルコールを飲んでもドーパミンが足りなくなります。

ということは、快感が足りない、と感じます。

だから、もっと大量にお酒がほしいと脳が勘違いしてしまいます。

こうして、酒量はどんどん増えていきます。

だから、アルコール依存症はあんなに狂ったように大量のお酒がほしくなるのです。

だから、私たちに飲むという選択肢はない
(再飲酒しやすい時期と注意点)

私が通院する病院で学んだ再飲酒しやすい時期の変遷や要因をまとめると、以下のような図になります。

①断酒後2週間前後

…自覚症状の軽減に基づく安心の時期。治療の動機づけがまだ不十分であり、病識が欠けていることが多い。

②断酒後2〜3ヶ月

…断酒継続のための精神的緊張の弛緩の時期。一般的に緊張が高かった状態から緩みやすい。(私はここで結構やられました。)

③断酒後6ヶ月〜1年前後

…断酒生活への憧れからくる病識の退行の時期。正常飲酒ができるんじゃないかと勘違いしてしまう。「もしかしてお酒とうまく付き合えるかも」という思いが沸き上がりやすい。

断言できますが

この病気になってしまったら

適量飲酒など

絶対に無理です。

なぜなら、「コントロール障害」だからです。

もうすでにコントロールできなくなっているのです。

どうしてか?

脳が変質しているからです。

アルコールが体内に入ると

際限なく求めてしまう

ドーパミン報酬系回路がすでに出来上がっていて、

1滴でもアルコールが入れば

スイッチがいつでも入るからです。

断酒会やSNSで酒害を繰り返し思い出して、言葉やtweetに出して、ほかの人のtweetを読んで、はっと気づくことがあります。

その繰り返しにより、1日1日を、薄氷を踏むように、断酒しながら進んでいけます。

「やはりお酒をやめていてよかった」

「お酒は飲んではいけないな」

と確認させてくれます。

その気づきが途絶えると、

「あれ?いけんじゃね?」

という謎の自信を脳が創り出します。

4回スリップして、

私はそれが間違いであることを

嫌というほど思い知りました。

誰でもおそらく、

いけるかも

と思ってしまうときはあります。

飲んでいたころの心情をふと思い出して、

郷愁のような感情を抱くときもあるでしょう。

でも、それは脳が作り出しているまやかしです。

この記事を思い出して、「いやいや、ダメダメ」と理論的に自分を説得する材料にしていただければ幸いです。

では、また!


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