【社会福祉】更生保護制度においてソーシャルワーカーが真にアプローチすべきこととは?

こんにちは、ちあき です。

まずは、更生保護制度の概観を整理するにあたって、現代社会に対して少し思うところがあったので、まとめてみました。

更生保護制度の関連機関と問題点

更生保護制度の関連機関は大きく6つに分けられる。まず、それぞれの機関における問題点を整理する。

裁判所

まず裁判所だが、少年による事件はすべて家庭裁判所に送致される。これを全件送致主義という。

少年保護手続に沿って少年院を出た後も保護観察所を通じて健全育成と改善更生を支援する福祉的機能をもつわけだが、問題点はその性質から少年の自由を束縛し強制的な要素を持つことである。罪を裁くという司法的な処分が強制されることに反発したり腐ったりして更生を妨げる可能性もある。

検察庁

検察庁において検察官は刑の執行を監督する立場である。

問題点は、監視と援助という不信と信頼を両立しなくてはならない矛盾を孕んでいることである。福祉的観点から保護観察付きで執行猶予を求刑することもあるが、あえて前科者のレッテルを貼って本人の社会復帰を困難にする可能性がある。

矯正施設(少年院・刑務所・拘置所)

矯正施設は、少年院や刑事施設(刑務所・拘置所)である。

問題点は、矯正施設を出所後社会に居場所がなく、再犯して再度入所するケースが多いことである。施設で身につけた健全な習慣を社会に戻ってからも継続することは容易ではない。施設での教育・指導の充実と塀の外でも継続できる体制づくりが必要とされている。

児童相談所

児童相談所は児童を心身共に健やかに育成することを目的とする児童福祉法を根拠法令として児童を対象に非行相談を受けている機関である。

問題点は、年々増加し続ける児童虐待の通報への対応で職員が疲弊しており充分な対応ができない可能性が高まっている点である。職員の使命感で支えられているのが現状である。

公共職業安定所

公共職業安定所・自治体等は就労支援と生活支援が役割である。就労ができず経済的に困窮することは犯罪につながるリスクファクターであり、社会的に脱落し社会的排除を起こさないために大変重要である。

問題点は、生活自立を含めた包括的な就労支援制度がないことである。本人か機関の人間が発達障害や知的障害の知識が乏しいと、適正にサービスを享受できないという柔軟性の問題もある。

民間団体

民間団体は、たとえばNPO法人や社会福祉法人などである。住宅支援・就労支援・社会貢献活動を役割としている。

問題点は、民間であるために組織を継続性が不透明であること、個々のニーズに沿って展開する分細分化され、中には援助の質が低くなる可能性がある。

犯罪は関係ない出来事ですか?犯罪者はヒトではありませんか?

実効的かつ安定した正規就労と社会復帰までの長い道のりを共に歩むことが可能な処遇プログラム、つまり点の支援ではなく線の支援ができるよう、各機関が相互に連携を強化することが、今後の課題である。

そのためには地域社会の理解が必要不可欠である。

犯罪者という偏見にまみれたレッテルでラベリングして排除しようとする不安感の正体は、とりもなおさず、「失敗を許さず一度落ちこぼれたら這い上がれない」現代の冷たい日本社会の在り方そのものである。

誰でも犯罪を犯す可能性はある。

間違いは誰にでもある。

そこからどう生きていくか、という姿こそ社会的に評価を得るべき視点であり、この視点を取り戻すことが閉鎖的な今の社会構造を打破する鍵であると考えている。

余談:少年法の適用年齢について

昨今、少年による親殺しや通り魔などのニュースが報じられている。

少年法の適用年齢を18歳に引き下げることや少年法を厳罰化し犯罪の内容に対応した刑罰にすることは、私は賛成である。

罪は償わなくてはならない。

それは成人でも少年でも変わらない。

罪を平等に受けることこそ人格の尊重の形の一つであり更生の第一歩である。

少年だから判断能力がないだろうと考えるのは、本人の人格を軽視していると考える。

ただ、10代の少年に長期の刑罰が科せられた場合、現在の受刑では社会復帰の道は閉ざされる可能性があるのは事実である。

問題は、未成年の犯罪における社会的背景と彼らの社会復帰に当事者意識を持てないことではないだろうか。彼らは「人生の落伍者」であり「自分とは違う下劣な人種」だと区別して安心を得ようとする心こそ、犯罪者のそれよりも下劣で卑しい考え方ではないだろうか。

マイノリティーが投影する、現代の失われた光と、闇の実態

依存症や発達障害や知的障害に対しても同様に、ラベリングされて社会的に排除されている現状がある。

ソーシャルワーカーとして真にアプローチすべきは、実は目の前の犯罪を犯してしまった子ではなく、その子を取り巻く地域・ひいては世の中への啓発活動であり、環境調整なのではないか。

長期に服役したとしても、刑期中にその子が抱えている問題を細分化して各種専門家が腰を据えてケアできる体制を整えれば、長い刑期は無駄ではなくなる。むしろ必要な回復のための有意義な期間になるだろう。その後の社会復帰を見据えたケアが行われ、NPO法人や社会福祉法人、提携する民間企業などでの就労支援と生活支援が遂げれなく繋がり、刑期満了とともに、刑期中に行われたケアの延長線上に社会での生活があれば、違和感なく脱落なく、スムーズに移行することができる。

復帰した社会で、「失敗してもいいんだよ」「再び立ち上がって頑張ればきっとまた輝くことができる」という光を感じることができれば、刑務所や少年院しか居場所がない、という悲しい現実に絶望し、再犯によるリターンしてしまう確率は限りなく低くなり、最終的に犯罪の発生率は低下し、世の中はより良くなって、地域の住民や世の中は本来の明るさを取り戻すことができるのではないだろうか。

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