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【依存症】依存症と依存症の疑いの違いと様々な定義

こんにちは、ちあき です。

AAAの浦田直也氏の暴行事件が報道され、SNSで触れられることが多くなっています。

逃げた女性、追いかけて蹴る…AAA浦田容疑者

人気グループ「AAA(トリプル・エー)」のリーダー浦田直也容疑者(36)が暴行容疑で逮捕された事件で、浦田容疑者が逃げる女性を追いかけ、蹴っていたことが捜査関係者への取材でわかった。浦田容疑者は21日、東京地検に送検された後、釈放された。警視庁月島署が今後、任意で捜査を続ける。

捜査関係者によると、浦田容疑者は19日午前5時頃、東京都中央区のコンビニ店で、面識のない20歳代の女性に「飲みに行かないか。自分はAAAのメンバーだけど知らないか」と声をかけた。女性が「知らない」と答えると、平手で頬を殴り、店外に逃げた女性を追いかけて足を蹴ったという。

浦田容疑者は21日夜、所属事務所で記者会見し、「被害者に大変なご迷惑をおかけしたことを心よりおわびします」と謝罪した。事件前日の18日夜はウイスキーやワインなどを20杯以上飲んだといい、「最後は自分が何を飲んでいたのかもわからない状態だった。事件のことは記憶になく、警察から言われて知った」と話した。

出典:読売新聞記事

「彼はアルコール依存症か、そうでないか」について意見が結構分かれています。

依存症か、そうじゃないか、ってどういう基準で判断できるんでしょうか?

なんとなくモヤモヤしたので、エビデンスのある事実をもとに、考えをまとめてみたいと思います。

 

最新のアルコール・薬物使用障害の診断治療ガイドラインでの考え方

アルコール依存症の治療に関連して、新しいガイドラインが2018年に公開されました。

新ガイドラインは、プライマリケア医や内科医、研修医が治療に応じる機会の多いと思われる初期のアルコール依存症患者に焦点をあて、精神科などの専門医療機関でなくても対応が可能となることを目的として作成されています。

なぜなら、アルコール依存症は専門医療機関に紹介することが望ましいとされてきましたが、実際には専門医療機関の数が少ないといった医療資源の課題や、専門医療機関への紹介の同意が得られない方、遠方のために通院ができない方が一定数存在するといった患者要因などから、プライマリケア医や内科医、研修医が初期対応を行う必要があるからです。

また初期対応が可能になることでアルコール依存症の早期発見・治療につながること、ひいては治療のギャップを少なくすることに有用と考えられます。

今までアルコール依存症の治療は断酒の達成とその継続を目標とし、アルコール依存症の専門医療機関を中心に行われてきました。

しかしながら、断酒を治療目標とする事に抵抗感を持つ患者(特に初期のアルコール依存症患者)が多くいたことが、上記の治療のギャップの原因の1つと考えられます。

これに対し、近年、すぐに飲酒をやめることができない場合は飲酒量を減らすことから始め、飲酒による害をできるだけ減らすという“ハームリダクション”の概念が提唱されています。

この概念は、アルコール依存症の治療のギャップを少なくすることに有用と考えられ、わが国においても欧米に遅れることなく飲酒量低減という治療選択肢を加えた新アルコール・薬物使用障害の診断治療ガイドラインとして2018年に公開されたのです。

※「ハームリダクション」は、すぐに断酒できない場合の段階的に「減らす」中間目標であり、最終的には断酒がゴールになります。現在の医療において断酒ではなく節酒を推奨するという解釈は正しくありません。あくまで、初期のアルコール依存症の段階で治療から離脱してしまわないために、取り入れられた考え方です。

出典:新アルコール・薬物使用障害の診断治療ガイドラインに基づいたアルコール依存症の診断治療の手引き【第1版】

 

医師が依存症と診断する基準は2つ 「ICD-10」と「DSM-5」

アルコール依存症の診断は、主に『 ICD-10 精神および行動の障害 臨床記述と診断ガイドライン(新訂版)(医学書院)』が用いられます。

ICD-10に記載されている「依存症候群」は、ある物質を使用することが、他の行動よりもはるかに優先するようになる生理的、行動的、認知的な現象のことを指します。

精神作用物質(薬物など)、アルコール、タバコを使用したいという欲望が非常に強くなり、時に抵抗できないほど高まる状態です。

例として、アルコール依存症は、平日・週末を問わず、飲酒しなければ我慢しがたい欲求に駆られます。症状が重くなると、入手可能な物質ならどのようなものでも使用したいという衝動を常に感じ、使用を絶つと苦悩、感情の激しい高ぶりなどが見られるようになります。

 

■「ICD-10」診断基準

以下の 6 項目のうち、過去 1 年間に 3 項目以上が同時に 1 カ月以上続いたか、または繰り返し出現した場合 “アルコール依存症” と診断されます。

 

1、渇望:物質を摂取したいという強い欲望あるいは強迫感。

2、飲酒行動のコントロール:物質使用の開始、終了、あるいは使用量に関して、その物質摂取行動を統制することが困難。

3、離脱症状:物質使用を中止もしくは減量した時の生理学的離脱状態。その物質に特徴的な離脱症候群の出現や、離脱症状を軽減するか避ける意図で同じ物質(もしくは近縁の物質)を使用することが証拠となる。

4、耐性の増大:はじめはより少量で得られたその精神作用物質の効果を得るために、使用量を増やさなければならないような耐性の証拠(この顕著な例は、アルコールとアヘンの依存者に認められる。彼らは、耐性のない使用者には耐えられないか、あるいは致死的な量を毎日摂取することがある)

5、飲酒中心の生活:精神作用物質使用のために、それに代わる楽しみや興味を次第に無視するようになり、その物質を摂取せざるを得ない時間や、その効果からの回復に要する時間が延長する。

6、有害な使用に対する抑制の喪失:明らかに有害な結果が起きているにもかかわらず、依然として物質を使用する。例えば、過度の飲酒による肝臓障害、ある期間物質を大量使用した結果としての抑うつ気分状態、薬物に関連した認知機能の障害などの害。使用者がその害の性質と大きさに実際に気付いていることを(予測にしろ)確定するよう努力しなければならない。

彼は会見で「もうお酒は飲まない」と公言しましたが、もし再度飲み始めて1ヶ月経過しまった場合、1・2・6に該当するので、医師がその時点で診断するとしたら、「アルコール依存症」でしょう。

 

もう一つ、『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル(医学書院)』があります。

DSM-5では「物質使用障害」として、同様の疾患について記載されています。アルコール、大麻、幻覚薬、吸入剤、オピオイド、鎮静薬、睡眠薬、抗不安薬、神経刺激薬、タバコ、その他のすべてにおいて、強烈な渇望を抱くようになる状態を指します。

 

■「DSM-5」診断基準

診断基準は、「制御障害」「社会的障害」「危険な使用」「薬理学的基準」の4群に分けて考えることができる。一般的な評価として、2~3つの症状が当てはまれば軽症。4~5つの症状が当てはまれば中等度、6つ以上は重度の物質使用障害と考えられる。

 

基準1 その人は当初意図していたよりも、より多量にまたはより長期間、物質を使用するかもしれない。

基準2 その人は物質の使用を減量または制御しようという希望を持続的に表明しているかもしれないし、使用量を減らしたり使用の中断を試みたりした時の失敗を報告するかもしれない。

基準3 その人は非常に多くの時間を、物質の獲得、物質の使用、物質の作用からの回復に費やす場合がある。

基準4 渇望は薬物に対する強烈な欲求または衝動となって表れ、それはいかなる時も出現することがあるが、特に出現しやすいのは、かつて薬物を獲得したり使用したりした環境においてである。

基準5 物質使用を繰り返した結果、職場、学校、または家庭で果たすべき重要な役割責任を果たすことができなくなることがある。

基準6 物質の作用によって引き起こされたり、悪化したりした、社会上のまたは対人関係上の問題が持続したり、繰り返されたりしてもなお、その人は物質使用を続けるかもしれない。

基準7 物質使用の結果、重要な社会的、職業的あるいは娯楽的な活動が放棄されたり、縮小されたりするかもしれない。

基準8 身体的に危険な状況で物質を繰り返し使用するという形をとる場合がある。

基準9 持続的または反復性の身体的または精神的な問題が物質によって引き起こされた、あるいは悪化したらしいとわかっていても、その人は物質使用を続けることがある。

基準10 望むような効果を得るために必要な物質の量が著明に増大するか、または通常量を摂取した際の効果が著明に減弱する。

基準11 離脱。物質を長期にわたって大量に摂取していた人において、血中あるいは組織内の物質の濃度が減少した時に生じる症候。

 

つまり、「社会的障害」の項目である、5・6・7に当てはまるので、「軽度アルコール使用障害」と診断される可能性があります。

 

医学的には、この2つの基準の項目にあてはまる可能性が場合(自己診断ではなく、客観的にみて当てはまるという意味で)、「アルコール依存症の疑い」となり、「アルコール依存症」の病名が付くかつかないかは、医療機関で医師が診て決めます。

 

したがって、医学的には「依存症かそうでないか」を判断できるのは、『診断をする医師だけであり、私たち素人が無責任に、依存症かそうではないかを判断するべきではない』といえます。

 

「疑いがあるかどうか」はどう判断するの?

では、その前段階、「アルコール依存症の疑い」は、どう判断するのでしょうか?

一般的にアルコール依存症のスクリーニングには3種類のテストがあり、『新久里浜式アルコール症スクリーニングテスト』、『CAGEテスト』、『AUDIT』があります。

新久里浜式・CAGE テスト サイトリンク

AUDIT テスト サイトリンク

新久里浜式やCAGEはアルコール依存症専門病院で診断に使用されてきた実績があり、医療機関のHPによく掲載される傾向にあります。

おもしろいことに、AUDITはWHOが作成しているのですが、アルコール飲料製造メーカーが好んでHPに掲載しています。

メディアで得られる情報は限られますし真偽のほどがわからないのでこれは正確ではないかもしれませんが、得られた情報だけでスクリーニングテストを実施擦れると、いずれのスクリーニングでも浦田直也氏はハイリスクだと判断できます。

つまり、スクリーニングテストの観点で考えれば、彼は「アルコール依存症の疑い」であると言えます。

しかし、今回のケースは「ビンジ飲酒」によるものであり、アルコール依存症ではないのでは?という見解もあります。

 

「ビンジ飲酒」とは何か?

ビンジ(binge)とは、「大量に短時間で」という意味の形容詞です。

つまり、「ビンジ飲酒」とは、「大量に短時間で飲酒する行為」を指します。

では、大量・短時間の定義はなんなのか?

内閣府で平成27年6月12日に行われたアルコール健康障害対策関係者会議において、久里浜医療センターの樋口進委員が次のように用語を説明しています。

ビンジ飲酒(Binge drinking)

・ 短時間に大量に飲酒すること(日本におけるコンセンサスなし)
・ WHOでは「heavy episodic drinking(大量機会飲酒)」を、1回
60グラム以上の飲酒を30日に1回以上する飲酒と定義
・ 米国NIAAAは、「アルコール血中濃度が0.08g/dLに達する飲
酒」と定義。通常の男性は5ドリンク(70g)、女性は4ドリンク
(56g)を2時間以内に飲酒した場合」(米国の1ドリンクは14g)

 

アルコール60gとは、どのくらいの量なのでしょうか?

 

■アルコール20gに相当するアルコール飲料の量

 

日本酒なら、3合

ビールなら、1.5リットル

ウイスキーなら、ダブル3杯

缶酎ハイなら、4.5缶

これくらい空けてしまう日が月1回でもあったら、「ビンジ飲酒」です。

 

浦田直也氏は当時、朝まで飲んでいて酩酊状態になり、記憶がなくなっている状態です。

「ビンジ飲酒」により、記憶をなくす=「ブラックアウト」を起こしています。

このように、酔い方に異常があるケースを、「異常酩酊」と定義します。

 

酔い方の異常「異常酩酊」は2種類

飲酒してアルコール血中濃度に応じた通常の酩酊を単純酩酊と言います。

一方で血中濃度に対応しないような著しい興奮や幻覚などの精神症状を伴うような酔い方があり、異常酩酊として区別されます。一般的に酒乱と呼ばれる酔い方はこれに含まれます。

日本で使用されている代表的な酩酊分類にBinderの分類があります。

普通の酔っている状態から病的な酩酊状態までを3つに分けています。

そこでは単純酩酊と異常酩酊に大きく二分され、

異常酩酊はさらに

単純酩酊と量的に異なる複雑酩酊 

単純酩酊と質的に異なる病的酩酊 に 2種類に分類されています。

このような分類は、客観的な身体的指標によって決定することができず、症候学的な観察に基づいています。

 

複雑酩酊は、飲酒によって気分の刺激性が高じて、著しい興奮が出現します。持続時間はかなり長く、一時的に鎮まっても興奮が再燃して波状的な経過を辿ることがあります。平常時では抑えられている脳機能の衝動性や未熟性がアルコールによって賦活されたと考えられます。重大な情動犯罪や突発的な自殺につながることもしばしばあります。酩酊時の記憶は断片的であることが多いですが、概括的な記憶は保持されており、限定刑事責任能力が認められます。

 

病的酩酊は、意識障害があり、単純酩酊や複雑酩酊とは質的に異なる状態像を呈します。幻覚が生じたり見当識が失われて、周囲の状況への認知はほとんど不可能になっています。周囲から見ると了解不可能な言動を繰り返し、幻覚・妄想や状況の根本的な誤認から重大な犯罪に及ぶこともあります。刑事責任は原則的には無能力が認定されます。

 

ここで勘違いしてはいけないのは、刑事責任についてです。

「酔っていて覚えていないから責任能力は問われない」というわけではありません。

米国の全国司法統計の有罪者(14,000人余り)の約60%が犯行時にアルコールか薬物を使用し、約30%はアルコール単独の使用群であったという報告があります。

酩酊時の犯罪は一般に暴力や性犯罪につながりやすいことが知られています。

最近では、飲酒行動そのものは本人の自由意志に基づくものなので、その結果としての犯罪行為についても「原因においては自由な行為」という考えから、酩酊犯罪の責任能力に関して刑事政策的にかなり厳しい態度がとられる傾向にあります。

 

また、異常酩酊の基盤や誘引としては、遺伝的な素因・アルコール依存症・脳挫傷や脳梗塞などの脳器質性障害・極度の疲労や衰弱状態などが考えられています。

異常酩酊は繰り返すことが多く、事故や事件に繋がる危険性が高いため、断酒を始めることが必要とされます。

まとめ:なんかいろいろ書いてあるけど、結局どっちなの?

ビンジ飲酒であっても、異常酩酊であっても、その定義によって「アルコール依存症ではない」とは結論付けることはできません。
事実から言えることは、まとめると以下の通りです。
今回の事件を起こした本人は「異常酩酊」になっていた、それは「ビンジ飲酒」という飲むスピードと量の異常が直接的原因で引き起こされた。
そのような「異常酩酊」の背景(基盤・誘因)のひとつには、アルコール依存症が考えられるので、
「アルコール依存症」かどうかは、病院で医師の診断を受けなくては決定できないが、
「アルコール依存症の疑い」があると
医学的かつ客観的にスクリーニングと事件の状況からは、判断できる。
また、異常酩酊は繰り返すことが多いため、断酒を始めることが必要であると考えられる。
これに似た状況に、元サッカー選手の前園真聖さんのケースがあります。
厚生労働省の依存症啓発イベントにも参加している前園真聖さんはアルコール依存症ではないのでしょうか?
「アルコール依存症の疑い」ではあっても、専門病院で医師の診断がつかなければ、厳密にいえば「アルコール依存症」ではない、といえるのが、彼の状況だといえます。
■前園真聖さん 飲酒トラブル概要
2013年10月13日午前9時15分ごろ、自宅近くの路上で、タクシー運転手の男性の右頬を殴った後、右太ももを蹴った疑いで逮捕されたが、男性にケガはなく、その後釈放された。
また会見で報道陣から、過去の飲酒トラブルを聞かれると「昨年10月にも飲酒後、タクシー運転手とトラブルを起こしていた」と初めてではないことを明らかに。「(運転手の)物の言い方などに腹を立て、強い言葉を言った」と経緯を説明。このときはタクシーを手配した知人に運転手が苦情を入れ、前園氏本人が直接謝罪し解決した。
会見したこの日は、もともと香川県でサッカースクールがあり「酒で仕事を飛ばすとは…」と痛恨の面持ち。「言い訳できない。飲もうが飲むまいが、しっかりしなければいけない」と言った上で「断ちます。お酒は」と強い口調で宣言した。
以来、素晴らしいことに断酒をずっと継続しておられます。
専門病院による確定診断・通院・投薬などが行われていないという意味で、「アルコール依存症ではない」といえるでしょう。
しかし、本当に重要なのは、依存症か否か、なのでしょうか?
「アルコール依存症でないから、その人の人格の問題?」
「アルコール依存症だから、病気のせい?」
いやー、違いますよね。
「アルコール依存症であろうとなかろうと、犯した本人の罪は変わらない」
「アルコールで異常酩酊を繰り返す場合は、社会的責任を果たせないので断酒を始める必要がある」
この2つがまぎれもない事実です。
だから、AAAリーダーである彼はこれから被害者の方に対して犯した罪を償わなくてはいけないし、今後、自分のためにも断酒に取り組み始める必要があります。
病気や飲酒の有無は、犯罪の事実のとらえ方を変えるファクターにはなりえない。
病気でないからといって、彼を否定したり非難する権利は被害者以外には、誰にもない。
ただ犯した罪とその再発を防ぐためのメソッドとしての断酒があり、それができない場合の医学的アプローチとして「アルコール依存症」と分類したうえで診断・治療があるのです。
なんだか問題が混在している気がしたので、長くなりましたがまとめてみました。

とにかくまずは被害者の方の回復。

そして彼本人の回復を願ってやみません。

疲れたー。寝よ。


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【依存症】「松村断酒語録」に学ぶ『断酒』の心得とは?

こんにちは、ちあき です。

私たちの地域の断酒会では、「断酒の誓い」を参加者全員で声に出して読んでみる、ということを会の始まりに毎回やっています。

他の地域の断酒会はどうなんでしょうか?

私はまだひとつの地域しかしらないのですが、地域によっては断酒会のなかでもそれぞれのスタイルがあるとか。

おもしろいですね。

今日は、私たちの断酒会に参加すると配られる紙に「松村断酒語録」という53の言葉が載っていたので少し調べてみました。

 

松村春繁 というひと

松村断酒語録は、断酒会の創始者であり全日本断酒連盟初代会長である「松村春繁」の言葉を集めたものと言われています。

 

松村春繁はアルコール依存症患者です。

享年65歳(1905(明治38)年4月1日~1970(昭和45)年1月30日)。すでに亡くなっています。

後免町(現・南国市)の診療所・川田内科より紹介されて来院、下司孝麿が勤務する町田病院精神科外来を受診。1950年~1956年の6年間、高知市内帯屋町二丁目の町田病院内科に5回の入院を繰り返します。

『兄のアルコール依存症死』にも『今際の母の手が振り払った拒絶』にも『妻文子に常子の誕生』にも断酒できず、『主治医のなんともいえない顔』にこれは見捨てられては大変だと、ようやく断酒につながります。医師が医療の敗北を認め、そのとき松村に始めて断酒の意思が芽生えました。

凄絶な酒害体験を経て酒をやめたのは昭和32年、彼が52歳の時。以後65歳で亡くなるまで渾身の力で活動し、断酒会活動に身を捧げました。

昭和38年11月、全日本断酒連盟が高知で結成されたのは、彼の功績があってこそと言われており、いわば日本における『断酒会の始祖』です。

それまで日本では、アルコール依存症患者は「アル中」と呼ばれ、人格的な問題であり治らないもの、と見なされていました。その認識が偏見であることを日本中に知らしめたのが、松村春繁氏でした。

 

松村語録は、全国の仲間達がそんな松村春繁氏より得た、最も感銘の深かった言葉を53に集約し、以後「松村語録」として伝えています。

なお、全断連発刊の『指針と規範』は、この松村語録をもとに作成されています。

 

松村断酒語録

  1. 例会には必ず出席しよう。
  2. 一人で止めることはできない、無駄な抵抗は止めよう。
  3. 断酒に卒業なし。
  4. 今日一日だけ止めよう。そして、その一日一日を積み重ねよう。
  5. 前向きの断酒をしよう。
  6. 例会には夫婦共に出席しよう。
  7. 例会の二時間は断酒の話のみ真剣に。
  8. 自分の断酒の道を見出だそう。
  9. 断酒優先をいつも考えよう。
  10. アル中は心身の病気である。
  11. 例会で宗教や政治の宣伝をしてはいけない。
  12. 酒害者の最大の敵は自分自身であり酒ではない。
  13. 自信過剰は失敗のもと。
  14. 失敗したらすぐ例会へ。
  15. アル中は一家の病気である。
  16. 断酒会は、酒害者の酒害者による酒害者のための会である。
  17. 酒害者は酒のため墓場へ行くか、断酒会で酒を断つか二つの道しかない。
  18. 会員は断酒歴に関係なく平等である。
  19. 自覚なき酒呑みの多い中で入会された勇気に敬意を表する。
  20. 断酒会員には普通の人より何か優れたところがある。
  21. 節酒は出来ないが断酒は出来る。
  22. 飲酒に近づく予防のため自己の酒害を常に認識しよう。
  23. 酒害者に対する奉仕は自分の断酒の糧である。
  24. 仲間の体験をよく聞き、自分の断酒を再確認しよう。
  25. 家族、同僚の協力を得るために、絶対飲んではいけない。
  26. 断酒会に入会すること。
  27. 最初の一杯に口をつけないこと。
  28. 時間励行。
  29. 仲間に励ましの手紙を書こう。
  30. 全国組織の拡大につとめよう。
  31. 厳しさのないところに断酒なし。
  32. 実践第一。
  33. 他力による断酒ではなく、自力、自覚の上に立つ断酒であること。
  34. 失敗しても悲観するな、成功への糧とせよ。
  35. 消極的だが初心者は酒席に出ないこと。
  36. 姓名を堂々と名乗り、断酒会員であることを明確にせよ。
  37. 各人の性格の相違を認め、各人が自らの体験を通じて体得せよ。
  38. お互いが欠点や失敗を話し合って、裸の触れ合いが出来るように努めること。
  39. 酒の奴隷になるな。
  40. 断酒会員であることを誇りに思え。
  41. どんなことがあっても会から離れるな。
  42. 条件をつけて断酒をするな。
  43. 酒害者の最後の一人までも残すな。
  44. 素直な心で話を聞こう。
  45. 一年半したら会の運営に参加しよう。
  46. 私の屍を乗り越えて断酒会を益々発展させて下さい。
  47. 一県、一断酒会。
  48. 会員は人に疑われるような場所に行くな。
  49. 初志貫徹。
  50. 君と僕は同じ体質だ。断酒するより他に生きる道はない。
  51. 語るは最高の治療。
  52. 例会は体験発表に始まり体験発表に終わる。
  53. 聞くは最高の治療。

引用:公益社団法人 全日本断酒連盟 ホームページ

https://www.dansyu-renmei.or.jp/zendanren/goroku.html

 

いかがだったでしょうか。

この語録、その時々、回復の段階で心に響く箇所が変わるような気がするので、おもしろいです。

今見返してみても、「そうだなー」と思うことは変化しているように感じます。

スリップして打ちひしがれていたとき目に飛び込んできたのは、

「一人で止めることはできない、無駄な抵抗は止めよう。」だったなー、とか思い出します。笑

参考になれば幸いです。

 

ではまた。

【依存症】コントロール不可能なことをコントロールしようとしてません?

こんにちは、ちあき です。

今日は断酒会でした。同じ依存症でも、本当にいろいろなひとがいますね。

断酒会の話は秘匿義務があり会のメンバーじゃないと話せないんですが、みんなに知ってもらいたいくらい本当におもしろいそれぞれのストーリーがあります。

Twitterで「市販の物差しで測れるような単位で生きてる人ばかりじゃないンだよ、それぞれ特注」というコメントを拝見してすごく心に響いたので、今日はそんな話をしたいと思います。

 

「許せないこと」はどんなこと?

私は、いろいろ許せませんでした。

例えば、ゴルフ。

明日は接待ゴルフです。私は2年前、明日と同じ得意先との接待ゴルフが嫌で嫌でスリップしました。

「次飲んだら離婚」って妻に言われていたのに、ハイボール3リットル近く飲みました。

 

得意先はゴルフに厳しいタイプでした。

「スコア100切れないのは、真剣に練習していないからだ。練習しろよ~。」

「体鍛えてんのに、こんなにゴルフ下手なんて信じられない、何のために鍛えてるの?」

そんなことを言いながらガハハと笑って断酒してる私の前でビール飲みまくる顧客。

殺意を覚えました。笑

 

でも、一番許せなくて大嫌いだったのは、「自分自身」でした。

ゴルフが下手なかっこ悪い自分。

過去の失敗で降格された惨めな自分。

何より、馬鹿にされても言い返せない、こんなにも情けない自分。

 

そういう大嫌いな自分を見たくなくて、飲みました。

 

帰り道は、後悔で心の中はドロドロでした。

風呂に入っても、サウナに入っても、全然抜けないお酒(3リットル飲んだらそりゃ抜けないよね)。

息も臭い。体中がお酒の匂い。

絶対バレる。

バレたら離婚。

いや、バレないんじゃ…?

というかとても言えない…

でも言わないと…また信用を裏切った

嘘ついた時のあの悲しい顔をまたみるのか…

それは嫌だ

でも正直に言うのも怖い…

 

ぐるぐるぐるぐる。いくら考えても、「飲んだ」っていう事実は変わらないのに。

何度も間違える自分が、最も許せない存在でした。

 

その「許せない」って、コントロールできないことじゃない?

でも、自分は「自分」でしかないんですよね。

 

アルコールに負け続けてきた自分。

人に嫌われることが恐ろしくてたまらない自分。

自分の言いたいことも言えない自分。

誰かに認めてもらわないと安心できない自分。

 

ぜーんぶひっくるめて、私は「私」でしかない。

 

人の生き方も個性も、それぞれ全部『特注品』なのだから、

一つも欠けてない人間なんていないし、全部正しくできるわけない。

 

「世間的に」「常識的に」正しいか間違っているかを判断するのは、実は簡単です。

自分にとって「正しい」かどうか、それが自分や自分以外の人にとって「優しい」かどうかを判断することのほうが、よっぽど難しいことです。

 

「自分が許せない」と思ってきた私は、「自分をコントロールできる」と思い込んでいたと思います。

そんなこと、できなくて当たり前だったのに。

いろいろな人が関わって私の人生や私は形作られていくのに、それをコントロールしようとすることは、関わる全ての事象や人物をコントロールしよう、と考えることです。

 

今日、妻と娘と愛犬2匹で散歩をしているときに、娘の将来の話になりました。

私「娘ちゃんはどんな人生を生きるんだろうか」

私「俺みたいにお酒で失敗しないといいけど…」といった私に、

( ̄∇ ̄;)ハッハッハ、そうだね~ と言いながら妻は次のように言いました。

妻「でも、娘ちゃんが生きる人生だから、本人が決めるよ。飲むか、飲まないかも、本人が決めて、経験して生きていくんだから、私たちには結局コントロールすることなんてできないよね。伝えることと、信じることの2つくらいしか、親だけど他人の私たち二人にできることなんてないのよ。」

何気なく言われたこの言葉に、ガーンと頭殴られたみたいでした。

 

あんなにあれやこれや言ってきて私をコントロールしようとしてきた共依存の自覚がない実母を憎んでいたのに、同じようなことを考えていたんだな、と。

 

自分の人生すら、こんなに波乱万丈でコントロールできたことなんて何にもないのに、

いわんや他人の人生をや、ですよね。笑

娘といえど、妻といえど、息子といえど、自分ですら、ないのだから。

コントロールすることなど、できるはずがないのです。

 

コントロールしたくなるのは、結果が欲しいから。

結果が欲しいのは、自己肯定感がないから。

自己肯定感は、「〇〇ができているから自分は価値がある」ではないんですよね。

「こんなに欠けてばかりの自分も悪くない、こんなのでも、そのままで安心して生きていてもいいんだよね」と思えることですから。

 

結果的には、どんな人生でも、一生懸命生きている限り、それぞれ特注のストーリーがあり、特注に値する価値がある。

なぜなら、存在するということは、それすなわち影響する、ということだからです。

この世界に、影響を少なからず及ぼしている。それは、まぎれもない価値です。

だから、どんなに欠けていても、どんなに至らなくても、それは貴重な「特注品」なんですね。

 

まとめ:コントロールできなくても、いいじゃない

私は、お酒でたくさんの人に迷惑を掛けました。

会社で最下層まで降格されましたし「辞めてほしい」と何度も言われたことがあります。

めったに泣かない妻を泣かせ何度も裏切りました。

だけど、その根本は、コントロールできないものに一生懸命力を注いで疲れ切ったから。

なんで一生懸命力を注いだか?

一生懸命この辛い人生を自分なりに生きようとしたからじゃあ、なかったか?

 

じゃあ、やってきたことは間違っていたけれど、もともと思っていた私の素直な気持ちは、素直な私はそんなに悪いやつじゃなかったんじゃないの?

そう思ったら、俺みたいなのでも素直に生きててもいいんだな、ってやっと思えました。

ゴルフが下手でも、いいじゃない。

仕事が完璧じゃなくたって、いいじゃない。

ゴルフなんてただの玉打ち遊びなんだし、仕事も人生のほんの一部なんだから。

そんなことに怯えながら、キョロキョロおどおど、しなくていいじゃない。

自分に素直に生きたほうが、私の場合は、お酒を飲んでいたころより幸せなことに気づきました。

飲まないで生きている今のほうが、飲んでいた時よりも幸せだなんて!

断酒し始めは信じられませんでしたよ。

「あー、唯一の支えを頼れなくなった…オワタ」と思ってました。

「あとの人生は何の楽しみもないけど生きないといけないから生きる消化試合」みたいな。笑

そう思って断酒辛くなる時、あるじゃないですか。

でも、私の場合は、断酒して1年9ヶ月の『今が一番幸せ』だと思います。

だから、私は断酒してよかった、と思うし、これからも断酒して生きていきたい、と思うのです。

 

今日はこれまで。

読んでくださってありがとうございました。

 


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【依存症】断酒会ってどんなことするの?(アルコール依存症)

こんにちは、ちあき です。

昨日は久しぶりに断酒会に行けました。よかったー!

私が通院している病院の断酒会は毎週土曜日にあるんですが、研究会のお手伝いやらゴルフやら花見やら、この季節は本当に得意先の行事が多すぎて土日がほぼ潰れるんですよね…。

何を隠そう、私はこの断酒会に繋がれたおかげで断酒が継続できるようになりましたし、逆に離れたことによって1回スリップしています。

そんな私にとってかけがえのない断酒会という会、いったいどんな会なの?ということで今回は書いてみたいと思います。

 

断酒会=アルコール依存症からの回復を目指す「自助グループ」

自助グループ、という言葉も聞きなれないかと思います。

こちらの過去記事 で展開過程やどのような作用が期待できるのか、社会福祉士としての視点でまとめています。

簡単に言えば、「やめたいと思っている依存症当事者やその家族が自ら主体的にお互いを助け合うためのグループ」です。

特に依存症からの回復には、自助グループの力が欠かせないと言われています。

 

断酒会って、具体的には何するところなの?

こちらが私たちの断酒会のタイムスケジュールです。

19:00 集合 会がスタート

断酒の誓い を皆で唱和する

①家族側 の酒害体験を話す

②当事者側 の酒害体験を話す

21:00 終了 解散

当事者やその家族が、正直な気持ちや、失敗について振り返り、話す会です。

特徴的なのが、「聞きっぱなし」「言いっぱなし」です。

誰が何を話しても、黙って聞くだけ。否定したりしません。

逆に、何を話しても否定されることはありません。

だから、自分がその時に感じていること、

たとえば「正直言って今すぐにでも飲みたい」とか

「家族が憎くて毎日首を絞めてしまいたいと思っていた」とか

とにかく話して、とにかく聞く。

 

これだけ?これだけで何が変わるの?

 

と思うでしょう?

 

私も参加する前はそう思っていました。

「こんな人生踏み外したアル中ばっかり集まって、何を話したって無駄だ」

「何、傷の舐めあいしてんだよ、くだらねーな」

「みんな断酒してるとか言って本当は裏で酒飲んでんじゃねーのかよ」

って、正直思ってました。(笑)

 

でも、ずっとみんなの話を聞いていて、

私の話をする番が来て、

もうどうしたらいいかわからなくてたどり着いたことを話して、

何も言わずに同じような悩みで苦しんできた人がただ黙って聞いてくれて、

それだけで、帰り道、涙がとまりませんでした。

 

「ああ、ひとりじゃなかったんだ」

 

って、心底思いました。

だって、その断酒会には、たくさんいたからです。

苦しんだ自分、酒をまだ飲みたい自分。

自分と同じ気持ちで、それでも自分に向き合っている「もう一人の私」がたくさんいたからです。

世間の常識でも間違っている、私も間違っていると思っている、

でもどうしようもないこの感情を、そのまま話してそのまま聞いてくれる。

「そういうこともあるよね、わかるよ。」という心が、言葉でなくても感じる。

私は私が思っていることを自分自身でも、受け容れられていなくて

でも誰かに受け容れてほしかった、私自身も受け容れたかったんだ、と。

 

私たち夫婦が入室した時、老夫婦がニコニコしながら迎えてくれました。

その人たちは壮絶な酒害体験を経て、今26年断酒して夫婦仲良く暮らしていました。

「こんな未来があるのか」「まだ死ななくてもいいのかもしれない」

私たちにとって、その後姿が、どれだけ救いになったことでしょう。

 

「理解と共感で心の穴が埋まる」

「安心できる居場所ができる」

 

そんな風に、私たちにとっては、素敵な出会いが断酒会にはありました。

 

お金はかかるの?誰でも参加できるの?どこで探せばいいの?

断酒会は、「断酒会」と「家族会」など、いくつか酒類があります。

  • 断酒会…依存症当事者とその家族が参加する会(本記事で取り上げている会)
  • 家族会…当事者は居なく、家族だけで集まる会
  • 女性の会…女性だけで当事者や家族が集まる会

本人がいる前では話せない人や、女性だけでないと話しにくい内容がある人も素直に話ができるように、様々な形式があります。

 

そして、断酒会は会費制です。

私の会では、毎月500円ですね。そんなに負担にはなりません。

「世話人」と呼ばれるリーダー役の人がいます。

司会などを担当してくれていますが、その人に会費を毎月月初に渡すかたちです。

特に参加資格などはなく、事前の連絡も必要ありません。

ちょっと早めに来て、「今日は初めてです」と言えば、快く受け入れてくれます。

安心して覗いてみてください。

 

公益社団法人全日本断酒連盟

☝全国にそれぞれ断酒会がありますので、お住まいの地域で近いところを探してみてください。

断酒会も雰囲気がそれぞれ違うので、素直に話しにくいな、とか、ここで話を聞いているとつらいな、ということもあると思います。

もしそう感じたら、「自分が安心できる断酒会」を探していくつか顔を出してみてください。

貴方の居場所はどこかに必ずあると信じています。

 

だらしない夫じゃなくて依存症でした 第6話

☝この漫画がわかりやすく自助グループについてまとめてくださっています。

ここまで読んでみて、ちょっととっつきにくいな、と感じた人は、ぜひ読んでみてください。

もっとわかりやすく書いてくださってます。

 

まとめ:断酒の誓い

いかがだったでしょうか?

最後に、いつも断酒会で言葉に出す「断酒の誓い」と書いて締めくくりたいと思います。

いつも、この言葉は新しい発見があって、奥が深いなぁと感じます。

 

一、私たちは酒に対して無力であり、自分ひとりの力だけではどうにもならなかったことを認めます。

一、私たちは断酒例会に出席し、自分を率直に語ります。

一、私たちは酒害体験を掘り起こし、過去の過ちを素直に認めます。

一、私たちは自分を改革する努力をし、新しい人生を創ります。

一、私たちは家族はもとより、迷惑をかけた人たちに償いをします。

一、私たちは断酒の喜びを酒害に悩む人たちに伝えます。

 


アルコール依存症ランキング

では、また!

【依存症】アルコール依存症という病をつらくて受け容れられないときは

こんにちは、 ちあき です。

 

突然ですが、今日は詩を紹介したいと思います。

少し前のドラマで話題になった詩です。ご存知の方もいらっしゃるのではないでしょうか?

「オランダへようこそ」は、1987年、ダウン症児のお母さんであるエミリー・パール・キングスレーさんが書かれた文章です。

私は、この詩を読んで、私たち夫婦は子供の「出生前診断」をしないことに決めました。

そして、この詩を私はアルコール依存症になった自分に重ね合わせて読むことで、アルコール依存症を受け容れられた気がします。

 

まずは、読んでみてください。

 

「オランダへようこそ」

 

私はよく障害を持つ子供を育てるって、どんな感じか聞かれることがあります。

 

障害児を育てるというユニークな体験をしたことがない人が理解できるように、どんな感じか想像できるようにこんな話をします。

 

赤ちゃんの誕生を待つことは、すてきな旅行の計画をすることに似ています。

 

そう、旅行先はイタリア。

ガイドブックをどっさり買い込み、現地での素敵な計画を立てます。

ローマのコロッセオ。

ミケランジェロのダビデ像。

ベニスのゴンドラ。

 

簡単なイタリア語を覚えるかも知れません。それはどれも、ワクワクすることです。

そして、期待を胸にいっぱいに、数ヶ月の後、待ちに待ったその日がやってきます。

カバンに荷物を詰め込み、さあ出発です。

 

数時間後、飛行機が着陸します。

スチュワーデスがやって来て、告げるのです。

 

「オランダへようこそ」と。

 

「オランダですって?」とあなたは驚き聞き返します。

 

「オランダってどういうこと?私はイタリアへ行くはずだったのよ!これまでずっと私はイタリアを夢見てきたのに!」

 

しかし、飛行計画が変更になったのです。

オランダへ着陸したのです。

あなたはそこに滞在しなければならないのです。

 

ここで考えて欲しいのは、あなたが連れてこられた場所は、疫病や、飢饉や、病気が蔓延する、恐ろしく、ひどく、ゾッとするような所でははないと言うことです。

 

ただ、そこは、ちょっと違う場所なのです。

 

だから、あなたは新しいガイドブックを買いに外に出て行かなくちゃいけません。

それから、新しい言葉も覚えなくちゃいけません。

 

そうすれば、あなたにはこれまで出逢ったことのない人々と出逢うことでしょう。

 

ちょっと違う場所へ来ただけなのです。

 

イタリアに比べて、時はゆっくりと過ぎていき、イタリアのような華やかさはありません。

 

でもしばらくここにいて、深く息を吸いこんで、周りをみわたすと…

オランダには風車があることに気がつきます。

 

チューリップにも気が付きます。

 

そして、オランダにはレンブラントの絵もあることに気が付くでしょう。

 

 

 

でも、あなたの知人たちは、イタリアに行ったり来たりでせわしなくしていて、皆、イタリアでどんなに素敵な時を過ごしてきたかを自慢するのです。

 

そして、あなたはこの先もずっと

 

「そうなの、イタリアは私も行くはずだった場所なの。私が計画していたのはイタリア行きだったの。」

 

と、言い続けるでしょう。

 

 

イタリアへ行けなかった痛みは決して消えることのないものでしょう。

なぜなら、失った夢はあまりにも大きすぎるからです。

 

 

しかし、イタリアに行けなかったことをこの先もずっと嘆いていたら、

オランダのすばらしさや、美しさを心から楽しむことは決してできないでしょう。

 

アルコール依存症者にとってのイタリアとオランダ

私は、正直この詩を読むたびに、今でも涙が出るのです。

 

イタリアは、適度に酒を楽しめる、今はもうあり得ない酒とともにある「偽り」の人生。

 

オランダは、アルコール依存症で、いろいろ、本当に大切なものを無くして、酒は一生飲まないと誓った、世間一般とは少し違う、しかし「本当の自分」としての人生。

 

ここで重要なのは、イタリアに行きたかったってことから目を背けないことです。

 

最初イタリアへ行くはずだった、イタリアへ行けなかったことに痛みを感じている、という素直な気持ちを否定しないことです。

正直、アルコールで酩酊し続けていた時というのは、化学物質で脳内麻薬がドバドバ出ていた状態です。

 

「飲んでいたころは楽しかった」

「あんなに気分が高揚することはない」

「お酒の代わりになる楽しみが見つからない」

 

そりゃそうです。

そうなります。

そう思っても悪いこと、何にもないです。

ナチュラルに生きていては得られない、度を越したアルコールによる快楽物質に、私たちの脳はずっと浸ってきたんですから。

毎日ドーピングしてきたのに、ナチュラルな世界にスッと戻ってきたからといって、そんな簡単に、一朝一夕に「ああ、シラフって楽しいな」とは思えなくて当然です。

 

しかし、私たちは生きていくことを選びました。

イタリアで緩やかに自殺することはしたくないから、

断酒して人間らしい生活をすることを選んで、オランダに来たのです。

 

酒を好きなだけ飲めたけれど破滅する、あのイタリアにはもう、戻れないんです。

私たちが今いるのが、予定外のオランダだとしても、私たちはもう、オランダに着いてしまったのだから。

 

イタリアがいいと泣き叫んでも、イタリアの良さを羨ましがっても、私たちがいるのはオランダで、もうイタリアには行けないのです。

 

でも、到着地が少し予定と違っただけ。

 

オランダのすばらしさや美しさは、逆にイタリアに住むみんなにはわからないように、断酒の良さは断酒している人にしかわかりません。

 

 

オランダの良さも、

イタリアの良さも、

両方知っているということは、とても素晴らしい経験だったと、いつか思えるはずだから、我々は断酒して生きているのだと思います。

今日は、そんなことを思い出しました。

 

では、また!


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【依存症】アルコール依存症:どん底のときの日記を振り返ってみた

こんにちは、 ちあき です。

私は断酒を始めてから、日記がてらamebloにブログを書いて更新していました。

amebloは便利なもので、「1年前の今日」とか「2年前の今日」とかいう記事を振り返り投稿できるように案内してくれます。

先日、ちょうど3回目のスリップを経験した日のブログが案内されて内容を読んでいて当時のことを思い出したので、少し振り返ってみようと思います。

 

生きている価値がないと思っていた

当時、こんなことを書いていました。

アルコール依存性です。

妻から、次やったら離婚だからね、と言われていたのに、
また隠れて飲みました。
匂いですぐにバレました。

もう、情けなくて消えてなくなりたい。
早く終わりにしたい。
あと何十年も、こんな自分で生きて行かなくてはいけない。

どうしても、飲んだ時の酩酊状態に勝る、趣味や息抜きが見つけられない。
最終的に飲酒を望む、この頭はもう病気なのだ。
昨日、死ぬほど恥ずかしいけど、もう自分では無理だと悟った。
妻にも、病気だから病院にいこう、と言われた。

本当にそうだ。

妻に幸せになってほしいのに、全く逆に苦しめるだけの自分など、消えたほうがいいと思う反面、結婚までしてくれた、一度はまた信じてくれた妻がいる限り、絶対諦めてはいけない、と踏ん張る自分がいる。

人が嫌いで、自分がもっと嫌いで、心踊ることは一つもなくて、
毎日悪夢で手足が動くのを薬で押さえつけて。
信じてくれた人を裏切ってまで隠れて飲んで。
私とは一体なんなんだろう。
何回、間違えば気がすむのだろう。
どれだけ、愚かなことを続けるのだろう。

生きて行かなくてはいけないのに、
生きているのは、こんなにも情けなくて恥ずかしくて辛い。
周りにはもっと不遇でも人生を前向きに生きている人がたくさんいるのに、
わたしは弱くて狡くて、こんなにも下らない。

陽が当たらないところで、一生謝りながら生きていくなんて嫌だ。
でも何回も間違える。負ける。

俺は、生きていたいはずだ。
反面、義務さえ果たして終わらせてしまいたいとも思っている。

生きているのって、何がたのしいのだろう。

 

2017年04月24日(月) 10時25分00秒

https://ameblo.jp/bee0669/entry-12268462003.html

 

暗い!!

超絶暗い!

絶望しか感じさせないこの文章。

 

当時、「生きていたいかどうか」すら、わからない状態でした。

「私は生きている価値がないのではないか?」

「こんなに苦しみながら生きることに意味はあるのか?」

自己肯定感は欠片もなく、とにかく生きているのが苦しくて辛くてもうやめたい、

というのが率直な気持ちだったと思います。

三森みさ先生の「だらしない夫じゃなくて依存症でした」でも描写がありましたが、

シラフの世界がすごくしんどくて

なのにもうお酒なしで生きることを考えると

ずっと消えたかったな

という依存症者本人のショウちゃんと同じ心境でした。

 

違いは「独り」か「独りじゃない」か

スリップする前の記事に、こんなことを書いています。

生きてさえいれば、まだ感じることができる。

死んでしまってはおしまいだけど、
生きてさえいれば、喜びも悲しみも味わうことができる。
自分自身を生きることに躊躇している暇はない。
誰かに気を使って我慢しながら生きられるほど、人の一生に余裕はない。

生まれてきたことに意味はないかもしれない。
生まれたからには生きる権利と責任はある。
産んでくれた人に恩を返す責任ではない。
自分自身に向き合って正直に生き切る権利と責任が、
私たち一人ひとりにある。

だから、他人がどうであれ、
自分自身を裏切って誤魔化しながら生きるな。
生きるからには、言い訳しながら周りばかり伺うな。
私が、あなたが、主人公であり、
自分自身だけが、
一番自分自身を大切にしてやれる存在だということを忘れるな。

誰かのために生きるな。
誰かに、せっかくもらったたった一つの命を預けるな。
生きる権利を大切に。
同じように生きる他人を尊重し、
自分自身の人生を一歩も譲らない。

それでいい。
そうでなくては、生きているとは言えない。
周りに『生きている振り』をしているだけだ。

自分に負けるな。
他人を気にするな。
自分の声を無視しないであげてほしい。

2017年04月21日(金) 23時42分00秒

https://ameblo.jp/bee0669/entry-12267787324.html

 

こう考えていることは間違いではなかったし、

このように悩みを言語化して書いているということは、

生きたい、生きよう、としていたのでしょう。

でも、足りなかった。

 

「独りでは無力なんだ」という認識が足りなかった。

 

「独りでなんとかしなければ」と思っていたのです。

私は社会人なんだから・成人しているいい大人なんだから、

他人に頼ってはいけない、と思っていたのが間違いでした。

『義務感』で「ちゃんと正しく生きなくては」と思っていました。

 

人は、そんなに正しくないし、強くない。

独りでできる事など、限られているのです。

だから、断酒会に初めて参加したときのことを、こんな風に書いています。

 

アルコール依存症の院内例会(断酒会)に参加した。

私がたくさんいた。いてくれた。
同じ惨めさや苦しみを味わったことのある、
理解者たちがそこはたくさんいた。

理由は様々だし、入院したり警察沙汰になったり、
プライバシーなので詳しくはかけないが、
私より凄まじい体験をしていながら、
20年以上断酒を続けている先輩方がそこにはたくさんいた。

あぁ、よかった。

私はアルコール依存症になってよかった。

苦しんで死ぬか生きるか悩んでよかった。

どうしようもない苦しみを味わったから、
ありのままの自分を認めることができた。

自分を許せたから、本当に他人を信じることができるようになった。

俺だけじゃなかった。

2017年05月18日(木) 21時31分00秒

https://ameblo.jp/bee0669/entry-12275871595.html

 

まだここからいろいろ思い悩むんですが、「ここで救われたなー」と今振り返ると思います。

「俺だけじゃなかった」

っていう一言にすべてが集約されていて、

この感覚を今まで感じることができなかったから、

拭い去れない孤独感を感じて、

それがきっかけでお酒に頼ることになった。

ASDで理解されなくて孤立して「あいつはおかしい」とクスクス後ろ指を指されて

他人を頼らず信用せず生きてきたひとつの結果が、アルコール依存症だった。

でも、その病気のおかげで、一番欠けていた「心の穴」に気づけた。

だから、私はアルコール依存症になってよかった、と書いたんだと思います。

 

誰でもない、自分自身が、自分を許していないから、

自分のまま自分がやりたいように生きていくのが怖かった。

「正しさ」という『許可証』が必要だと思い込んでいたのでした。

だから他人が自由に生きているのも許せなかったし、

正しくないことに対して尋常でない怒りを抱いていました。

 

そういう束縛から解き放たれる最も最初のきっかけが、

「断酒会」という自助グループへの参加であり、

同じ悩みを持つ仲間との交流でした。

 

だから、今悩んでいる人に伝えたいことは。

「独りで悩まないでいい。私たちを信じて、一度相談してみてください。」ということ。

ダメ元でもいい、悩んでいるなら、相談してみる価値はあると思います。

全国の精神保健福祉センター一覧(厚生労働省HP)

 

あなたは、本当はひとりじゃない。

その寂しさを分かってくれる人が、すぐ近くに、きっといます。

私が、そうだったように。


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【子育て】買ってよかった!神経質パパ(妻談)が選んだベビー用品ベストアイテム①~産前に買っておくべき物:前編~

こんにちは、妻と協力して絶賛子育て中の ちあき です。

この3月末で娘は3ヶ月になります。

4月頭にはお食い初め…早いものです。

 

産前産後の時期を思い返すと

産まれてくる我が子が楽しみで

いろいろ雑誌をみたり、アカチャンホンポに遊びに行ったり

準備を進めている気でいましたが、

「何をいつまでに買えばいいのか」

正直なところ分かりませんでした。

結局バタバタしてすごく忙しくなってしまい、

「これもっと早く買っておけばよかった…」

「これは特に必要なかったのになぁ…」

という思いをしました。

 

「産前に買っておくべきもの」が正直な意見で全部まとまっていれば、

みんな同じ後悔をしなくてもいいのではないか…!?

 

そう思ったので、ちょっとまとめてみました。

我が家で買ってよかったものだけを、なぜ必要か?という理由と合わせて

正直に厳選して紹介していきます。

 

①チャイルドシート

まず買うべきものとして着手したのが、チャイルドシート。必需品です。

チャイルドシートに関連する法律は道路交通法第71条3項に記載されていて、

チャイルドシートの着用義務を怠ると、

ドライバーは「幼児用補助装置使用義務違反」で1点の加算となります。

例え交通違反点数の加点が1点でも、チャイルドシートを着用していないと、子どもの命を危険にさらすことになります。

必ずチャイルドシートを着用させるようにしましょう。

 

 

・1万円以下と安価なのに、実際使ってみると造りがしっかりしていて申し分ない。

・ベビーシートで寝てしまっても、シートベルトを外せば簡単に子供を起こさずに移動でき、出先ではバウンサーとして使える。

・新生児から使える。

結果的に、高いベビーシートを買わなくてよかったです。

 

病院から帰るのと、日ごろちょっと車で移動するくらいならコレで十分でした。

 

 

②スキンケア

赤ちゃんのお肌のケアもそうですが、意外にお母さんのケアも重要でした。

 

〇乳首ケア:ピュアレーン100(メデラ)

 

購入した理由と選んだポイント

授乳に慣れていない赤ちゃんだと、乳首だけを一生懸命吸ってしまい、うまく母乳が飲めないそうです。その結果、乳首がすごく痛くなるそうです。

「これ、最初っから買っておけばよかった~!!」と妻が最も後悔した必需品です。

・これを塗っておけば、授乳のたびに痛みに苦しむことがなくなります

 

 

〇保湿ケア:ワセリン(ピジョン)

 

購入した理由と選んだポイント

・ワセリン100%で無着色・無香料・パラベンフリーで最も信頼できます。

・保湿が必要な乳児。乳児湿疹が一度は出ると思いますが、これで一発で治りました。

「特に乾燥しやすい冬場、最初から使っていればよかった」と妻は後悔しています。

・60gで量は充分。

 

 

〇ベビーローション(アロベビー) & ベビーオイル(ジョンソン&ジョンソン)

 

購入した理由と選んだポイント

・ローションは、鼻や耳などデリケートな部分をケアするのに最も優れています。

・ローションは、日ごろ赤ちゃんのスキンケアでサラッとケアするのに非常に便利です。

・冬場はお風呂あがった後、まずはベビーローションを塗り、ワセリンをオンします。

夏場はローションだけでOK。

 

・オイルは、ベビーマッサージをする場合にも使います。

・オイルは、ウンチを出すために綿棒でお尻をぐりぐりするときに重宝します。

・オイルは乳児湿疹が出ているときには使えないので注意。

 

 

 

〇おしりふきウォーマー(コンビ)

 

購入した理由と選んだポイント

・冬はおしり拭きが冷たくて赤ちゃんがびっくりしてしまうので、重宝しました。

・すぐ暖かくなるので使いやすい。意外にコンパクトで、赤ちゃんの近くにおいてました。

・コンセントが必要なのが残念。ハンディータイプがあれば一番いいかも。

 

 

〇コラージュふるふる(持田製薬株式会社)

 

購入した理由と選んだポイント

・製薬会社が製造元だからか、これにしてから汗疹がなくなりました。

・お母さんも赤ちゃんも使えるので一石二鳥で経済的。

・沐浴で早速活躍するので、買っておいたほうが1日目から困りません。

 

 

いかがでしたか?

意外にたくさんありますし、種類もものすごく多いのでとても悩みました。

妻が口コミやネットの評価を見てくれて、友達にも聞いてみて、

実際に使ってみたよかったものだけを紹介したくて記事を書きましたが、

まとめていて正直疲れてきました。笑

なので、前編後編に分けます。

とりあえず、必要な順に書いていきますね。

後編も近日UPします。

後編は、

授乳に関するグッズ・子供服・マザーズバッグ・消耗品・

買ったけど正直いらなかったもの を特集します。

お楽しみに!

【社会福祉士】2019年世界幸福度ランキングから考える「豊かさ」を失った日本の現状と原因

2019年3月20日(水)は、国連が定めた「世界幸福デー」です。

世界幸福デーのこの日、国連は2019年版の世界幸福度報告書「世界幸福度ランキング2019」を発表しました。

細かすぎて見えないですね。日本だけ拡大してみましょう。

出典:2019年世界幸福度報告書 http://worldhappiness.report/ed/2019/

このランキングは以下の項目をポイント化したものをもとに作成されています。

・人口あたりのGDP
・社会的支援
・健康な平均寿命
・人生の選択をする自由
・性の平等性
・社会の腐敗度

この世界幸福度ランキングで、日本は残念ながら、58位という結果でした。

日本は世界に名だたる長寿国であり内戦もしていないのに、なぜOECD加盟国のなかで最下位に近い不名誉なランキングだったのか、現在の日本を、貧困という観点から紐解いていきたいと思います。

 

日本は豊かではない?

日本は実は豊かではないかもしれません。

こちらはOECDの2019年の報告書における「貧困率」の国際比較です。

これまた細かくてすみません。

この表から分かるのは、全年齢・18歳以下・18-25歳・26-65歳・65歳以上 と、どの階層でもOECD加盟国の貧困率の平均値を上回っている、という事実です。

【平均を上回る貧困率】

貧困率は OECD 平均を上回る。

日本の総人口の 16%、18-25歳の若年人口の 18% 、高齢人口(65 歳以上)の 20% が貧困線を下回っているのに対して、

OECD では全体の 12%、若年者と高齢者のそれぞれ 14%である [Figure 6.6]。

出典:Society at a Glance 2019 © OECD 2019

結論として、日本は単純に「貧困率」でみると、OECD加盟国のうち

下位9番目に位置しています。

 

「相対的貧困率」とは?

単純な貧困率ではなく「相対的貧困率」という数値で貧困問題が語られることがあります。

では「相対的貧困率」とはいったいなんなのでしょうか?

算出方法は下記の通りになっています。

①可処分所得(所得から税金などを引いた実際に使えるお金)を計算する

②等価可処分所得(①を世帯人数の平方根で割った所得)を計算する

③等価可処分所得ごとに全員ならべたときの中央値(1億人いたら5000万番目の人の値)を計算する

④中央値の1/2以下の人の割合を出す。

ちょっとよくわかんないですね。

簡単に言えば、2012年の日本でちょうど真ん中くらいの豊かさの人が244万円(20万円/月)で、122万円(10万円/月)以下の人がどのくらいいるか?という%(割合)が「相対的貧困率」です。

2012年では16.1%でした。

つまり、6人に1人が貧困状態にある、という計算になります。

 

上の図は2015年までの日本の相対的貧困率の推移を示したグラフです。

2015年は15.7%と若干の低下傾向にありますが、依然として高い数値であることは変わりありません。

なぜなら、国際比較してみると、

御覧の通り、相対的貧困率が約16.0%というのは、

下から数えたほうが早いくらい悪い数値だからです。

 

「自殺」が多い国、日本

2019年のOECD報告書による自殺率(統計数字は2016年か近い年)がこちらです。

日本は下から5番目です。

OECDのExcelデータは画像にすると超ちっちゃくなってしまい、

申し訳ない気持ちでいっぱいです。

概要は下記のとおりです。

【長い寿命と高い自殺率】

日本の平均寿命は OECD 諸国で最も長く、2016 年で 84 歳であり、1970 年の 72 歳から大きくのびている [Figure 7.1]。

日本人女性の寿命 (87 歳)は男性(81 歳)よりも長い。

過去 10 年で自殺率は大幅に減少したが、OECD 比較では高いままである。

10万人に 16.6 人の自殺がある日本は、OECD では 5 番目に高い自殺率であり、10 万人に 12 人の OECD 平均を大いに上回っている[Figure 7.10]。

自殺は日本では女性より男性に多くみられる。

出典:Society at a Glance 2019 © OECD 2019

 

2012年までのデータで少し古いですが、

日本における自殺は原因は、健康問題と経済・生活問題が70%を占めています。

出典:「貧困問題レクチャーマニュアル」特定非営利活動法人 自立生活サポートセンター・もやい

 

つまり、これらの結果から、何らかの健康の問題や生活苦により自殺している人が多く、

その割合は世界の国々に比べても、非常に高い、ということが言えます。

 

昔より不幸せになってしまった日本人と「不寛容」

これらの貧困率・相対的貧困率・自殺率を踏まえてこちらをご覧ください。

はい、拡大します。

出典:2019年世界幸福度報告書 第2章 http://worldhappiness.report/ed/2019/

これはなにか?「2005-2008年から2016-2018年への幸福の変化」です。

日本は、95番目で、「より不幸になった」と感じているという結果が出ているのです。

 

これは、憂慮すべき結果です。

 

ここまでの事実から考えて、日本は「豊かさ」とはかけ離れていると思いませんか?

格差は拡大しており、貧困率も相対的貧困率も高い水準になるにもかかわらず、

「自己責任」論で蓋をして、「生産性」が悪いと個人に問題を帰属させて、

「頑張れない人は生きている価値がない」と言わんばかりに放置される社会。

だから絶望して自殺してしまう社会。

 

『失敗を許さない社会』。

それが現代の日本社会なのではないか、と感じてしまいます。

 

失敗した人は叩いて叩いて謝罪させる。

そんな世の中のニュースに辟易としている人が多いのではないでしょうか?

芸能人の不倫や家族関係にまで首を突っ込んで、

あーでもないこーでもない、と正論をぶつけ合う社会。

 

そんなんじゃ、幸せなわけないですよね。

 

誰にだって間違いはあります。

間違わないで生きてきた人なんていませんよ。

間違ってきたからこそ、

失敗に打ちひしがれている人に手を差し伸べる優しさを学ぶんじゃないでしょうか。

取り返しのつかないような失敗をしてしまって、

心から謝罪して猛省して罪を償うことを誓ったなら、

誰だって罪を償いながら自分らしく人生を生きることは

許されて然るべきなんじゃないでしょうか。

間違いを誰も許さないんじゃない。

私たち一人一人が何より自分自身を許せないから、

みんながみんな窮屈になってしまっているんだと感じます。

間違ったっていい。

失敗したっていい。

人間は、人間だから、

いくらでもやり直せる。

取っ替え引っ替えみたいな、

あれがダメならこれでいこう、

みたいな、適当でもいいじゃないか。

だって私たちは完璧じゃないんだから。

人間なんだから。

(確か、化物語の「なでこスネーク」で貝木泥舟と千石撫子の掛け合いに、似たようなセリフがありました。)

でも、こういう「不寛容」からくる

「~でなくてはならない」という義務感を頭から取っ払ったら、

もっと自由に自分らしく生きることができる。

「幸せになるため」に生きるんじゃなくて、

「なりたいものになるため」に生きる。

それこそ「幸せ」なんじゃないでしょうか。

 

今回の報告書を読んで、そんなことを考えました。

【ヘルスケア】腸内細菌がこころとカラダを司る?心を整えるために注意したい3つのポイント

こんにちは! ちあき です。
腸内細菌が、脳 心理 に様々な影響を及ぼすことがわかってきています。
大量に飲酒していると下痢と便秘の繰り返しに悩まされませんか?
それは腸内細菌叢(腸内フローラ)の乱れが原因かもしれません。

腸内細菌叢(腸内フローラ)とは、人それぞれ違う、腸内の細菌のバランス状態のことをいいます。

善玉菌、悪玉菌、などといいますが、全てがバランスを保っていてはじめて良い体調やメンタルが保たれると言っても、過言ではありません。

◼︎腸内細菌が脳の発達に影響する

腸内細菌があるマウスとないマウスだと、ないマウスは攻撃性が強い性格になります。

ないマウス(無菌マウス)では、不安や感情にかかわるセロトニンやドーパミンなどの脳内物質の量が少なく、脳が変化してしまったと考えられています。

 

参考文献:人間総合科学大学 藤田 紘一郎 先生
『こころとからだの免疫学 -腸内細菌の働きを中心に- 心身健康科学 8巻2号 2012年』

 

人間の体には、約10mgのセロトニンが存在していますが、このうち90%は小腸の粘膜上のEC細胞という細胞の中にあります。

このEC細胞は、セロトニンを合成する能力があります。

残り8%は血小板に取り込まれて血中にあり、残りたった2%が脳に存在します。

◼︎腸内細菌の乱れがストレスの原因になる

不安や緊張感は、腸内細菌の善玉菌(ラクトパチルス菌)を減らし、悪玉菌(クロストリジウム菌)を増やすという、ソ連の宇宙飛行士を調べたデータがあります。

阪神淡路大震災でも、同じような現象が確認されています。

 

これらの菌の変化の原因は、極度のストレスです。

 

その機序としては、消化管局部でカテコールアミンという物質が放出されることで、病原菌が増殖したのではないか、と考えられています。

つまり、「ストレスにより悪玉菌が増える」ということが示されています。

 

また、腸内細菌が一部の神経伝達物質の分泌量を決めて、人の精神に影響を与えていることがわかりました。

 

九州大学の須藤信行教授らの研究では、ストレスを与えられたとき、腸内細菌有りのマウス よりも 腸内細菌無しのマウス のほうが、コルチコステロン量が多く分泌されていていました。

 

つまり、腸内細菌が正常なマウスのほうがストレスホルモンが少なかったのです。

 

副腎皮質から分泌されるステロイドホルモンであるコルチコステロンは、ストレスを感じると生成され、ずっと分泌されつづけると「うつ」状態になります。

 

これはマウスの試験ですが、人間においても、腸内細菌叢の乱れがうつの原因になる可能性があるのです。

 

さらに興味深いのは、無菌マウスの脳内の海馬や前頭葉では、ノイトロピン(生体内に備わっている痛みを抑える神経の働きを高める作用がある)等だけでなく、セロトニン量も優位に低下していました。

 

セロトニンは、心身を安定させ、現状に満足感を与えてくれるホルモンです。

足りなくなると、情緒不安定になるといわれています。

 

セロトニンの合成に必要なビタミンB6 ナイアシン 葉酸などのビタミンは、腸内細菌によって合成されているので、

 

腸内細菌叢の乱れ

=セロトニンに必要な原料の合成阻害

=セロトニンが足りない

という状況に陥りやすくなってしまう、と考えられます。

 

つまり、腸内細菌がストレス反応を抑えたり、脳内に神経成長因子や神経伝達物質を送り込んでいることが、どうやら確からしい、ということが示されたのです。

 

◼︎じゃあ整えるためには具体的に何をしたらいいの?

管理栄養士の先生にヒアリングしたところ、以下の3つのポイントが今のところ腸内フローラを整えるためには必要なのではないか、と言われているそうです。

 

1、食物繊維を摂る

…穀類や野菜類、豆類、果物類などの植物性食品は、腸内細菌のエネルギー源になります。ですので、食物繊維を充分に摂ると、腸内細菌が適正に増えて、ビタミンB群の合成が増強されて、セロトニンの前駆体を生成して脳に送る手助けになると考えられます。

 

2、ファーストフードやコンビニ食を控える

…防腐剤や添加剤がよく含まれている製品は、腸内細菌を弱らせてしまうと言われています。コンビニ食も最近は自然派の物も増えましたが、商品表示をチェックしましょう。

 

3、発酵食品を摂る(プロバイオティクス)

…納豆、キムチ、ヨーグルトなどの発酵食品を摂取すると細菌を体中に取り入れることができ腸内細菌が増加します。しかし、腸内細菌叢はひとぞれぞれのバランスを持っているとされており、ひとによりどのメーカーのヨーグルトがいいかは違うとさえいわれています。体に合う菌を含有している製品を見つけることが大切です。

いかがでしたか?

 

これらは一説に過ぎません。

医学的な研究をもとに構成しましたが、現在臨床研究がすすめられている領域なので、ご了承ください。

 

しかし、一般的に考えてみれば、私たちアルコール依存症の患者は乱れに乱れた生活により腸内が悲鳴を上げていておかしくない、と私は思っています。

 

当時、私は下痢と便秘を繰り返し、おなかの調子はとても悪かったのですが、断酒した今では決まった時間に便意を催すし、腹痛に悩むこともなくなりました。

我々はもともと、必要なホルモンや神経伝達物質が欠乏しているかもしれません。

だから、患者の多くが、気分の落ち込みや情緒不安定に悩まされているのではないでしょうか。

 

まずは、腸内を整えて、うつや情緒不安定の素養を取り除いていくのもよいと思います。

 

では、また。

 

読んでくださってありがとうございました!

【依存症】今までやらかしたスリップ(再飲酒)を全て告白するよ!

こんにちは、ちあき です。

この時期はスリップ(再飲酒)が多くなりやすいですね。

社会人では、異動という環境変化に伴い、送別会や歓迎会があります。

今回は、私がやらかしてきたしくじり(再飲酒)と

専門病院や断酒会に繋がるまでを赤裸々に書き綴りたいと思います。

 

 

○2015年3月1日 運命の日

断酒に真剣に取り組み始めた日。

泥酔して仕事現場に来たことが上層部の人間の逆鱗に触れる。

酒による失敗の積み重ねから、

「もうこいつはダメだ」と懲戒解雇すべく上司や会社が動く。

数週間、自宅謹慎。出社停止。

仕事を干されてやる事がなく、

ただただ謝り続ける日々が続く。

その後、懲戒処分「戒告」を受ける。

罵詈雑言を浴びつつも粛々と仕事に励む。

 

○2015年 9月 入籍

 

○2015年11月 挙式

 

○2016年4月 転勤

 

○2016年6月 再飲酒(スリップ)1回目

懲戒処分事情を噂で知った同期に、

同期会でバカにされ飲酒をしつこく勧められたことに耐えかね、再飲酒。

その日からたびたび、体裁上口をつけ、

後で喉に手を入れて嘔吐する悪癖がつくようになる。

同期会を皮切りに、宴会やゴルフ接待でも勧められたら断ることができなくなる。

自宅に飲酒運転でたびたび帰宅していた。

妻は、匂いで気づいていたが、

まだ当時はアルコール依存症だとは想像していなかったという。

 

○2016年7月 アルコールに対する意識が低下

自分の実家に帰省した際、出先で妻の慰労をしたとき、旅館で飲酒。

私も妻も病識がまだ甘かった。節酒できるのではないか、という驕りがあった。

そこから、たびたび機会飲酒状態となる。

 

○2017年1月1日 大スリップ(2回目)

「正月なんだし1日くらいいいんじゃないんか?」

そう勧められて、

ストレスがピークに達していたことを口実に完全に自分から乗り、

妻の実家でビールを1ケース(24本)開けた。

ブラックアウト。

止まらなかった。

記憶が飛んだ間に、我慢してきた怒りが爆発。

罵詈雑言を撒き散らした。醜態。

 

○2017年4月末 スリップ(3回目)

スコアに煩い得意先とのゴルフコンペが嫌でたまらなく、

プレッシャーに押し潰されそうになり、

それを口実にアルコールに手をつけ、嫌悪感から目を背けようとした。

気づけば酒量はハイボール3リットルに及び、

帰宅時にも呼気に残り、体からも臭っていた。

完全に飲酒運転。

帰ってきて、妻に即バレする。

捕まっていたら懲戒解雇。

「次飲んだら離婚」と言われていたのに飲んだことは、

妻にとって途轍もなくショックな出来事であったため、

この時初めて、妻が泣きながら調べてくれた。

アルコール依存症専門病院があることを知った私たち夫婦は、病院の門を叩いた。

 

○2017年7月末 隠れ酒してスリップ(4回目)

妻が友人の結婚式で地元に旅立ち、1人になり、

虚無感に襲われ、妻がいない隙にちょっとだけなら、と鎌首をもたげ、スリップ。

飲酒欲求を鎮めるため、当時ストレス解消方法だったスポーツジムに行き、

瞑想にも取り組んだが、スリップした。

この1人では抗えなかった事実から、通院、薬物治療、断酒会。

この三本柱が要だと理解した。

断酒会から遠ざかり、薬物治療も継続していなかったことを反省した。

同時に、断酒3ヶ月から1年にかけて、

『ドライドランク』という症状が発現しやすく、

激しい焦燥感やイライラ、不安、抑鬱、過信に目を眩まされやすいことを学んだ。

それ以来、毎週土曜に開催される断酒会に妻と毎回出席。(仕事で行けない日以外)

シアナマイドを毎朝服薬。

月に1回、アルコール依存症専門病院と心療内科に通院している。

ドライドランクから来る精神症状である

「不安感」「焦燥感」「イライラ」「希死想念」に

薬剤による対症療法を行いながら断酒を継続。

現在に至る。

 

いかがでしたか?

なかなか一筋縄ではいかないのが、この病気の難しいところですよね。

スリップしてしまって落ち込み、恥ずかしくて情けなくてもう消えてしまいたい、

とスリップするたびに何回も思いました。

その度に「こういう時スリップしやすいな」という経験値を重ねられたので、

今、スリップを回避できています。

そう。

スリップという失敗は、失敗じゃない。

活かせば今までの止めた時間は無駄ではない。

そう言い聞かせて、一日一日、やっていけたらな、と思います。

 

では、また!


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