2019年3月20日(水)は、国連が定めた「世界幸福デー」です。
世界幸福デーのこの日、国連は2019年版の世界幸福度報告書「世界幸福度ランキング2019」を発表しました。
細かすぎて見えないですね。日本だけ拡大してみましょう。
出典:2019年世界幸福度報告書 http://worldhappiness.report/ed/2019/
このランキングは以下の項目をポイント化したものをもとに作成されています。
・人口あたりのGDP
・社会的支援
・健康な平均寿命
・人生の選択をする自由
・性の平等性
・社会の腐敗度
この世界幸福度ランキングで、日本は残念ながら、58位という結果でした。
日本は世界に名だたる長寿国であり内戦もしていないのに、なぜOECD加盟国のなかで最下位に近い不名誉なランキングだったのか、現在の日本を、貧困という観点から紐解いていきたいと思います。
日本は豊かではない?
日本は実は豊かではないかもしれません。
こちらはOECDの2019年の報告書における「貧困率」の国際比較です。
これまた細かくてすみません。
この表から分かるのは、全年齢・18歳以下・18-25歳・26-65歳・65歳以上 と、どの階層でもOECD加盟国の貧困率の平均値を上回っている、という事実です。
【平均を上回る貧困率】
貧困率は OECD 平均を上回る。
日本の総人口の 16%、18-25歳の若年人口の 18% 、高齢人口(65 歳以上)の 20% が貧困線を下回っているのに対して、
OECD では全体の 12%、若年者と高齢者のそれぞれ 14%である [Figure 6.6]。
出典:Society at a Glance 2019 © OECD 2019
結論として、日本は単純に「貧困率」でみると、OECD加盟国のうち
下位9番目に位置しています。
「相対的貧困率」とは?
単純な貧困率ではなく「相対的貧困率」という数値で貧困問題が語られることがあります。
では「相対的貧困率」とはいったいなんなのでしょうか?
算出方法は下記の通りになっています。
①可処分所得(所得から税金などを引いた実際に使えるお金)を計算する
②等価可処分所得(①を世帯人数の平方根で割った所得)を計算する
③等価可処分所得ごとに全員ならべたときの中央値(1億人いたら5000万番目の人の値)を計算する
④中央値の1/2以下の人の割合を出す。
ちょっとよくわかんないですね。
簡単に言えば、2012年の日本でちょうど真ん中くらいの豊かさの人が244万円(20万円/月)で、122万円(10万円/月)以下の人がどのくらいいるか?という%(割合)が「相対的貧困率」です。
2012年では16.1%でした。
つまり、6人に1人が貧困状態にある、という計算になります。
上の図は2015年までの日本の相対的貧困率の推移を示したグラフです。
2015年は15.7%と若干の低下傾向にありますが、依然として高い数値であることは変わりありません。
なぜなら、国際比較してみると、
御覧の通り、相対的貧困率が約16.0%というのは、
下から数えたほうが早いくらい悪い数値だからです。
「自殺」が多い国、日本
2019年のOECD報告書による自殺率(統計数字は2016年か近い年)がこちらです。
日本は下から5番目です。
OECDのExcelデータは画像にすると超ちっちゃくなってしまい、
申し訳ない気持ちでいっぱいです。
概要は下記のとおりです。
【長い寿命と高い自殺率】
日本の平均寿命は OECD 諸国で最も長く、2016 年で 84 歳であり、1970 年の 72 歳から大きくのびている [Figure 7.1]。
日本人女性の寿命 (87 歳)は男性(81 歳)よりも長い。
過去 10 年で自殺率は大幅に減少したが、OECD 比較では高いままである。
10万人に 16.6 人の自殺がある日本は、OECD では 5 番目に高い自殺率であり、10 万人に 12 人の OECD 平均を大いに上回っている[Figure 7.10]。
自殺は日本では女性より男性に多くみられる。
出典:Society at a Glance 2019 © OECD 2019
2012年までのデータで少し古いですが、
日本における自殺は原因は、健康問題と経済・生活問題が70%を占めています。
出典:「貧困問題レクチャーマニュアル」特定非営利活動法人 自立生活サポートセンター・もやい
つまり、これらの結果から、何らかの健康の問題や生活苦により自殺している人が多く、
その割合は世界の国々に比べても、非常に高い、ということが言えます。
昔より不幸せになってしまった日本人と「不寛容」
これらの貧困率・相対的貧困率・自殺率を踏まえてこちらをご覧ください。
はい、拡大します。
出典:2019年世界幸福度報告書 第2章 http://worldhappiness.report/ed/2019/
これはなにか?「2005-2008年から2016-2018年への幸福の変化」です。
日本は、95番目で、「より不幸になった」と感じているという結果が出ているのです。
これは、憂慮すべき結果です。
ここまでの事実から考えて、日本は「豊かさ」とはかけ離れていると思いませんか?
格差は拡大しており、貧困率も相対的貧困率も高い水準になるにもかかわらず、
「自己責任」論で蓋をして、「生産性」が悪いと個人に問題を帰属させて、
「頑張れない人は生きている価値がない」と言わんばかりに放置される社会。
だから絶望して自殺してしまう社会。
『失敗を許さない社会』。
それが現代の日本社会なのではないか、と感じてしまいます。
失敗した人は叩いて叩いて謝罪させる。
そんな世の中のニュースに辟易としている人が多いのではないでしょうか?
芸能人の不倫や家族関係にまで首を突っ込んで、
あーでもないこーでもない、と正論をぶつけ合う社会。
そんなんじゃ、幸せなわけないですよね。
誰にだって間違いはあります。
間違わないで生きてきた人なんていませんよ。
間違ってきたからこそ、
失敗に打ちひしがれている人に手を差し伸べる優しさを学ぶんじゃないでしょうか。
取り返しのつかないような失敗をしてしまって、
心から謝罪して猛省して罪を償うことを誓ったなら、
誰だって罪を償いながら自分らしく人生を生きることは
許されて然るべきなんじゃないでしょうか。
間違いを誰も許さないんじゃない。
私たち一人一人が何より自分自身を許せないから、
みんながみんな窮屈になってしまっているんだと感じます。
間違ったっていい。
失敗したっていい。
人間は、人間だから、
いくらでもやり直せる。
取っ替え引っ替えみたいな、
あれがダメならこれでいこう、
みたいな、適当でもいいじゃないか。
だって私たちは完璧じゃないんだから。
人間なんだから。
(確か、化物語の「なでこスネーク」で貝木泥舟と千石撫子の掛け合いに、似たようなセリフがありました。)
でも、こういう「不寛容」からくる
「~でなくてはならない」という義務感を頭から取っ払ったら、
もっと自由に自分らしく生きることができる。
「幸せになるため」に生きるんじゃなくて、
「なりたいものになるため」に生きる。
それこそ「幸せ」なんじゃないでしょうか。
今回の報告書を読んで、そんなことを考えました。