【社会福祉】低所得者に対する支援についての考察(貧困問題)

現代社会の貧困の様相は、アメリカ軍に敗戦した戦後の日本が置かれた極度の貧困状態から、現代ではその性質が変わっている。

時代の編成とともに貧困の背景は変化してきた

物理的に壊滅しゼロから再興せざるを得なかった戦後から昭和にかけて、日本は国内の経済成長に支えられて経済的な豊かさを高めてきた。しかし、サービスや産業が成熟し高齢化が進む中で経済的な成長は停滞しはじめ、経済活動は限られた市場を奪い合う構図に移行してしまった。

このため、雇用の不安定・低賃金・失業といった労働に直接かかわる側面で影響が出始め、同時に経済的基盤の不安定さからくる消費の冷え込み、就労者世帯が維持可能な家族単位の縮小などが相乗効果で量的・質的貧困を生み出している。

こうした日本社会の厳しい資本主義経済社会のなかで経済競争力が無かったり障害により失ったりした場合、非常に厳しい生活を強いられることになるのが現状である。

働いても生活できないワーキングプアや、健康・障害・高齢・性別・国籍などハンディキャップを理由に労働市場から敬遠されることによる雇用機会の非平等な消失などがある。

現代における貧困(相対的貧困率・ひとり親世帯の子供の貧困)

相対的貧困率は貧困を考える上で重要な指標である。相対的貧困率とは、等価可処分所得の中央値の50%の値しかない人の割合を示す数字で、日本で経済的収入がちょうど中盤の人の半分しか所得がない人の割合を示す。

2012年は16.1%、2015年は15.7%で、約6人に1人が貧しいということになる。OECD加盟国のなかでは下から数えたほうが早いほど日本の相対的貧困率は高い。

離婚してシングルマザー・シングルファザーになった片親家庭の貧困は特に問題視されている。特に母子家庭において貧困問題は深刻である。

就業率は男女ともに80%代だが、非正規雇用が多い女性の場合、所得が特に少ないケースが多く、子育て中の一般世帯の年収が626万円として母子世帯の収入は223万円であり、経済的に安定しない。また、育児休暇などの福利厚生も充実しておらず、雇用保険にも入ることができなかったりすることから、生活の維持には常に緊張感が伴う。養育費の支払いの取り決めも半数しかなされておらず、取り決めしたとしても支払い能力が無いなどの理由で支払われるケースは少ないと聞く。

ひとり親世帯で何よりも問題なのは、子供の貧困である。2016年の報告ではひとり親家庭の子供の貧困率は50.8%であり、OECD加盟国など先進国のなかで最も高い貧困率である。

公的扶助の低所得者対策の転換期はリーマンショック

このような社会のシステムから不幸にも取り残されてしまい、苦しい生活を強いられている人々に対して、ナショナルミニマム機能とセーフティネット機能を発揮し、憲法第25条第1項に保障されている「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を守るために、公的扶助の役割がある。

公的扶助の具体的な仕組みとして、生活保護制度や自立支援、低所得者対策などがある。高齢者や障害者など要介護者が安心して自立した生活を送れるよう、介護保険制度が開始され、続いて介護保険法と児童福祉法が改訂された。障害者自立支援法などが制定され、多様性を尊重して社会参加して自立できるよう国の支援の方向性が示されている。

貧困・低所得者層においてはリーマンショック前と後という2点の大きな起点がある。

リーマンショック前は生活保護水準は抑制の方向だったが、リーマンショック後の大量の失業者や生活困窮者に対応するために特に子供の貧困解消やナショナル・ミニマム、自立支援、低所得者対策の見直しに大きく舵が動いた。

貧困からの自立とは自分らしく生きる自己決定権を取り戻すこと

このような動向のなかで貧困への支援とそれによる自立とはどのような状態なのだろうか。

生活保護法によれば、自立は2つの見解から成っている。経済的自立と社会的自立である。

しかし、身体的自立が困難で継続的な支援が必要な高齢者や重度の身体障害者は自立していないのだろうか?

そんなことはない。あらゆる人は様々なかかわりによって生かされ、決して一人で生きているわけではない。それは障害が有ろうとなかろうと、老いも若きも皆社会的生命体である人間として生き社会に属する以上は全く同じである。

自立の概念は「個人の尊厳の保持」という社会福祉で一番に考えなくてはならない要点をもとに、自らの意志と選択により自立していく主体としてとらえる「自己決定による自立」を最重要視することが重要である。

そのうえで、日常生活レベル・社会生活レベル・経済的レベルを自発的に目指す目標指標として活用しながら自分の可能性を追求していくこと、要保護者自身が決定・選択した人生を切り開いていくことが支援していくうえで重要な状態であり、今ある制約条件の中で極限まで「自分らしく生きる」を楽しめる自発的な状態が、真の自立の在り方なのだと思う。

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