【社会福祉士】介護保険制度の成り立ちと現在の状況って?

介護保険制度の創設の経緯は、1997年の介護保険法制定以前にさかのぼる。介護保険で高齢者介護および高齢者の自立支援をサポートする体制を整えるために発足した介護保険制度だが、逆に言えば、創設される以前の措置制度としてのあり方が高齢化社会を支えるという観点で限界を迎えたのである。

以前は、老人福祉法と老人保険法がルール

介護保険制度が創設されるまえは、老人福祉法の基づく措置制度と、老人保健法に基づく看護や介護の提供の2つが存在していた。しかし、措置制度はすべての高齢者に提供するには財源が十分でなく、サービスに対する偏見、所得開示の義務による抵抗感、当事者(高齢者本人)の選択能力不足などの問題点があった。老人保健制度の保健医療サービスとしての介護サービスの提供は、人員と生活環境への配慮の観点から一定の限界を有しており、今後高齢者が増加することを想像すると機能不全に陥る可能性が高かった。

ゴールドプラン策定から介護保険制度成立へ

このため、1989年にゴールドプランが策定され、福祉サービスの計画的整備が推進された。1990年の福祉八法改正により市町村に権限が委譲されたため、介護保険制度の実施主体として位置づけられる基盤が整備されはじめた。1994年、新ゴールドプランが策定され、介護保険制度創設のための検討が本格的に開始された。社会保険方式の介護システムを採用したのは、負担と給付の対応関係を明確にすることで、介護サービス負担増を国民に受け入れやすくしたかったという狙い、保険料の見返りとしての介護サービスという位置づけで真理的な抵抗感無くサービスを利用できるという狙いの2つが理由である。

こうして介護保険制度が成立し展開された。急激な介護給付費の増加にともなう保険料負担と公費負担の増加に対応するため、要支援の認定を受けた被保険者に対して介護予防を手厚くする制度改正が2005年の介護保険法改正で実施された。2011年には医療ニーズの高い高齢者や単身・高齢者のみの世帯の増加に対応すべく、地域包括ケアの推進、定期巡回・随時対応型サービスや複合型サービス(現:看護小規模多機能型居宅介護)の創設などを主とした改正を実施した。財政状況とニーズに応じて時代とともに形を変えながら今日まで介護保険制度は運営されてきた。

介護保険制度の概要まとめ

そんな介護保険制度の概要は以下のとおりである。

目的は、要介護状態になった高齢者に必要な介護サービスを提供し、それぞれの能力に応じて自立した日常生活を営むことができるようにすることである。

保険者は市町村および特別区である。被保険者に対して保険料を徴収し、要介護認定を行い給付額を決定し、介護保険事業計画を策定してサービス供給を確保する役割を担っている。被

保険者は第1号と第2号に分かれる。

第1号被保険者は65歳以上、第2号被保険者は40歳以上65歳未満の加齢に伴う一定の疾病により要介護状態となった医療保険加入者が対象である。

原則年金から天引きされ徴収された保険料が50%、残り50%は税金でまかなわれており、1割負担でサービスを利用できる。

要介護度・要支援度により支給限度額が異なる。要支援は1~2まであり、要介護は1~5まである。それぞれ数字が小さければ小さいほど自立状態が良好という扱いになる。

介護保険制度をめぐる最新の動向(2019年)

2014年、医療介護総合確保推進法に基づいて介護保険法が改正され、地域包括ケアシステムの実現に向けて医療と介護の連携の強化やサービスの質の向上を目的とした制度の見直しがなされた。こうした介護保険制度をめぐる最新の動向を整理したい。

まず、介護サービスの質の確保である。介護保険料の不正請求などの問題を受けて、指定の取り消し権限を行政に与え、指定取り消しを受けた者は別の自治体で指定を受けたりすぐに指定申請をできないよう規制することで、民間事業者に対して規制監督が強化された。ケアマネジメントの質を向上するためケアマネージャーの資格更新制を導入した。介護サービスの情報公開制度を導入し、透明性の確保を目指した。またサービスの拡充として地域密着型サービスが追加された。

そして、介護予防と地域支援事業である。2005年の介護保険法改正で要支援の認定を受けた保険者への介護予防事業が導入され実施されてきた。2014年の改正で「介護予防・日常生活支援総合事業」が、従来の介護予防訪問介護、介護予防通所訪問介護だけでなく、多様なサービスを受けられることを目的として新設された。しかし松山市が平成29年4月からスタートしたサービスには、要支援1・2と認定された人および事業対象者が利用できる「訪問型サービス」と「通所型サービス」のみである。基本チェックリストの項目で該当基準を満たしていて届出を出すと利用できるようになっている。このように、新総合事業の難点は、市町村の財政やボランティアやNPOなどの協力体制によりサービスの質の格差が生まれることである。どう地域にあわせて資源を確保し展開していくかが今後の大きな課題である。

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