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【社会福祉】低所得者に対する支援についての考察(貧困問題)

現代社会の貧困の様相は、アメリカ軍に敗戦した戦後の日本が置かれた極度の貧困状態から、現代ではその性質が変わっている。

 

時代の編成とともに貧困の背景は変化してきた

物理的に壊滅しゼロから再興せざるを得なかった戦後から昭和にかけて、日本は国内の経済成長に支えられて経済的な豊かさを高めてきた。しかし、サービスや産業が成熟し高齢化が進む中で経済的な成長は停滞しはじめ、経済活動は限られた市場を奪い合う構図に移行してしまった。

このため、雇用の不安定・低賃金・失業といった労働に直接かかわる側面で影響が出始め、同時に経済的基盤の不安定さからくる消費の冷え込み、就労者世帯が維持可能な家族単位の縮小などが相乗効果で量的・質的貧困を生み出している。

こうした日本社会の厳しい資本主義経済社会のなかで経済競争力が無かったり障害により失ったりした場合、非常に厳しい生活を強いられることになるのが現状である。

働いても生活できないワーキングプアや、健康・障害・高齢・性別・国籍などハンディキャップを理由に労働市場から敬遠されることによる雇用機会の非平等な消失などがある。

 

現代における貧困(相対的貧困率・ひとり親世帯の子供の貧困)

相対的貧困率は貧困を考える上で重要な指標である。相対的貧困率とは、等価可処分所得の中央値の50%の値しかない人の割合を示す数字で、日本で経済的収入がちょうど中盤の人の半分しか所得がない人の割合を示す。

2012年は16.1%、2015年は15.7%で、約6人に1人が貧しいということになる。OECD加盟国のなかでは下から数えたほうが早いほど日本の相対的貧困率は高い。

離婚してシングルマザー・シングルファザーになった片親家庭の貧困は特に問題視されている。特に母子家庭において貧困問題は深刻である。

就業率は男女ともに80%代だが、非正規雇用が多い女性の場合、所得が特に少ないケースが多く、子育て中の一般世帯の年収が626万円として母子世帯の収入は223万円であり、経済的に安定しない。また、育児休暇などの福利厚生も充実しておらず、雇用保険にも入ることができなかったりすることから、生活の維持には常に緊張感が伴う。養育費の支払いの取り決めも半数しかなされておらず、取り決めしたとしても支払い能力が無いなどの理由で支払われるケースは少ないと聞く。

ひとり親世帯で何よりも問題なのは、子供の貧困である。2016年の報告ではひとり親家庭の子供の貧困率は50.8%であり、OECD加盟国など先進国のなかで最も高い貧困率である。

 

公的扶助の低所得者対策の転換期はリーマンショック

このような社会のシステムから不幸にも取り残されてしまい、苦しい生活を強いられている人々に対して、ナショナルミニマム機能とセーフティネット機能を発揮し、憲法第25条第1項に保障されている「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を守るために、公的扶助の役割がある。

公的扶助の具体的な仕組みとして、生活保護制度や自立支援、低所得者対策などがある。高齢者や障害者など要介護者が安心して自立した生活を送れるよう、介護保険制度が開始され、続いて介護保険法と児童福祉法が改訂された。障害者自立支援法などが制定され、多様性を尊重して社会参加して自立できるよう国の支援の方向性が示されている。

貧困・低所得者層においてはリーマンショック前と後という2点の大きな起点がある。

リーマンショック前は生活保護水準は抑制の方向だったが、リーマンショック後の大量の失業者や生活困窮者に対応するために特に子供の貧困解消やナショナル・ミニマム、自立支援、低所得者対策の見直しに大きく舵が動いた。

 

貧困からの自立とは自分らしく生きる自己決定権を取り戻すこと

このような動向のなかで貧困への支援とそれによる自立とはどのような状態なのだろうか。

生活保護法によれば、自立は2つの見解から成っている。経済的自立と社会的自立である。

しかし、身体的自立が困難で継続的な支援が必要な高齢者や重度の身体障害者は自立していないのだろうか?

そんなことはない。あらゆる人は様々なかかわりによって生かされ、決して一人で生きているわけではない。それは障害が有ろうとなかろうと、老いも若きも皆社会的生命体である人間として生き社会に属する以上は全く同じである。

自立の概念は「個人の尊厳の保持」という社会福祉で一番に考えなくてはならない要点をもとに、自らの意志と選択により自立していく主体としてとらえる「自己決定による自立」を最重要視することが重要である。

そのうえで、日常生活レベル・社会生活レベル・経済的レベルを自発的に目指す目標指標として活用しながら自分の可能性を追求していくこと、要保護者自身が決定・選択した人生を切り開いていくことが支援していくうえで重要な状態であり、今ある制約条件の中で極限まで「自分らしく生きる」を楽しめる自発的な状態が、真の自立の在り方なのだと思う。

【社会福祉】更生保護制度においてソーシャルワーカーが真にアプローチすべきこととは?

こんにちは、ちあき です。

まずは、更生保護制度の概観を整理するにあたって、現代社会に対して少し思うところがあったので、まとめてみました。

 

更生保護制度の関連機関と問題点

更生保護制度の関連機関は大きく6つに分けられる。まず、それぞれの機関における問題点を整理する。

 

裁判所

まず裁判所だが、少年による事件はすべて家庭裁判所に送致される。これを全件送致主義という。

少年保護手続に沿って少年院を出た後も保護観察所を通じて健全育成と改善更生を支援する福祉的機能をもつわけだが、問題点はその性質から少年の自由を束縛し強制的な要素を持つことである。罪を裁くという司法的な処分が強制されることに反発したり腐ったりして更生を妨げる可能性もある。

 

検察庁

検察庁において検察官は刑の執行を監督する立場である。

問題点は、監視と援助という不信と信頼を両立しなくてはならない矛盾を孕んでいることである。福祉的観点から保護観察付きで執行猶予を求刑することもあるが、あえて前科者のレッテルを貼って本人の社会復帰を困難にする可能性がある。

 

矯正施設(少年院・刑務所・拘置所)

矯正施設は、少年院や刑事施設(刑務所・拘置所)である。

問題点は、矯正施設を出所後社会に居場所がなく、再犯して再度入所するケースが多いことである。施設で身につけた健全な習慣を社会に戻ってからも継続することは容易ではない。施設での教育・指導の充実と塀の外でも継続できる体制づくりが必要とされている。

 

児童相談所

児童相談所は児童を心身共に健やかに育成することを目的とする児童福祉法を根拠法令として児童を対象に非行相談を受けている機関である。

問題点は、年々増加し続ける児童虐待の通報への対応で職員が疲弊しており充分な対応ができない可能性が高まっている点である。職員の使命感で支えられているのが現状である。

 

公共職業安定所

公共職業安定所・自治体等は就労支援と生活支援が役割である。就労ができず経済的に困窮することは犯罪につながるリスクファクターであり、社会的に脱落し社会的排除を起こさないために大変重要である。

問題点は、生活自立を含めた包括的な就労支援制度がないことである。本人か機関の人間が発達障害や知的障害の知識が乏しいと、適正にサービスを享受できないという柔軟性の問題もある。

 

民間団体

民間団体は、たとえばNPO法人や社会福祉法人などである。住宅支援・就労支援・社会貢献活動を役割としている。

問題点は、民間であるために組織を継続性が不透明であること、個々のニーズに沿って展開する分細分化され、中には援助の質が低くなる可能性がある。

 

犯罪は関係ない出来事ですか?犯罪者はヒトではありませんか?

実効的かつ安定した正規就労と社会復帰までの長い道のりを共に歩むことが可能な処遇プログラム、つまり点の支援ではなく線の支援ができるよう、各機関が相互に連携を強化することが、今後の課題である。

そのためには地域社会の理解が必要不可欠である。

犯罪者という偏見にまみれたレッテルでラベリングして排除しようとする不安感の正体は、とりもなおさず、「失敗を許さず一度落ちこぼれたら這い上がれない」現代の冷たい日本社会の在り方そのものである。

誰でも犯罪を犯す可能性はある。

間違いは誰にでもある。

そこからどう生きていくか、という姿こそ社会的に評価を得るべき視点であり、この視点を取り戻すことが閉鎖的な今の社会構造を打破する鍵であると考えている。

 

余談:少年法の適用年齢について

昨今、少年による親殺しや通り魔などのニュースが報じられている。

少年法の適用年齢を18歳に引き下げることや少年法を厳罰化し犯罪の内容に対応した刑罰にすることは、私は賛成である。

罪は償わなくてはならない。

それは成人でも少年でも変わらない。

罪を平等に受けることこそ人格の尊重の形の一つであり更生の第一歩である。

少年だから判断能力がないだろうと考えるのは、本人の人格を軽視していると考える。

ただ、10代の少年に長期の刑罰が科せられた場合、現在の受刑では社会復帰の道は閉ざされる可能性があるのは事実である。

問題は、未成年の犯罪における社会的背景と彼らの社会復帰に当事者意識を持てないことではないだろうか。彼らは「人生の落伍者」であり「自分とは違う下劣な人種」だと区別して安心を得ようとする心こそ、犯罪者のそれよりも下劣で卑しい考え方ではないだろうか。

 

マイノリティーが投影する、現代の失われた光と、闇の実態

依存症や発達障害や知的障害に対しても同様に、ラベリングされて社会的に排除されている現状がある。

ソーシャルワーカーとして真にアプローチすべきは、実は目の前の犯罪を犯してしまった子ではなく、その子を取り巻く地域・ひいては世の中への啓発活動であり、環境調整なのではないか。

長期に服役したとしても、刑期中にその子が抱えている問題を細分化して各種専門家が腰を据えてケアできる体制を整えれば、長い刑期は無駄ではなくなる。むしろ必要な回復のための有意義な期間になるだろう。その後の社会復帰を見据えたケアが行われ、NPO法人や社会福祉法人、提携する民間企業などでの就労支援と生活支援が遂げれなく繋がり、刑期満了とともに、刑期中に行われたケアの延長線上に社会での生活があれば、違和感なく脱落なく、スムーズに移行することができる。

復帰した社会で、「失敗してもいいんだよ」「再び立ち上がって頑張ればきっとまた輝くことができる」という光を感じることができれば、刑務所や少年院しか居場所がない、という悲しい現実に絶望し、再犯によるリターンしてしまう確率は限りなく低くなり、最終的に犯罪の発生率は低下し、世の中はより良くなって、地域の住民や世の中は本来の明るさを取り戻すことができるのではないだろうか。

【社会福祉士】2019年世界幸福度ランキングから考える「豊かさ」を失った日本の現状と原因

2019年3月20日(水)は、国連が定めた「世界幸福デー」です。

世界幸福デーのこの日、国連は2019年版の世界幸福度報告書「世界幸福度ランキング2019」を発表しました。

細かすぎて見えないですね。日本だけ拡大してみましょう。

出典:2019年世界幸福度報告書 http://worldhappiness.report/ed/2019/

このランキングは以下の項目をポイント化したものをもとに作成されています。

・人口あたりのGDP
・社会的支援
・健康な平均寿命
・人生の選択をする自由
・性の平等性
・社会の腐敗度

この世界幸福度ランキングで、日本は残念ながら、58位という結果でした。

日本は世界に名だたる長寿国であり内戦もしていないのに、なぜOECD加盟国のなかで最下位に近い不名誉なランキングだったのか、現在の日本を、貧困という観点から紐解いていきたいと思います。

 

日本は豊かではない?

日本は実は豊かではないかもしれません。

こちらはOECDの2019年の報告書における「貧困率」の国際比較です。

これまた細かくてすみません。

この表から分かるのは、全年齢・18歳以下・18-25歳・26-65歳・65歳以上 と、どの階層でもOECD加盟国の貧困率の平均値を上回っている、という事実です。

【平均を上回る貧困率】

貧困率は OECD 平均を上回る。

日本の総人口の 16%、18-25歳の若年人口の 18% 、高齢人口(65 歳以上)の 20% が貧困線を下回っているのに対して、

OECD では全体の 12%、若年者と高齢者のそれぞれ 14%である [Figure 6.6]。

出典:Society at a Glance 2019 © OECD 2019

結論として、日本は単純に「貧困率」でみると、OECD加盟国のうち

下位9番目に位置しています。

 

「相対的貧困率」とは?

単純な貧困率ではなく「相対的貧困率」という数値で貧困問題が語られることがあります。

では「相対的貧困率」とはいったいなんなのでしょうか?

算出方法は下記の通りになっています。

①可処分所得(所得から税金などを引いた実際に使えるお金)を計算する

②等価可処分所得(①を世帯人数の平方根で割った所得)を計算する

③等価可処分所得ごとに全員ならべたときの中央値(1億人いたら5000万番目の人の値)を計算する

④中央値の1/2以下の人の割合を出す。

ちょっとよくわかんないですね。

簡単に言えば、2012年の日本でちょうど真ん中くらいの豊かさの人が244万円(20万円/月)で、122万円(10万円/月)以下の人がどのくらいいるか?という%(割合)が「相対的貧困率」です。

2012年では16.1%でした。

つまり、6人に1人が貧困状態にある、という計算になります。

 

上の図は2015年までの日本の相対的貧困率の推移を示したグラフです。

2015年は15.7%と若干の低下傾向にありますが、依然として高い数値であることは変わりありません。

なぜなら、国際比較してみると、

御覧の通り、相対的貧困率が約16.0%というのは、

下から数えたほうが早いくらい悪い数値だからです。

 

「自殺」が多い国、日本

2019年のOECD報告書による自殺率(統計数字は2016年か近い年)がこちらです。

日本は下から5番目です。

OECDのExcelデータは画像にすると超ちっちゃくなってしまい、

申し訳ない気持ちでいっぱいです。

概要は下記のとおりです。

【長い寿命と高い自殺率】

日本の平均寿命は OECD 諸国で最も長く、2016 年で 84 歳であり、1970 年の 72 歳から大きくのびている [Figure 7.1]。

日本人女性の寿命 (87 歳)は男性(81 歳)よりも長い。

過去 10 年で自殺率は大幅に減少したが、OECD 比較では高いままである。

10万人に 16.6 人の自殺がある日本は、OECD では 5 番目に高い自殺率であり、10 万人に 12 人の OECD 平均を大いに上回っている[Figure 7.10]。

自殺は日本では女性より男性に多くみられる。

出典:Society at a Glance 2019 © OECD 2019

 

2012年までのデータで少し古いですが、

日本における自殺は原因は、健康問題と経済・生活問題が70%を占めています。

出典:「貧困問題レクチャーマニュアル」特定非営利活動法人 自立生活サポートセンター・もやい

 

つまり、これらの結果から、何らかの健康の問題や生活苦により自殺している人が多く、

その割合は世界の国々に比べても、非常に高い、ということが言えます。

 

昔より不幸せになってしまった日本人と「不寛容」

これらの貧困率・相対的貧困率・自殺率を踏まえてこちらをご覧ください。

はい、拡大します。

出典:2019年世界幸福度報告書 第2章 http://worldhappiness.report/ed/2019/

これはなにか?「2005-2008年から2016-2018年への幸福の変化」です。

日本は、95番目で、「より不幸になった」と感じているという結果が出ているのです。

 

これは、憂慮すべき結果です。

 

ここまでの事実から考えて、日本は「豊かさ」とはかけ離れていると思いませんか?

格差は拡大しており、貧困率も相対的貧困率も高い水準になるにもかかわらず、

「自己責任」論で蓋をして、「生産性」が悪いと個人に問題を帰属させて、

「頑張れない人は生きている価値がない」と言わんばかりに放置される社会。

だから絶望して自殺してしまう社会。

 

『失敗を許さない社会』。

それが現代の日本社会なのではないか、と感じてしまいます。

 

失敗した人は叩いて叩いて謝罪させる。

そんな世の中のニュースに辟易としている人が多いのではないでしょうか?

芸能人の不倫や家族関係にまで首を突っ込んで、

あーでもないこーでもない、と正論をぶつけ合う社会。

 

そんなんじゃ、幸せなわけないですよね。

 

誰にだって間違いはあります。

間違わないで生きてきた人なんていませんよ。

間違ってきたからこそ、

失敗に打ちひしがれている人に手を差し伸べる優しさを学ぶんじゃないでしょうか。

取り返しのつかないような失敗をしてしまって、

心から謝罪して猛省して罪を償うことを誓ったなら、

誰だって罪を償いながら自分らしく人生を生きることは

許されて然るべきなんじゃないでしょうか。

間違いを誰も許さないんじゃない。

私たち一人一人が何より自分自身を許せないから、

みんながみんな窮屈になってしまっているんだと感じます。

間違ったっていい。

失敗したっていい。

人間は、人間だから、

いくらでもやり直せる。

取っ替え引っ替えみたいな、

あれがダメならこれでいこう、

みたいな、適当でもいいじゃないか。

だって私たちは完璧じゃないんだから。

人間なんだから。

(確か、化物語の「なでこスネーク」で貝木泥舟と千石撫子の掛け合いに、似たようなセリフがありました。)

でも、こういう「不寛容」からくる

「~でなくてはならない」という義務感を頭から取っ払ったら、

もっと自由に自分らしく生きることができる。

「幸せになるため」に生きるんじゃなくて、

「なりたいものになるため」に生きる。

それこそ「幸せ」なんじゃないでしょうか。

 

今回の報告書を読んで、そんなことを考えました。

【社会福祉士】集団を活用した援助(グループワーク)の展開過程

グループワークの展開過程は、シュワルツが相互作用モデルのなかで提示した援助過程である4つの過程(準備期、開始期、作業期、終結・移行期)に沿って述べることができる。

 

準備期

準備期は、グループでの取り組みを始める前段階である。

援助者の役割は、グループ計画を立案し、グループワークの環境を整えるという役割である。グループワークのニーズ・目的・プログラムの内容・組織運営方法・メンバーの募集など、骨子を決める。

関連する組織にサポート要請をし、組織の内外に協力体制を構築する。継続的な運営に先立ち、事前に活動資金、備品、人材、施設や機関(場所)、情報といった社会的資源の確認をしておくべきである。

作業課題として、予備的感情移入が必要である。できる限りメンバーのおかれている状況やニーズや学術的知識をインプットしたうえで、グループワークの場面で表面化するかもしれない場面、メンバーの思いや感情(期待・不安など)を想像して波長合わせができる準備をしておかなくては、グループが混乱に陥る可能性が高いからである。

 

開始期

開始期は、メンバーたちが初めて出会い、グループとして動き始めるまでを指す。

援助者の役割は、メンバーとワーカーの間に援助関係を樹立すること、ワーカーはあくまで側面的に支援する存在であり問題解決の主体はメンバーであること、を双方向の話し合いにより共通認識とすることである。

作業課題として、メンバーの不安を払拭すべく、相互にコミュニケートすることである。グループ活動の枠組みや今後の方針などを丁寧に説明し、具体的な見通しと役割分担を明確に共有するよう心を配る必要がある。

 

作業期

作業期は、メンバーとグループが協力して取り組み、目標達成に向かって明確な成果を出すよう生み出すように進めていく段階である。

援助者の役割は、本格的なグループづくり、相互援助システムの形成と活用をサポートすることである。

援助者として本格的な働きかけの始まりとなる。リーダーを選び、ルールを決め、メンバーの役割を決める。こうした働きかけにより、グループに共通の目的意識が芽生えるのを助ける。また、メンバー同士が関係を広げながら相互に尊重しあい影響しあいお互いを受容しあいながら共鳴していく場づくりを媒介者として調整する役割を担っている。

こうした人間関係の化学反応が積み重なり、最終的に相互援助システムとして確立する。

個々のメンバーの課題に対してメンバー同士がお互いに気づきを得て、問題解決に貢献できるようになっていくと最終段階に到達したと言える。

作業課題として、メンバーの距離感や位置づけについてあくまであるがままに任せ、意図的に手を加えないように注意することが挙げられる。コミュニケートするメンバーの固定化やサブグループの存在を否定したり排除したりするのではなく、肯定的にとらえ、活かしていくことが求められる。

 

終結・移行期

終結・移行期とは、グループ終結の作業を進め、メンバーが次の段階に移行できるように援助する段階で、ワーカーはメンバーとともにこのグループワークで得られた成果や個々の変化について振り返り評価する。

グループワークが終結する条件はいくつかあるが、目的達成後存在理由がなくなった場合、当初の運営計画通りに運営が困難になった場合、メンバーの目標が一致せず効果が期待できなくなった場合、の3つが代表的である。

援助者の役割として、メンバーに前もって計画的な終結の予定を適切な時期に適切な方法で伝え、メンバー自身が終結に向けて問題解決への取り組みを含め納得感をもってゴールに迎えるようサポートすることである。メンバーがグループに対して愛着や執着を持っていればいるほど、喪失感による拒否や否定や悲嘆が発生する。この際、ワーカー自身の心情を含めて、複雑な感情をメンバーと分かち合い、ワーカーとしてそれぞれの想いを受容することが大切である。また、ソーシャルワーカーの倫理綱領にもあるように、グループワークが終了しても知り得た個人情報については取り扱いに充分注意しなくてはならない。

 

たとえば、依存症の「自助グループ」

集団を活用した援助(グループワーク)に、依存症患者の集まりである自助グループが挙げられる。

集団がもつ力を引き起こす相互作用を最も感じる集団援助の一つである。社会的に偏見が根強いため、「依存症」に悩む本人も家族も問題を抱え込んでしまい孤独感が強い傾向がある。

そうした孤立しがちな依存症に悩む者同士を結びつけることにより、心を頑なに閉ざしているメンバーでも、お互いに理解者を得られて「自分たちは孤独ではない」という安心感と癒しを感じることができる。

お互いの経験を正直に話し、ただ傾聴するというグループワークを繰り返し体験するというメンバー同士の化学反応の力は大きい。

【社会福祉士】社会福祉法人は本当に必要なのか?

社会福祉法人は、1951年に制定された社会福祉事業法、現在の社会福祉法により創設された社会福祉事業を行いことを目的とする法人である。

 

なぜ、社会福祉法人は創られたのか?(創設に至った概観)

第2次世界大戦終戦の混乱期に要援護者への対応が急務となるなかで、社会福祉に関する事業を国や地域公共団体の「制度」が担う必要性と行政の資源不足・民間資源活用の必要性から、強い公的規制のもと助成を受けられる特別な民間の法人として社会福祉法人が創設された。

国や地方公共団体が社会福祉法人に委託する形(措置委託制度)をとり、公共性の高い社会福祉事業を行う非営利法人として発展してきた。

1990年代に始まった社会福祉基礎構造改革により、福祉サービスの利用の仕組みが行政による措置委託から利用者との契約に移行した。また、株式会社などの経営主体による福祉サービスの参入が進み、福祉サービスの供給体制が多様化した。このような状況から競合する他のサービスとの立ち位置を明確にするため、より公益性・非営利性を徹底し、国民に対する説明責任と地域社会貢献を果たす組織として再定義された。

これが社会福祉法人制度改革の概観である。

 

現代における社会福祉法人が抱える問題点

近年、社会福祉法人の抱えやすくなる諸問題がいくつか社会的に取り沙汰されている。理事長とその親族による法人の私物化、不適切会計により多額の内部留保を溜め込む利益重視体質の露見など、最大の特徴と存在意義である公益性・非営利性を損なう事案が一部の社会福祉法人で確認されている。財務諸表を公表している法人が半数に満たないという驚くべき不透明性が隠れ蓑となり、非常識な役員報酬を目当てに自治体OBの実質的な天下り先になっていたり既得権益化しているという悲しい現実もある。

 

社会福祉法人が存続するために必要なCSRの概念

特別養護老人ホームの業界に民間企業(株式会社)が参入意欲を示し待機しているなか、優遇措置を受け続け社会福祉法人が存続するとしたら、上記のような諸問題を解決し社会的信頼と存在意義を取り戻す必要がある。

社会福祉法人の財務諸表の原則HPでの公表が義務化されているものの、法令上の根拠がないとして、平成25年の規制改革会議への報告では財務諸表を公表している法人は約4割(4,876法人)であった。財務諸表の公表が無い場合に、法人の指定取り消しを行うべきではないだろうか。

厚遇を受け税金をつかっている以上、前述した説明責任を果たす意味でも、組織の性質が異なるとはいえ、東証一部上場企業と同等程度のクオリティーの財務管理と透明性の確保は一般市民が正確に状況を理解するうえで、必須であると考えることもできる。

財務管理の透明性の確保を徹底したうえで、活動内容・財務状況・地域貢献度を地域住民に定期的な評価制度を導入するとよいだろう。存在意義の有無に関して360度サーベイを実施し、一定の評価を得られない場合は優遇の停止するか組織を他事業者へ移譲して民営化が速やかに実行できるようにするのである。

このように外部評価にさらされる環境を提供すれば、社会福祉法人は変わらざるを得ない状況に迫られて、サービスとしての価値に応じて進化するか滅びるか、いずれにせよ変わることができる。

この改革により浮いた予算を活用して、参入意欲がありサービスの質と量を定期的に監査する条件つきで、株式会社・NPO法人による参入に補助金制度を活用して支援をより促すのも効果的であると考える。

設立のしやすさから、粗悪なサービスを提供するNPO法人が問題視されているが、あまり役に立ちにくくなってしまった社会福祉法人に流れている予算をサポートに回して安定経営ができるようにサポート体制を敷き、競合する法人が多数存在するようになれば、市場原理が働いてサービスが不十分なNPO法人は自然淘汰され、価格に見合った適切なサービスを提供でき従業員に適切な賃金を支払える組織による社会福祉事業だけが生き残る、という未来が実現できるのではないだろうか。

福祉は一般的な事業と比べて、資本主義経済原理とは対極の公益性重視の事業であり、経験の無い法人は参入しにくい状況だった。提供すべきサービスも明確かつ限定的で社会福祉法人の役割がはっきりしていたので存在意義は大きかったのだろう。

しかし現代において家族のあり方・ライフスタイル・価値観は多様化しており、個別のニーズに対応するには事業者とサービスを多様化してアンメットニーズに対応できる体制を整えるべきタイミングを迎えていると考えられる。

他の事業で売り上げた収益を社会福祉事業に投資して複数の事業を運営する経営主体による安定した事業提供体制を整えるほうが、安定したサービス提供を望めるのではないか、と考えてしまう。

【社会福祉士】戦後~現代社会における社会福祉の位置づけの変化をまとめてみた

日本における戦後社会と現代社会における社会福祉の位置づけは、時代の変遷の過程で、例えるなら「セーフティネット」から「トランポリン」に役割を変容してきた。

 

戦後社会における社会福祉

戦後社会において、被援助国として援助を受けつつGHQの福祉改革による旧生活保護法に始まり、日本国憲法が公布・施行されて、特に幸福追求権や生存権を規定した第13条・第25条がしめす民主主義的な機運が本格化され、社会福祉の出発点となった。

戦後社会の制度は、「措置制度」として徐々に拡充されていく。

生活保護法・児童福祉法・身体障害者福祉法の福祉三法が成立した。社会福祉事業全分野の共通事項の規定のため、社会福祉事業法(現・社会福祉法)が成立した。その後、精神薄弱者福祉法・老人福祉法・母子福祉法の立法により、前三法と合わせて福祉六法体制が確立した。

国家としての責任は、日本国内において「日本型福祉社会」を確立することであった。

それはつまり、「個人の自助努力」と「家族や近隣・地域社会等の連携」を基礎に、「効率の良い政府が適正な公的福祉を重点的に保障」することで「わが国独自の道」を目指すことであった。

まだ国際化が進んでいない戦後社会において、復興のために汗を流す製造業の工業労働者の都市生活や農民の生活を送る国民たちは、伝統的家族制度と近代的家族制度に根ざした家族による家族介護等のケアを頼りに、家族・近隣・地域社会との協力関係の下、基本的には社会福祉を当てにせず自助努力で生活するよう促す、形成途上の福祉国家として歩みを進めてきた。国としては、個人の自由を抑制しながら国民生活全般の支援を国家自らの任務ととらえていた。

それゆえに、公的福祉の位置づけが「選別主義」的であったことは否めない。実際に展開される公的部門の支援は限定的なものであり、自立できない者への対応は厳しいもので、道徳的に低位なものに対する差別が存在した。

まとめると、戦後社会の社会福祉の姿は、措置制度に象徴される行政主導のパターナリスティックな福祉供給システムであり、供給されるサービスは施設収容を中心とした非民主的で非対称的な処遇によって特徴付けられる「旧構造」であり、実質自立できない者への「セーフティネット」だったのである。

 

現代社会における社会福祉

そのような戦後社会から現代社会に時代が流れ、グローバル化と少子高齢化が進み、今まで当てにしてきた家族制度は崩壊し、終身雇用制度も終焉を迎え、旧態依然とした地域社会システムを前提としてきた社会福祉は再構築する必要に迫られた。

つまり、国民の産業が第一次産業から第三次産業(サービス業や知識産業)にシフトし、生活スタイルも「個別化」が進んだ現代において、個人を低としつつ社会的連帯によって成立する社会保障の役割が重要になっていったのだ。

そのような時代背景に呼応する形で制度も拡充・見直しが進められてきた。

1973年は福祉元年と称され、低水準の社会保障から脱却し西欧の社会福祉に近づこうと試行錯誤を開始した年である。特に、戦後差別され隔離されてきた社会福祉の対象者に愛して、1980年代からノーマライゼーションが認知され、今日の社会福祉全般にわたる理念として定着している。

その発展形態である「社会的包摂」は、多様な異質性をそのままに社会に包摂する、という、移民や少数民族のみならず、貧困者・障害者・高齢者・女性・非正規雇用者などのマイノリティに向けられた社会的な関係性からの排除=社会的排除と理解する重要な基本理念である。その基本理念のもと、老人保健法の改正による医療コストの見直し・福祉関係八法の改正を経て、介護保険法が施行された。

そして、今日の社会システムとしての社会福祉の制度的基盤、到達点である2000年の社会福祉法制度が確立した。貧困者にはホームレス自立支援法が制定され、障害者には障害者雇用促進法の改正が行われ、高齢者には高齢者雇用安定法が制定され、女性の社会進出の支援や非正規雇用者の待遇是正など、企業の取り組みも活発化している。多くの福祉分野において就労支援を含む自立支援政策が導入されていった。

 

セーフティネットではなく、自立支援(トランポリン)へ

戦後の「措置制度」「セーフティネット」としての社会福祉とは対照的に、現代の社会福祉の理念は「自立支援」であり、「トランポリン」である。多様な異質性をそのまま受け容れ、ダイバーシティ&インクルージョンを前提とし、自立と連帯のなか誰もが尊厳を持って国民が主体的に福祉サービスを受給して暮らせる社会を共に作り上げることが、現代のおける国家の責任であり国民の役割でもある。

【社会福祉士】発達障害(ASD)のクライエントに対する支援

発達障害には、自閉症スペクトラム、ADHDなど、さまざまなものがある。

今回は、大人の自閉症スペクトラムの発達障害を持つクライエントをサポートするケースでそのような点に気をつける必要があるか、についてまとめる。

 

自閉症スペクトラム(ASD)とは?

自閉症スペクトラムとは、精神障害の診断と統計マニュアル第5版(DSM-5)における精神発達症群における診断名のひとつで、しばしば医療関係者の間ではASDと略される。この第5版において、今まで別の疾患として扱われていたアスペルガー症候群・自閉症・その他広汎性発達障害を包括的に総称して扱う単語として、ASDは再定義された。

ASDの診断基準は「社会的コミュニケーションの障害」と「限定された興味」の2つを満たすとDSM-5では定められている。

症状としては生後2年以内に明らかになる場合が一般的である。子供のころに鑑別できなかった場合には、成人してから社会に出て就職した際に周囲とのコミュニケーションが図れず孤立してしまい、職を転々とする、または失業することがある。

特定の事柄や物事の進め方の順序に固執する性質が災いして職務を遂行できず評価されない状態が続いた結果、精神疾患を合併症として発症し、精神科や心療内科に繋がって初めて診断が下されるケースもある。

いずれにしても、集団や組織のなかでの人間関係に難があり、本人は生き辛さを感じ社会生活に悩みを抱えているケースが多い。

 

ASDのクライエントへのアプローチの方法

ASDのクライエントに対して、我々ソーシャルワーカーは発達障害者支援法に基づいて支援を検討することができる。

支援を行う場合、発達障害の場合は特に、大きく分けて医療・教育・福祉、労働の多職種連携が必要になる事例が多い。

発達障害者支援センターが都道府県・指定都市において運営されていて、発達障害児・障害者の地域における支援のために、関係施設職員や学校の教職員、福祉事務所、児童相談所、更正相談所、保健所、医療機関、学校、職業安定所等の関係機関との連絡調整業務を実施している。

発達障害者支援法にはないが、関連性のある支援制度が「発達障害情報・支援センター」のホームページに掲載されており、本人やご家族だけでなく、支援に関わる関係者の知識を補完する役割を果たしている。

 

精神障害者保健福祉手帳を取得するメリット

関連性のある支援制度の活用における具体的な支援行動のひとつとして、精神障害者保健福祉手帳の取得支援がある。

精神障害者保健福祉手帳は精神障害者が一定の精神障害の状態であることを証する手段となり、各方面の協力を得て各種支援策を講じやすくすることにより、精神障害者の自立と社会参加の促進を図ることを目的としている。

「障害者手帳を取得すると差別や偏見があるかも知れない」と心配されるクライエントには、障害者手帳を取得したからといって必ず周囲にオープンにする必要もないため、周囲に知られなくない場合は知られないようにすることもできると、障害者手帳のメリット・デメリットを正しく伝える必要がある。

精神障害者保健福祉手帳の申請は、市町村の窓口で行い、都道府県知事(指定都市にあってはその市長)の認定に基づいて交付される。

交付後、精神障害者に対する援助措置は下記のものがある。

① 心身障害者扶養共済

② 国税、地方税の諸控除及び減免税

③ 公営住宅の優先入居

④ NHK受信料の免除

⑤ 生活保護の障害者加算

⑥ 生活福祉資金の貸付

⑦ NTTの無料番号案内

⑧ 携帯電話使用料の割引

⑨ 公共施設の利用料割引や公共交通機関の運賃の割引 などである。

各自治体により対象者、サービス内容は異なる場合があり、福祉担当窓口に確認する必要がある。この手帳の取得により障害者雇用での就職を選択することが可能になり、働き方や通院などの配慮を受けやすくなる。

このことはASDのクライエントで「配慮があった方が働きやすい人」にとって大きなメリットがある。

なぜなら、ASDにおいては得意なことと苦手なことの差が著しいため「苦手なことでも、慣れればできるようになる」といったような一般的な考え方が通用しないケースがあるからだ。業務や環境のミスマッチは、本人自身にストレスがかかることはもちろん、周囲も対応に疲弊してしまい悪循環を招く。したがって、特に就労支援においては、障害特性による強みと、一人ひとりの得意なことと興味関心を活かすことが大切になる。

 

まとめ:ASDという素晴らしい「個性」を活かした支援がカギ

ASDのクライエントの強みと興味関心について理解し、その長所を活かすサポートを可能にするために、我々は地域連携を推進していかなければならない。

地域連携をつくるベースの活動は、個別ニーズへの対応と、支援期間の役割分担によるコラボレーションである。

すべては、個別ニーズからスタートし、人と人、機関と機関が持てる機能を出し合い、補完し合うことで生み出されるということを常に忘れず、支援に取り組まなければならない。

【社会福祉士】ソーシャルワーカーに学ぶ人間関係の考え方

社会福祉士の国家試験に向けて専門学校で勉強中です。

通信制の専門学校に入学し、土日にスクーリングを受けたりレポート提出したりしています。 個人情報保護の観点から書けないことのほうが多いのですが、勉強になったことで一般化できそうなことは書いていきたいな、と思っています。

ソーシャルワーカーって、何するひと?

ソーシャルワークとは、グローバル定義において以下のように定義されています。

ソーシャルワークは、社会変革と社会開発、社会的結束、および人々のエン パワメントと解放を促進する、実践に基づいた専門職であり学問である。 社会正義、人権、集団的責任、および多様性尊重の諸原理は、ソーシャ ルワークの中核をなす。 ソーシャルワークの理論、社会科学、人文学および地域・民族固有の知を 基盤として、ソーシャルワークは、生活課題に取り組みウェルビーイングを高め るよう、人々やさまざまな構造に働きかける。 この定義は、各国および世界の各地域で展開してもよい。 日本ソーシャルワーカー連盟(JFSW)公式WEBサイト より

つまり、ソーシャルワーカーとは、社会において様々な状況に置かれている人々が、本来持っている強み(ストレングス)を自覚し、必要なサポートなどを活用して、「自立して生きる」ことをサポートする人を指します。

例えば、ケースワーカー・生活相談員・児童相談員・成年後見人などの職業があてはまります。少し前にドラマで放映された「健康で文化的な最低限度の生活」で主人公たちがやっていた仕事といえば、わかりやすいかもしれません。先生方によれば、あれはとても分かりやすく教材にしたいくらい出来がいいドラマだそうです。ソーシャルワーカーを目指す人は全部見たほうがいい、と大変高評価でした。

どんな人にも偏見なく、という難しさ

非常に難しいのは、「偏見を持つことなく、その人そのままを見て話をして、本人の『自己決定』を支援する」というところです。

現在南青山に建設予定の児童相談所を含む複合児童施設を巡って港区と区民の間で対立が起こっていることが、ニュースになっていますね。なかなか理解は得られにくいのが世の常だと思いますが、とても胸が痛みますね。

生活保護を受けている人、障害をもっている人、DVやネグレクトを受けて保護された児童などに対して、どうしても接したことのない人は、想像で先入観を持ってしまいます。それは、ある種しかたのないことです。経験しなくては、人は想像することができないからです。

その結果、先入観や偏った価値観だけでイメージを作り上げてしまい、その人そのものを知らないまま、差別意識を持ってしまうという悲しいことが起こります。

「青山のブランドイメージが落ちる」と主張する人々の潜在意識には何があるかといえば、「我々はハイレベルな生活を手に入れた成功者である」という自尊心と、「児童相談所や社会福祉の補助を受けるような人は社会的地位が下で私たちとは違う存在である」という差別意識なのではないか、私には感じられてしまいます。また良くないことに、今回の反対運動を煽るように仕向けた不動産業者も、実は影に存在します。複合施設が建つ場所で商売をしようとしていた不動産業者です。

背景や金銭的思惑はあれども、本当にハイレベルな人々であれば、高い倫理観と社会的知識を持っているので、こうした困難に立ち向かっている人々も自分たちも「みな同じ」であること、一歩違えば逆の立場になる可能性について認識するのは、そう難しくないでしょう。

そのような人々からは、「青山のブランドイメージが落ちる」とか「物価の高さや華やかな生活に馴染めないのではないか」などという見当違いな反対意見は生まれないのではないでしょうか。

ましてや、同じ港区内で起きている児童虐待問題に対処するために企画されているのです。平成27年度の港区における児童虐待件数は478件で平成24年度の3倍です。新規受理件数は926件と過去最多。重篤化も進んでいるため、今回の施設建設が検討され始めたことすら、頭にないのかもしれません。

しかし、正論は言うに易く、行うは難し。現実にはとても難しいことです。誰しも今までの人生で培った経験や文化を背景にして「色眼鏡」をかけているものです。その「色眼鏡」は、かけていることすら気づくことが難しいからこそ、自分の判断や価値観が常に偏りがないか意識し続けなくてはいけません。

ソーシャルワーカーは、南青山の本来知識レベルや品行方正か素晴らしいはずの人々ですら獲得しえなかった「どんな人にも偏見なく公正で平等な視座」を獲得していることがプロとして前提条件となります。

「偏見」には「自分」が隠れている

ソーシャルワーカーは、「汚いな」「醜いな」「嫌いだな」「しんどいな」というマイナスの感情を感じたとき、その感情を否定せず、まずは素直に受け止めます。

そのあと、なぜ、自分はそういう受け止め方をしたのか?を考えます。

たとえば、私はアルコール依存症になる前、依存症患者に対して「だらしない人の病気」「自制心の無さからくる病気で自業自得」「もう依存症になったら人生の終わり」などとマイナスなイメージを持っていました。

なぜ、そういう受け止め方をしたのか?それは、『他人にそう思われたくない』という私の願望が背景にありました。

だらしない、自制心がない、何かに依存する弱い人間。

そんな風に思われたくない、という私自身の願望が、依存症患者を通して顕れていたのです。

実際、アルコール依存症は「真面目なひとがなる病気」で「アルコールは自制心とは関係なく飲まずにはいられなくさせる物質」であり、「依存症になったとしても人生が終わるわけではない」のです。治療に繋がり専門家から学んだ事実は、私が色眼鏡で見ていた患者像とは正反対の姿でした。

まとめ:人間関係のカギは、素直さにある

「あの人嫌いだな」「なんだかあの人疲れるな」

それはそれとして事実なので、まずは素直に受け止めましょう。注意してほしいのは、無理に仲良くしようとする必要はないし、合わない人はいても当然だということです。

誰にも嫌われない、みんなに好かれる、などということは不可能です。あなたは、あなたらしく生きる権利があり、あなたがあなたらしく生きていれば、人と違った価値観をもつことを恐れる必要はありません。

もし、あなたが「いろいろな人の価値観を認めて人間関係を広げてみたいな」と自ら願って行動するときは、なぜ嫌いだと思うのか?なぜあの人といると疲れるのか?を素直に考えてみましょう。

その背景には、あなたが「こう思われたい」とか「こう思われたくない」とか「こうあるべき」という、今までの人生や経験で培われた価値観や偏りが見つかるはずです。それ自体がいいわけでも悪いわけでもなく、「ああ、自分はそう思っているんだな」と思うことが重要です。

自分の偏りを傍らにおいて、改めて苦手意識のある人を見てみると、また違った見え方をしてくることが体験できると思います。

私もまだまだ学んでいる途中ですが、私が人生の課題だと感じている「人間関係」の考え方に一石を投じる考え方だと思ったので、記事にしてみました。

では、また!

【社会福祉士】介護保険制度の成り立ちと現在の状況って?

介護保険制度の創設の経緯は、1997年の介護保険法制定以前にさかのぼる。介護保険で高齢者介護および高齢者の自立支援をサポートする体制を整えるために発足した介護保険制度だが、逆に言えば、創設される以前の措置制度としてのあり方が高齢化社会を支えるという観点で限界を迎えたのである。

 

以前は、老人福祉法と老人保険法がルール

介護保険制度が創設されるまえは、老人福祉法の基づく措置制度と、老人保健法に基づく看護や介護の提供の2つが存在していた。しかし、措置制度はすべての高齢者に提供するには財源が十分でなく、サービスに対する偏見、所得開示の義務による抵抗感、当事者(高齢者本人)の選択能力不足などの問題点があった。老人保健制度の保健医療サービスとしての介護サービスの提供は、人員と生活環境への配慮の観点から一定の限界を有しており、今後高齢者が増加することを想像すると機能不全に陥る可能性が高かった。

 

ゴールドプラン策定から介護保険制度成立へ

このため、1989年にゴールドプランが策定され、福祉サービスの計画的整備が推進された。1990年の福祉八法改正により市町村に権限が委譲されたため、介護保険制度の実施主体として位置づけられる基盤が整備されはじめた。1994年、新ゴールドプランが策定され、介護保険制度創設のための検討が本格的に開始された。社会保険方式の介護システムを採用したのは、負担と給付の対応関係を明確にすることで、介護サービス負担増を国民に受け入れやすくしたかったという狙い、保険料の見返りとしての介護サービスという位置づけで真理的な抵抗感無くサービスを利用できるという狙いの2つが理由である。

こうして介護保険制度が成立し展開された。急激な介護給付費の増加にともなう保険料負担と公費負担の増加に対応するため、要支援の認定を受けた被保険者に対して介護予防を手厚くする制度改正が2005年の介護保険法改正で実施された。2011年には医療ニーズの高い高齢者や単身・高齢者のみの世帯の増加に対応すべく、地域包括ケアの推進、定期巡回・随時対応型サービスや複合型サービス(現:看護小規模多機能型居宅介護)の創設などを主とした改正を実施した。財政状況とニーズに応じて時代とともに形を変えながら今日まで介護保険制度は運営されてきた。

 

介護保険制度の概要まとめ

そんな介護保険制度の概要は以下のとおりである。

目的は、要介護状態になった高齢者に必要な介護サービスを提供し、それぞれの能力に応じて自立した日常生活を営むことができるようにすることである。

保険者は市町村および特別区である。被保険者に対して保険料を徴収し、要介護認定を行い給付額を決定し、介護保険事業計画を策定してサービス供給を確保する役割を担っている。被

保険者は第1号と第2号に分かれる。

第1号被保険者は65歳以上、第2号被保険者は40歳以上65歳未満の加齢に伴う一定の疾病により要介護状態となった医療保険加入者が対象である。

原則年金から天引きされ徴収された保険料が50%、残り50%は税金でまかなわれており、1割負担でサービスを利用できる。

要介護度・要支援度により支給限度額が異なる。要支援は1~2まであり、要介護は1~5まである。それぞれ数字が小さければ小さいほど自立状態が良好という扱いになる。

 

介護保険制度をめぐる最新の動向(2019年)

2014年、医療介護総合確保推進法に基づいて介護保険法が改正され、地域包括ケアシステムの実現に向けて医療と介護の連携の強化やサービスの質の向上を目的とした制度の見直しがなされた。こうした介護保険制度をめぐる最新の動向を整理したい。

まず、介護サービスの質の確保である。介護保険料の不正請求などの問題を受けて、指定の取り消し権限を行政に与え、指定取り消しを受けた者は別の自治体で指定を受けたりすぐに指定申請をできないよう規制することで、民間事業者に対して規制監督が強化された。ケアマネジメントの質を向上するためケアマネージャーの資格更新制を導入した。介護サービスの情報公開制度を導入し、透明性の確保を目指した。またサービスの拡充として地域密着型サービスが追加された。

そして、介護予防と地域支援事業である。2005年の介護保険法改正で要支援の認定を受けた保険者への介護予防事業が導入され実施されてきた。2014年の改正で「介護予防・日常生活支援総合事業」が、従来の介護予防訪問介護、介護予防通所訪問介護だけでなく、多様なサービスを受けられることを目的として新設された。しかし松山市が平成29年4月からスタートしたサービスには、要支援1・2と認定された人および事業対象者が利用できる「訪問型サービス」と「通所型サービス」のみである。基本チェックリストの項目で該当基準を満たしていて届出を出すと利用できるようになっている。このように、新総合事業の難点は、市町村の財政やボランティアやNPOなどの協力体制によりサービスの質の格差が生まれることである。どう地域にあわせて資源を確保し展開していくかが今後の大きな課題である。

【社会福祉士】高齢者を取り巻く環境の変化と今後の高齢者福祉における課題

高齢者を取り巻く環境は、特に第2次世界大戦後高齢者保険福祉制度の発展を期に加速していった。

国民皆保険制度がスタートし、老人福祉法が制定された。医療の面でも老人保健法が昭和57年に制定され、その後時代背景に沿って、調整と拡充がなされていった。

高齢者を守る様々な制度や法律

高齢者の尊厳を守るために、まずは法律が歴史的に整備されてきた。老人福祉法、高齢者の医療の確保に関する法律、高齢者虐待防止法、権利擁護と成年後見制度などがあげられる。

高齢者を支援する組織も整備されつつある。

指定サービス業者は、介護保険法に基づき都道府県か市町村の指定を受けた事業者である。

国保連は国民健康保険法第83条に基づき各都道府県に1団体ずつ設立されている。

地域包括支援センターは、介護保険法に基づき、市町村か市町村から包括的支援事業委託を受けた法人によって運営される。地域住民の心身の健康の保持および生活の安定のために必要な援助を行い、地域住民の保健医療の工場および福祉の増進を包括的に支援することを目的とする。

社会福祉協議会は、すべての市町村、都道府県、全国段階に設置されており、知己福祉の推進を図ることを目的とする団体として、福祉コミュニティつくりと地域福祉の推進を使命とする俊樹である。

ボランティアやNPOも無償・非営利の有志団体として社会サービスを提供する組織として活躍している。

なぜ高齢者の幸せを大切にするべきなのか?

人生のモデルとして高齢者は社会において重要な存在である。なぜなら若者は将来の自分自身を高齢者の現状に重ねて見るからである。

高齢者福祉はの重要な課題は、科学の発展に伴って人類が昔から望んできた平均寿命の伸びという成果を、社会が肯定するか否定するかに密接に関わる点である。

高齢者が元気であれば、社会全体が活性化する。逆に、高齢者が生きがいをなくし、早くお迎えが来てほしいという暗い余生を送っている姿は、社会全体に暗い影響を与える。介護に関する社会的負担感も増大する。

ソーシャルワーカーは、高齢者の幸せと尊厳を尊重し、ご本人らしい幸せな生涯を送る選択ができるよう社会福祉がサポートできるよう施策やサービスがもつ良好な機能を生かすためのたゆまぬ努力をしていかなければならない。ソーシャルワーカーのそのような活動が、担当する地域だけにとどまらず、ひいては社会全体を幸せにすることに繋がっていくからである。

目下、現代の日本においては少子高齢化が進み、自治体単位での地域包括ケアシステムを形成して病院や施設ではなく、住み慣れた地域や在宅での看取りを目指してケアしていく方向性にシフトしている。

今後特に解決すべき高齢者福祉の課題とは?

その実現に対して、特に医療介護の面で、今後の高齢者福祉における課題は山積されていると考えられる。

まずは、健康な全身状態を維持するための口腔ケア・排泄ケアである。医科歯科連携が進んでいる地域においては、医師と歯科医が緊密に連携できるよう市町村単位で連携スキームが整えられ、口腔ケアの重要性と在宅での訪問診療ケアを勧めている。食べる、という行為は非常に重要であり、食べられない口内環境は拒食や拒薬を招き、全身状態悪化を促進させてしまい、QOLの低下につながる。住み慣れた地域で元気に暮らすためには、自分の歯で食べる喜びを長く維持してあげられるケアが必要である。

また、排泄ケアも同様に重要である。介護者が適切なケアがしてあげられないと、湿気がこもり湿疹や褥そうができ、QOLは著しく低下する。介護負担も大きいことから、薬剤の見直しを含めたオーダーメイドのケアが必要である。この点で精通している医療従事者と介護職員はまだまだ足りないといわれている。

最後に、増える認知症に対する正しい理解とケアの浸透である。認知症は進行するとうつ病や統合失調症と鑑別がしづらく、ご本人とコミュニケーションが取れないことに対して苛立ち、対応を間違えてしまいがちである。このすれ違いにより、ご自宅での介護で問題が発生し、介護負担の増大と介護対象の高齢者の異常行動に拍車がかかり、手に負えなくなるケースが散見される。近時記憶障害のために同じことを聞いてきたり、不安感から物盗られ妄想を呈して介護者に怒りをぶつけるなど、正しい知識がなければ困惑する場面に多数出くわすこととなる。このことに対して怒り返してしまうと、本人は近時記憶としては忘れても、怒りをぶつけられた感情は覚えていて、本来助けてくれている介護者に対して敵対心をもってしまうという悲しい結果になってしまう。

認知症は、終末期ケアにおいても、しばしば看取りがご家族に委ねられ、病院と自宅とで揺れ動くご家族の気持ちに寄り添い、ケアしていく必要がある。夜間の呼び出しや信頼関係構築など、ソーシャルワーカーにとってハードな調整を求められる重要な課題である。