【仕事】製薬業界(MR)から異業種へ転職したい人への注意点

国内MR数 1年で2300人超減少 新型コロナの影響はこれから ミクス調査 

中堅企業の人事担当者からは、「今回回答したMR数に新型コロナの影響は入っていない。MRの存在意義が問われており、今後の数は読めない」との声が寄せられた。新型コロナウイルスの感染拡大防止に向けて、デジタルによる情報活動は増加し、MRの医療機関への訪問回数は減少すると見る向きは多い。MRの役割や活動がポストコロナに再定義されたとき、業界のMRの規模もみえてきそうだ。

 

こんな記事に不安になったり、いつまでも在宅勤務で医療機関への訪問ができずに歯ぎしりしているMRは全国にたくさんいそうだ。

特に若い20~30代の世代は、「このままこの業界にいていいのだろうか?」「このままいつまでも外に出られずに気がついたら転職できない年齢になりリストラされるのでは?」と将来が不安になっているかもしれない。

国内の大手製薬企業にストレートで受かってくるような人だから、それなりの学歴で、自分自身をそれなりに優秀と思っているだろう。

しかし、人材としての市場価値があるかどうかは別問題だということと、現状の有難みを理解していないと、決断を急いで悔いを残すことになると思う。

異業種から製薬業界に転職してきた身として、業界の特殊性から転職を考える上での注意点をいくつか紹介したい。

 

①見積書や請求書を取り扱っていない異質さを自覚しよう

MRを一生懸命やってきたひとほど、「私は今まで『営業』の経験を積んできました!」という自負があるだろう。

しかし、実際はMRは営業をしているとはいいがたい。

やっていることは、情報提供。それだけだ。

見積を出し、納品し、請求書を渡しているのは卸のMSだ。私たちは医薬品卸に購入していただいて売上をあげているわけで、実際金品をやり取りしているのは卸だけだ。

特約店担当者だけが、会社の窓口として自社製品に関する生々しいお金の取引をしている。

実際、営業として異業種で働く場合、交渉がどれだけ上手で論理的で話術が巧みであっても、見積の出し方や他社との駆け引きによっていくらでも覆る。

決裁権が誰にあるか、顧客の部門予算は何月〆なのか、会社の体力を考えると何%まで値引き可能なのか。

社外だけでなく社内と常に交渉しなくてはならない。社内が動かないから、という言い訳は通用しない。結局顧客のニーズに合致する金額を社内から引き出せなければ他社に負けるし、いくら動いても売り上げが無くては利益が生まれない。

営業活動も、活動効率を考えなくては、粗利益からどんどん経費が引かれて純利益がなくなっていく。そうした経営者的な感覚で利益を生み出すべく動くことができる人間が、「営業」と名乗っている。

社用車が与えられて、ガソリン代を湯水のごとく出してもらえて、1日得意先を訪問しただけで「日当」という名目で非課税の2000円相当の経費がもらえる会社など、製薬会社以外ありはしない。そうした経費を勘案する必要のない恵まれた職場環境だったという異質さを認識しておくべきである。

 

②営業は売る方法や手段を自分で考える世界だと知ろう

製薬会社が恵まれているのは、発表用のスライドや宣伝資材がすでに完璧に用意されていることだ。

異業種から来た私としては中身をいじることができない、というのは逆に縛りがきつくて窮屈に感じてきたので、その面ではある程度営業活動に自由が利くことにMRはある程度喜びを感じるに違いない。

しかし、自由には責任がつきまとう。

どこかが責任をもってつくってくれていた資材を使うのとは違い、自分でつくり、会社に確認して、会社から了解をもらうという工程を踏まなくてはならなくなる。

実は自分が使う武器をいつも他の部署にアウトソーシングしていたということに気づくだろう。

そして、そうやって作ってもらっているものに文句を言ってばかりで、自分の責任でつくって実績を生み出したことが無いことに気づくだろう。

 

売る方法についても同様である。

マーケティングの部門がボストンコンサルティングやマッキンゼーに高いお金を払って市場分析してくれて、オピニオンリーダーにヒアリングまでして、「こうすれば売れるのではないか」という仮説を立てて、会社として推奨してくれるのは、製薬会社がリッチであることを象徴している。(だいたいその仮説が的外れなので、いつもがっかりするが。)

よくある一般的な企業には高いコンサル料を払う体力はないので、自分で売る方法を考えなくてはならない。

今まで売れなかったものを売る手法を独自に考えることは、誰も正解を知らないのでトライ&エラーの連続だ。失敗の責任はマーケティング部門のせいにはできない。売上の責任はすべて自分にかかる。

月末や年度末に薬剤部にお願いすれば買ってくれることなど無い。あんなのは粉飾決算である。返品ありきで購入してもらうなど、他の業界ではまずありえない。

本当の営業職は会社から言われたことをやっていれば給料をもらえるわけではない、ということに気づかされるだろう。

 

③福利厚生や年収は今よりダウンすることを覚悟しよう

正直、この仕事量でこんなに給料をもらえる仕事は他にはないだろう。

こんな楽な仕事はないと思う。めっちゃ楽だよMR。

接待やイベントへの参加が難しくなってきた今、ほとんどのMRは、毎日数軒の得意先を訪問するかWEB面談をしたりして、海外の論文をいくつか読み、英語の勉強でも隙間時間にしつつ、夕方になったら日報を提出して業務終了するような生活ではないだろうか。

営業は、粗利益で3人分の年収を稼ぐくらいで、一人前だと言われている。

そして粗利率は業界によって大きく異なるものの、数百万の取引では約15~20%程度。

つまり、今の年収を3倍して、その5倍の金額を年間で売り上げることができるかどうか、というイメージである。

例えば年収600万くらいだとすると、転職先の製品を約一億売ることができなくてはならない。その実力があるということを証明できる経歴だろうか。今のビジネスのノウハウで本当にそれだけの売上を達成できるだろうか。面接において、転職希望先の採用担当者を納得させられるキャリアのプレゼンができるだろうか。

考えてみてほしい。そういう視点で自身のキャリアを振り返ってみることがとても重要だ。

医薬品というのは、日常的に処方される。定期的に売れることが当たり前だ。

だから、今MRをしていて、毎日数十万売れていくのは当たり前だと思いがちだが、製薬業界の特殊性はここにもある。

一度処方を決めたらしばらくは毎日飲んだり定期的に投与したりする医薬品のような製品は、ベースの売上を構築しやすく、ビジネスモデルとしてはとても優れている。

そうした売上システムのサービスは、異業種だと携帯電話キャリアの定期契約だったり、機器のリース契約やレンタル契約に近い。いわゆる『定額制ビジネス』だが、これはとてもうまみのある、安定して収益が上がる構造なのだ。

しかし、物販だったり工事契約だったりすると、受注して支払いを確認したら、次をまた一から探さなくてはならない。商売の匂いを嗅ぎつけてあの手この手で群がる営業のなかで、コンペを勝ち抜き、高い勝率を保ち続けなくてはならない。

今日売れても明日売れる保証はないのがデフォルト。

そして、売れなければ居場所はない。

 

それに、製薬会社は、これから転職する会社より「法定外福利厚生」が充実している傾向にあると考えておいたほうがいい。

信じられないかもしれないが、企業型確定拠出年金(DC)すらない会社もある。家賃補助や交通費・家族手当などは無くなることを覚悟したほうがいい。というか、MRはかなり恵まれていて、ぬるま湯だったということを自覚すべきだと思う。

 

 

まとめ:安易にMRから異業種への転職を考えると痛い目に遭う

なんとなく、今まで積もり積もってきた愚痴というか鬱憤を吐き出しただけのような文章になってしまったが、感覚としては間違いないと感じる。

ずっと業界に違和感を感じてきた。

「世の中の仕事はMRよりもっと楽なもんだ」と思っている社員が、多いこと多いこと。

MRのほうが楽だから!こんなに給料もらえること自体がおかしいから!

と声を大にして言いたい。

 

現状に不満があるから異業種に転職したい?このコロナ禍で?

世の中を舐めるのもたいがいにしたほうがいいよ。

MRの経験だけで雇ってくれる一般企業なんて、今はほとんどないよ。

金銭感覚まずおかしいから。1個2000円とか3000円の弁当提供するのが当たり前の業種なんてありえないから。そんなふうに経費使ってサービスするときなんて、受注が確定した時だけだから!笑

そんな弁当をもらっておいて味に文句を言う取引先もあるので、たまげたが。そうした一部の医療関係者の金銭感覚に業界全体が引っ張られてきたというのもあるんだろうけど、浮世離れしていることを自覚しないと、本当に転職してから後悔すると思う。

そして、今は諸先輩方がやってきたような弁当や謝礼で釣る関わり方はもうできなくなっている。正直、やっていることは大したことがなくなってきた人が多いと思う。本当に存在意義が問われている。今、MRのままで自分のスタイルを改革するくらいの気概がないと、結局どの業種でも生きていけない、ジョブホッパーになってしまう瀬戸際にいると思ったほうがいい。

「そんなことはない、自分たちは医者と渡り歩いてきた経験があるし、薬学部を出るくらいには勉強もできたし、世の中のある程度の人間より優れているはずだ」と思うだろう。

ところがどっこい、お勉強ができてテストで点が取れて世の中に優秀な人材として求められるのは、「新卒というスペシャルカードがあるときだけ」なのだ。

勉強ができてもテストで点が取れてもたくさん暗記ができても、営業で生きていくからには今までとは違うサービスを生み出すクリエイティビティが必要不可欠だ。暗記や計算はもはやCPUのほうが早くて正確だ。そういうのは求められていない。

MRが本来強みとしていて、大切にしていたのに無くしてしまったものが、もっとも重要なものだったのだ。それは顧客のニーズととことん向き合い傾聴し、他の営業よりも早く、質の高い提案をもっていくということだ。以前は接待という名の深い付き合いのなかで信頼関係を構築し、先生方の右腕として陰ながら活躍してきたのが、MRだったんだろうと思う。

そうしたつながりは希薄になってしまったが、だからこそ今のこの難しい状況で転職に逃げずに創意工夫することにチャレンジできないMRが、他の業界に移って「優秀でデキる営業として即活躍できる」とは、私には思えないのだ。

 

現代のMRの強みとして、①論理的思考能力、②社内外で嫌われないための責任回避・危機回避能力、③英語力(海外文献を読み込み日常的に英会話を勉強しているMRのみ)④自動車運転の慣れ、が挙げられると思う。正直これだけってのはかなり心もとない。

もし今のこの強みしかない状態で転職するとしたら、同じ製薬業界内にしたほうがいいような気がする。

MR経験を活かしてオーファンドラッグベンチャーのMRに転職するとか、薬学知識と英語力を生かしてMA(メディカルアフェアーズ)やMSL(メディカル・サイエンス・リエゾン)として専門性をとがらせるほうがよっぽど現実的だと思う。地域包括ケアシステム構築のために必要不可欠なかかりつけ薬剤師として、患者さんに選ばれる地域の頼れる薬剤師を目指すのも素晴らしいことだと思う。

もしMRから異業種への転職を逃げ道に考えてフワフワしているとしたら、ちゃんと現実を見たほうがいい。

このままだと、多くの製薬会社の人間がどこにも行けない。

そうしたことは転職エージェントは商売をみすみす逃すことになるから言わないだろうし、面接でも直接教えてくれることはないだろうから、老婆心ながらちょっと書いてみた。

 

いずれにせよ、ここだけの話だが、製薬業界自体、もうかなり腐っている。

元々腐っていたが、もう回復の見込みがないほどの腐りっぷりだ。

このコロナ禍で、本当にはっきりした。絶望しかない。

今回のmRNAワクチンを世に出してしまったたことで、もはや後戻りできない一線を越えてしまった。これを理解していない人は多いが、もう決定的に道を誤った。

私は、もう製薬業界は終わったと思う。

これから就職する人は、絶対にやめておいたほうがいい業界である。

MRとして、製薬会社の人間として、生き残ろうというのはもうすでに破滅の一途をたどる道となった。未来はない。

そりゃ今の居場所に旨味はあるので、居れるだけはいるけど、絶対に長続きしないだろうから、泥船が沈む前に撤収するだろう。

そのために私は次に繋がるように働いているし、並行して勉強し他の業界で生き抜けるように工夫している。

だって、毒を売る会社が長続きするわけないじゃない。信用されるわけないじゃない。そんな会社に入りたい人が今後現れるわけないじゃない。

メガファーマのFとか、MとかTとかAとかは、遅かれ早かれ薬害訴訟だらけになると思う。

そして、誰も信用しなくなるだろう。『バイオハザード』シリーズのアンブレラ社のように。

もう、この業界からは、いつ足を洗うかというステージに来ている。時間は既に、ほとんど残されていない。

 

 

許しがたい罪は、いつの時代も、いつか贖われる運命にある。

人を殺めた大きな隠し事は、いつか白日の下にさらされ裁かれる運命にある。

オオカミ少年が、自分の嘘で己を追い詰めた。身から出た錆。

コントロールを手放せないACは、いつか底つきをする。

どうにもならなかったことを認めざるを得なくなる。

それは、必ず訪れる。

 

「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす。おごれる人も久しからず、ただ春の夜の夢のごとし。たけき者も遂にはほろびぬ、ひとへに風の前の塵に同じ。」

現代語訳:祇園精舎の鐘の音は、諸行無常の響きがある。沙羅双樹の花の色は、盛んな者も必ず衰えるという物事の道理を示している。おごり高ぶっている人(の栄華)も長く続くものではなく、まるで(覚めやすいと言われている)春の夜の夢のようである。勢いが盛んな者も結局は滅亡してしまう、まったく風の前の塵と同じである。

引用:平家物語『祇園精舎・冒頭』

 

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です