こんにちは、 ちあき です。
「飲んだ次の日はしじみの味噌汁だよね」
「しじみ汁飲んでおけば翌日すごく楽だわ」
しじみに含まれているオルニチン。これが肝臓の働きを助ける、ということは、一般的によく知られている概念だと思います。
でも、じゃあなんでオルニチンがお酒を飲んだときに効果があるのか?ということは意外に知られていません。
私も「あれ?なんでだっけ?」とわからなくなってしまったので、調べてみました。
脳に悪影響を及ぼすアンモニアを無害化する「オルニチン回路」
肝臓には、有害なアンモニアを尿素に変えて解毒を行う「オルニチン回路(別名:尿素回路)」というものが存在します。
オルニチンは、この回路においてアンモニアと結合し、有害なアンモニアを無害な尿素に分解する中間体として重要な役割を果たしています。
なぜアンモニアを解毒しないといけないのか?を一言でいえば、アンモニアが脳にあると、最悪脳細胞が死んでしまうからです。
脳では、アンモニアをGDH(グルタミン酸脱水素酵素)によって、α-ケトグルタル酸と結合させ、グルタミン酸を生成してアンモニアの無毒化処理が行われるのですが、この無害化によりα-ケトグルタル酸が消費されて減少します。
更にオキサロ酢酸も減少することで、エネルギー産生で不可欠なTCA回路によるNADH生成や、呼吸鎖によるATP生成が停止してしまいます。
思考力の低下、運動機能・体反射の低下や麻痺、おぼろげな記憶・記憶の欠落や記憶喪失、幻覚・幻聴、視力の低下、眠気、脱力感等が起きます。
このように、アンモニアは修復不可能な脳の神経細胞障害を起こし、最後には脳細胞を死滅させます。
だから、アンモニアを尿素に変えて無害化しないといけません。
オルニチン回路(尿素回路)の回転はなくてはならないものです。
「NADH」が増えすぎて脳に栄養(グルコース)がいかなくなるから飲むとしんどくなる
上述したオルニチン回路と連動する回路に、TCA回路(クエン酸回路)という回路があります。
どこで連動しているのか?
このTCA回路においてアミノ酸をエネルギーに変えるとき、アンモニアが発生するからです。この発生したアンモニアを、先ほどのオルニチン回路で無害化しているのです。
オルニチン回路が順調に回転することで、TCA回路も順調に回転することができるようになります。
つまり、2つの回路は表裏一体なのです。
では、TCA回路とはなんなのでしょうか?
TCA回路は、糖質・脂質・タンパク質から返還されたアセチル-CoAを取り込むことからスタートする、生物がエネルギーを生産する上で最も重要な回路です。
そのアセチル-CoAが酸化されピルビン酸になる過程で「NADH(還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)」が生成され、最終的にエネルギーの通貨であるATPを合成する原料になります。
ここで、アルコールの代謝過程を振り返ってみましょう。
アルコールは、
アルコール→アセトアルデヒド→酢酸・二酸化炭素・水
という順に無害化されるわけですが、
アルコールからアセトアルデヒドに分解してくれるのがADH(アルコール脱水素酵素)、
アセトアルデヒドを酢酸・二酸化炭素・水に分解してくれるのが、ALDH(アセトアルデヒド脱水素酵素)です。
この2段階のいずれの分解過程においてもNADHが産生されます。
つまり、アルコールを摂取しても、このNADHという物質が増加するわけですが、
このNADHが過剰状態になると、アセチル-CoAがピルビン酸になれず、結果的にオキサロ酢酸が減少してしまいます。
このピルビン酸とオキサロ酢酸の2つが減少してしまうと、肝臓でグルコースが作れなくなります。
グルコースを作るこの肝臓の働きを「糖新生」といいますが、この糖新生が抑制されてしまうことで、糖以外の物質からグルコースをつくることができなくなります。
脳は、グルコースを重要な栄養源にしています。
つまり、グルコースが足りなくなってしまうと、脳が栄養不足に陥ってしまうのです。
しじみを摂取することでオルニチンを補充すると、オルニチン回路の働きが促進され、アンモニア解毒がスムーズに進み、結果的にTCA回路を促進することでNADHを消費させることに繋がります。
したがって、脳のエネルギーをつくり出すための阻害要因となってしまっていたNADHを正常化できると考えられています。
日常的に酒を飲みすぎると脂肪が増えるメカニズム
このアルコール代謝には、ADHやALDHだけでなく、補酵素(NAD+、CoA)がそれぞれ必要ですが、飲酒中の肝細胞内のミトコンドリアでは、この補酵素の取り合いになってしまいます。
油に含まれる脂肪酸からエネルギーを生み出す(脂肪を燃焼する)ことを、「脂肪酸のβ酸化」といいますが、実は、この脂肪燃焼にも補酵素(NAD+、CoA)が必要なのです。
脂肪を燃焼できないでいると、肝臓内に脂肪が貯まりやすくなります。
そうすると、脂肪肝になってしまったり、中性脂肪としてトリグリセリド(TG)が血中に大量に漂い、高脂血症になってしまってしまうのです。
中性脂肪(TG)が血中にたくさんあると、細胞に取り込まれて脂肪として蓄えようとします。
筋肉に脂肪が取り込まれて、霜降り肉のような状態になり、体脂肪率と体重が増え、どんどん太ってしまう、というわけです。
おまけ:アルコール依存症患者が断酒後になぜか酢が欲しくなる理由
アルコールばかり摂取していて食事をとっていない状態のとき、いわゆる「連続飲酒状態」に入っていると、糖質も脂質もタンパク質も欠乏します。
脳がエネルギーにできるのは、糖(グルコース)と脂質と酢酸ですが、「連続飲酒状態」では脳に供給されるエネルギーは、唯一、アルコールを分解した結果産生される「酢酸」のみになります。
すなわち、こうした状況に陥ったことのある脳は、酢酸でエネルギーをえることに慣れてしまいます。
だから、アルコールを摂取しないようになると、酢酸が欠乏したと思い、アルコール依存症者の脳は酢を飲みたいと錯覚するのです。
オルニチンをとっていても、体に負担がかかるのに変わりない
オルニチンはオルニチン回路を促進するかもしれませんが、実際に毒であるアルコールを処理する仕事量は変わらず、解毒する肝臓の負担自体は変わらりません。
摂取したアルコールの量に応じて、アセトアルデヒドが発生するしアンモニアを発生しますから、代謝はできても、仕事の量は実質増えているわけですので、肝臓は疲れます。
だから、お酒を飲み過ぎたからといって、いくらしじみ汁を飲んだとしても、チャラになるわけではない、ということはよく認識しておくべき事実です。
そもそも、毒となるアルコールを摂取しなければオルニチンを摂取する必要はありません。
アルコールを摂取しなければ、オルニチン回路が障害されることもなく、TCA回路が障害されることもないからです。
毒で犯された体ができるだけ通常通り動くように一時的にドーピングする手段に過ぎないのです。
しかしながら世の中のサラリーマンはウコンやオルニチンのサプリを飲んでドーピングしてまで、連日飲み会に繰り出します。
この日本の文化というか、ドーピングしてまで酒を飲むのが一般的なのも、いかがなものかな?と個人的には思います。
それだけ、体に良くないことをしなくては紛れないストレスを抱える社会構造だという逆説的証明なのかもしれません。
「オルニチンを摂取しているから深酒をしてもいい」と安易に考えていると、いずれ肝臓が悲鳴をあげることになります。
できればサプリに頼らず、適量で飲めているうちに飲酒量を減らすのが、最も賢い選択だといえます。
そのことを身をもって体験し、一番よく知っているのが、我々アルコール依存症者なのかもしれないですね。笑
では、また!