【社会福祉士】集団を活用した援助(グループワーク)の展開過程

グループワークの展開過程は、シュワルツが相互作用モデルのなかで提示した援助過程である4つの過程(準備期、開始期、作業期、終結・移行期)に沿って述べることができる。

 

準備期

準備期は、グループでの取り組みを始める前段階である。

援助者の役割は、グループ計画を立案し、グループワークの環境を整えるという役割である。グループワークのニーズ・目的・プログラムの内容・組織運営方法・メンバーの募集など、骨子を決める。

関連する組織にサポート要請をし、組織の内外に協力体制を構築する。継続的な運営に先立ち、事前に活動資金、備品、人材、施設や機関(場所)、情報といった社会的資源の確認をしておくべきである。

作業課題として、予備的感情移入が必要である。できる限りメンバーのおかれている状況やニーズや学術的知識をインプットしたうえで、グループワークの場面で表面化するかもしれない場面、メンバーの思いや感情(期待・不安など)を想像して波長合わせができる準備をしておかなくては、グループが混乱に陥る可能性が高いからである。

 

開始期

開始期は、メンバーたちが初めて出会い、グループとして動き始めるまでを指す。

援助者の役割は、メンバーとワーカーの間に援助関係を樹立すること、ワーカーはあくまで側面的に支援する存在であり問題解決の主体はメンバーであること、を双方向の話し合いにより共通認識とすることである。

作業課題として、メンバーの不安を払拭すべく、相互にコミュニケートすることである。グループ活動の枠組みや今後の方針などを丁寧に説明し、具体的な見通しと役割分担を明確に共有するよう心を配る必要がある。

 

作業期

作業期は、メンバーとグループが協力して取り組み、目標達成に向かって明確な成果を出すよう生み出すように進めていく段階である。

援助者の役割は、本格的なグループづくり、相互援助システムの形成と活用をサポートすることである。

援助者として本格的な働きかけの始まりとなる。リーダーを選び、ルールを決め、メンバーの役割を決める。こうした働きかけにより、グループに共通の目的意識が芽生えるのを助ける。また、メンバー同士が関係を広げながら相互に尊重しあい影響しあいお互いを受容しあいながら共鳴していく場づくりを媒介者として調整する役割を担っている。

こうした人間関係の化学反応が積み重なり、最終的に相互援助システムとして確立する。

個々のメンバーの課題に対してメンバー同士がお互いに気づきを得て、問題解決に貢献できるようになっていくと最終段階に到達したと言える。

作業課題として、メンバーの距離感や位置づけについてあくまであるがままに任せ、意図的に手を加えないように注意することが挙げられる。コミュニケートするメンバーの固定化やサブグループの存在を否定したり排除したりするのではなく、肯定的にとらえ、活かしていくことが求められる。

 

終結・移行期

終結・移行期とは、グループ終結の作業を進め、メンバーが次の段階に移行できるように援助する段階で、ワーカーはメンバーとともにこのグループワークで得られた成果や個々の変化について振り返り評価する。

グループワークが終結する条件はいくつかあるが、目的達成後存在理由がなくなった場合、当初の運営計画通りに運営が困難になった場合、メンバーの目標が一致せず効果が期待できなくなった場合、の3つが代表的である。

援助者の役割として、メンバーに前もって計画的な終結の予定を適切な時期に適切な方法で伝え、メンバー自身が終結に向けて問題解決への取り組みを含め納得感をもってゴールに迎えるようサポートすることである。メンバーがグループに対して愛着や執着を持っていればいるほど、喪失感による拒否や否定や悲嘆が発生する。この際、ワーカー自身の心情を含めて、複雑な感情をメンバーと分かち合い、ワーカーとしてそれぞれの想いを受容することが大切である。また、ソーシャルワーカーの倫理綱領にもあるように、グループワークが終了しても知り得た個人情報については取り扱いに充分注意しなくてはならない。

 

たとえば、依存症の「自助グループ」

集団を活用した援助(グループワーク)に、依存症患者の集まりである自助グループが挙げられる。

集団がもつ力を引き起こす相互作用を最も感じる集団援助の一つである。社会的に偏見が根強いため、「依存症」に悩む本人も家族も問題を抱え込んでしまい孤独感が強い傾向がある。

そうした孤立しがちな依存症に悩む者同士を結びつけることにより、心を頑なに閉ざしているメンバーでも、お互いに理解者を得られて「自分たちは孤独ではない」という安心感と癒しを感じることができる。

お互いの経験を正直に話し、ただ傾聴するというグループワークを繰り返し体験するというメンバー同士の化学反応の力は大きい。

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