こんにちは、 ちあき です。
私は発達障害があり、「ADHD寄りのASD」です。
発達障害と障害扱いされていますが、普通の脳と少し違うだけで、個性の一つだと思います。
なんでも「普通」から外れていたら「障害」にして治療対象にしてしまう文化に対しては、
いかがなものかと思いますが…。それは置いておいて、
ASDの特徴とアルコール依存症との関連について話してみたいと思います。
ASDの診断と具体的な特徴
最新のガイドラインであるDSM-5において、自閉症スペクトラム(ASD:Autism Spectrum Disorder)は、以下のA,B,C,Dを満たしていることが、診断基準になります。
A:社会的コミュニケーションおよび相互関係における持続的障害(以下の3点で示される)
1.社会的・情緒的な相互関係の障害。
2.他者との交流に用いられる非言語的コミュニケーション(ノンバーバル・コミュニケーション)の障害。
3.年齢相応の対人関係性の発達や維持の障害。
B:限定された反復する様式の行動、興味、活動(以下の2点以上の特徴で示される)
1.常同的で反復的な運動動作や物体の使用、あるいは話し方。
2.同一性へのこだわり、日常動作への融通の効かない執着、言語・非言語上の儀式的な行動パターン。
3.集中度・焦点づけが異常に強くて限定的であり、固定された興味がある。
4.感覚入力に対する敏感性あるいは鈍感性、あるいは感覚に関する環境に対する普通以上の関心。
C:症状は発達早期の段階で必ず出現するが、後になって明らかになるものもある。
D:症状は社会や職業その他の重要な機能に重大な障害を引き起こしている。
最新のガイドラインでは、自閉症は幼児期に特有ではなく、どの年齢でも発症すること(発見されること)のある発達障害として定義し直されています。
1.社会的コミュニケーションおよび相互的関係性における持続的障害。
2.興味関心の限定および反復的なこだわり行動・常同行動
つまり、具体的にはこんな人です。
・あいまいな指示を理解できず、文字通りに解釈するため、冗談やお世辞、皮肉が通じない。
・同じ発音の単語のうちどれが正解か、話の文脈から判断することができず、すぐに理解できない。
・「なんでもいいから今やりたいことは?」というような漠然とした質問で固まる。
・他人を傷つけることを平気で言ってしまう。
・名前を呼ばれないと自分のことを言われているのに気がつかない。
・カッとなりやすく、些細なことで争いになる。
・白黒はっきりつけたがる。
・暗黙のルールや常識が分からない。
・一度に二つのことは出来ない。
・先の見えないことには、とても不安になりやすい。
・興味の無いことは、極端に出来ない。
・初めて取り組むことやステップを知らないことについては、指示が無いと動けない。
・夢中になると「ストップ」がきかない。
・・・なんだか書いていて悲しくなってきますが、太字が特に私に当てはまるところです。
「こんなの扱いづらいイタイやつなだけじゃん」
「使えないやつなのを障害で言い訳すんなよな」
などという心無い言葉に何度心を折られたことでしょう。笑
ASDが陥る2次障害としてのアルコール依存症
親にも「いうことを聞きなさい」と言われ、
友達にも「お前空気読めよ」と言われ、
家庭・学校・職場など、あらゆるところで責められ仲間外れにされる発達障害。
誰にもこの発達障害を理解してもらえないで生きてきたASDが多いことでしょう。
そんなASDによる社外不適合は、うつや不安障害などの2次障害の原因になっているといわれています。
その一つに、依存症(アディクション)があります。
アルコールに限らず、ギャンブル・薬物・タバコ・ゲーム・ネット・SNSなどが依存症の対象になります。
アルコール依存症者においては、自閉性傾向を示す者の出現頻度が高いことが推測されています。
また,自閉性傾向群の生活面においては,非自閉性傾向群との有意な差はみられないものの,推測通り,幼少期から青年期に対人関係の難しさや社会的・職業上の問題を抱えている者が多いという結果だったそうです。
これは,自閉症スペクトラム障害の特性であるこだわりの強さと飲酒行動が結びついたことにより,アルコール依存症の発症につながったと考えられています。
また,自閉症スペクトラム障害から生じる抑うつ状態や不安感等の二次障害に対して,一時的な消失・抑制をするための自己治療薬としての飲酒が、結果として、二次障害をまぎらわすための併存障害である“アルコール依存症”として診断された可能性も考えられます。
参考文献: アルコール依存症における自閉性傾向の検討~自閉症スペクトラム指数(AQ)を用いた調査から~ 片桐千恵1), 宮崎恵1), 大庭佐知子2), 岩田こころ1), 山本哲也1), 三好弘之2), 河口剛1), 小杉好弘1) 1)医療法人弘心会小杉クリニック本院, 2)医療法人弘心会小杉記念病院 日本アルコール関連問題学会雑誌 13(): 131-135, 2011.
しかし、ASDとアルコール依存症の併存率に関するエビデンスは少なく、また、ASDと非ASDを比較して知能・遂行機能・動機付けの能力に優位差はなかったとしている論文もあります。
発達障害でも、アルコール依存はADHDで併存しやすい
国外の複数の研究で、アルコール使用障害患者におけるADHD併存率は、20~30%とされています。
国内では、鈴木らが男性アルコール使用障害患者に対するADHD(DSM』の診断基準を利用)の併存率は、20~30歳の若年群では19%、40~60歳の中年群では3%であったと報告しています。
ASDについてはアルコール使用障害患者における併存率に言及した文献は乏しく、Santoshらは小児期に広汎性発達障害と診断されていた患者は薬物/アルコール使用障害の発症リスクが健常成人より低く、発症したケースはすべてADHDが併存していたとしています。
ADHD特性が強い患者は治療継続率が低い傾向にあります。
また、固まった枠組みのなかに留まることができずに治療者、他患者とぶつかることも多いそうです。
この文献では、面白いことに、同じ発達障害でも「ASD特性はアルコール関連問題からの回復促進因子ともなりうる」と言われています。
初診から2年以上経過が追えているアルコール使用障害患者を対象にした河本らによる調査では、自閉症スペクトラム指数(AQ)のスコアが高い、つまりASD特性がより高い患者群において、断酒継続率が高かったそうです。
河本は同文献のなかで「強迫性」、「固執傾向」といったASD特性が、断酒継続に必要な自助グループへの定期的、ときには強迫的な参加、単調な生活の繰り返しの原動力になると考察しています。
参考文献: [2] アルコール使用障害と発達障害 宋龍平, 角南隆史 地方独立行政法人岡山県精神科医療センターFrontiers in Alcoholism 4(1): 25-30, 2016.
発達障害を知ることは、断酒継続のために自分を知ること
私は、「ADHD寄りのASD」なので、ADHDの要素(興味や考えが飛びやすく、会議のように一ヶ所にジッとして落ち着いていることが難しかったりする)もあります。
しかし、基本的にはASDであるため、「理論と科学的根拠に固執し、誰も信じず、かつ常に正しくあろうとする強迫性」をもっています。
その性質が、ストレスの原因になっているのと同時に、断酒継続の原動力となっているのだと思います。
この性質を知ること自体が、断酒を継続するために重要な「己を知る」というステップを踏むために重要です。生きづらさを感じている場合、もしかするとADHD・ASDにあてはまるのかもしれません。
しかし、障害が有る無しをうまくできない理由=「言い訳」にするというよりも、特性を知り、再飲酒(スリップ)を回避したり、生きる上でのストレスを減らすためにこの障害の知識を生かすべきである、と思います。
実際、私はこの診断が下ってから発達障害について本を読んだり先生に聞いたり文献を取り寄せて読んだりして、対処の仕方を適切にカスタマイズすることができたと思います。
そうした経験から、今回は発達障害、特にASDとアルコール依存症について書いてみました。
次回は、もう少しADHDについても文献を読んで勉強してから書いてみたいと思います。
では、また!