【依存症】心療内科医に「依存症であることは恥ずかしい」と言われた話

今日は悲しいことがあったので、落ち込んでいます。

私は精神科や心療内科の医療機関に訪問することを仕事にしています。いわゆる医療関係の営業なのですが、先生は本当に様々な人がいて、やはり医師という素晴らしい仕事をしていると言えども、根本的にみんな人間なんだなとつくづく思っています。

なので、精神科・心療内科を標榜していても、依存症のことを本当に正しく知っているかどうかは別問題なのです。

実際にあった哀しい話 ~ある心療内科医との会話~

私は社会福祉士国家試験に合格し、社会福祉士としても活動を始めました。

とてもかわいい名刺をつくってもらい、今日は先生にはじめて渡した日でした。

名刺の裏には「アルコール依存症、ASD・ADHD発達障害当事者」と書いてあり、私の簡単な経歴や、立ち上げた依存症者の権利保護団体『Save Addict』のサイトQRコードが載っています。

とても気に入っていたので、「いいねーかわいいねーこれ」みたいな話題で盛り上がるかと思っていましたが、先生の反応に衝撃を受けました。

先生「アルコール依存症って、、アル中なの?君」

私 「はい、そうです。」

先生「やばいじゃん」

私 「wwやばいやつなんですよーw」

先生「当事者って、、名刺に書く?」

私 「え?」

先生「だって名刺にこんなこと書いたら恥ずかしいでしょ」

私 「」

私はこういう反応が返ってくるとは思っていなかったので、面食らってしまいました。

恥ずかしい?

私の病気が?

私のお気に入りの名刺が?

なぜ??

しばらく???が頭のなかで飛び交っていました。

そしてようやく理解しました。

ああ、この先生は「依存症という病気は恥ずかしい病気だ」と思っているのか。

私は深呼吸して落ち着いて返事しました。

私 「いいえ、私は発達障害も依存症も恥ずかしいとは思ってないですから」

先生はもうこの話題には触れたくないとでも言いたげに、はいはいと話を終えようとしました。

私ももうこれ以上この人と依存症の話をしてもまだ理解できないだろう、と思い、話を切り上げました。

とても悲しい気持ちで、クリニックを後にしました。

依存症は恥ずかしい病気なのか?

この先生はもう70を迎えるお年を召された先生なので、価値観としてはアップデートされていない年齢層だったかもしれません。

依存症のイメージも、「アル中」という単語を出すくらいなので、だらしない人がなる病気だぐらいの認識だったのでしょう。

心療内科を標榜している医師ですら、このようなお粗末な認識の人もいるのです。

精神科・心療内科だから、メンタルの関連疾患をすべて把握しているとはとても言えないのが、この日本の現状です。

依存症は特に治療しても寛解する確率が低く、関わる人が疲弊しやすいため、みんなやりたがりません。依存症専門医療機関に紹介して終わりです。

しかし、治療が難しいこと、命に関わる重大な病気であることには頷けますが、今日先生がおっしゃった「恥ずかしい」という表現に私は激怒しています。

依存症は決して恥ずかしい病気ではありません。

誰もがなりえる、生活習慣病と言っても過言ではないほど身近な病気です。

日本社会はことお酒に関して寛容です。問題が起こっていても見て見ない振りをしたり問題を軽く見たりするくせに、かばいきれなくなると途端に「自己責任」と本人の人格を攻撃したり、非難して排除したりする極端さを持った社会、それが日本社会です。

この社会ぐるみでのイネイブリングとスティグマの形成こそが、日本において依存症の早期発見・早期治療を困難にしている大きな要因です。

そしてそれは、今回のケースでは治療する立場である医師にも、残念ながら当てはまると言えるでしょう。

アルコールへの依存は、性別・年齢・性格・能力・社会的地位などに関わりなく起こります。性格の問題ではなく、病気の進行により人間関係や社会関係が破綻していく病気です。

そして、アルコール依存症は回復・社会復帰が可能な病気です。

私を含め、多くの人が回復して心と体の健康を取り戻し、仕事や当事者援助に携わったりして、真剣に生きています。

自分で飲んだのだから本人の責任だ、本人の選択が間違っていたからではないか、という人がいます。

本人の責任はたしかにあるでしょう。

それは糖尿病でも同じことが言えます。本人の生活の仕方に問題があったかもしれません。

インフルエンザや夏風邪でも、そうでしょう。手洗いうがいを怠った責任や、マスクをしなかった責任があるかもしれません。

しかし、糖尿病や風邪が、本人の責任を責めても治らないように、依存症もいくら本人の責任に言及したところで良くはなりません。

うつ・自殺・アルコール依存症の関係

2011年の国内の大規模調査で、40~50代の男性うつ病患者のうち30%以上が「アルコール依存症水準の飲酒」や「問題飲酒」をしていたという結果が出ました。

この調査を行なった松本俊彦医師は次のように述べています。

「この調査は、うつ病とアルコール問題が非常に密接なものであり、ことに中高年男性の場合、精神医療関係者は『うつ病を見たらアルコール問題を疑え』と心得ておく必要があることを示しています。」

引用:ASKアルコール通信講座 追加資料 「うつ」「自殺」とアルコール より

患者が、うつ病への自己治療として、あるいは不眠症の自己治療として、アルコールを乱用し問題を起こしているケースは多い可能性があります。精神科・心療内科の先生方に置かれましては、実臨床では日常的にそうしたケースに本当は出会っているはずです。

それでもそれに気づかない、アルコール依存症を「恥ずかしい」病気と本人を目の前に失笑してしまう。このような理解度では、治療にあたるべき医師が、目の前の患者さんのアルコール依存症に気づけていないのではないだろうか。あるいは他の疾患と正確に鑑別診断ができていないのではないか。それを私はとても危惧しています。

これは、決して看過できる問題ではないように思われます。

なぜなら、海外ではアルコール依存症とうつ病と自殺の密接な関係性について多数の報告があるからです。

○台湾では、自殺しようとした人の44.1%がアルコール使用障害。(Andrew,T.A.等)

○自殺未遂者の46~77%に、飲酒を示すアルコールの血中濃度の上昇が認められた。既遂者では33~59%に認められた。(Hufford,M.R.など)

○全自殺者の約75%が、うつ病か、アルコール使用障害か、その合併例。アルコールや薬物を乱用している人の自殺率は、健康な人の20倍にのぼる。(アメリカの精神科医・カプラン)

引用:ASKアルコール通信講座 追加資料 「うつ」「自殺」とアルコール より

これだけ死に近い病を医療従事者にもかかわらず勉強せずに、患者さんを放っておける理由があるでしょうか。

「恥ずかしいから名刺に書かずに隠しておけ」と言っていい理由があるでしょうか。

私には思い当たりません。

まとめ:メンタルのプロである医師こそ正しい理解と啓発を

依存症に携わっている先生はまだまだ少数で限られていて、うつ病や統合失調症や双極性障害の背景には、アルコール依存症や薬物依存症が隠れているのに、治療に繋がっていないのではないかと感じています。

先生方も飲むのが好きだったりするので、酒好きの先生からすれば、ご自分の趣味を否定されているように感じるかも知れません。そうであれば、依存症の話は聞いていていい気持ちはしないでしょう。否認の病ですから。

緊張をほぐすために自己治療的にお酒を使っている先生も実際見てきました。命を預かる仕事ですから、そのストレスや重圧は並大抵ではないと想像します。とくに精神科医・心療内科医は、患者さんの自殺に遭遇するケースも珍しくなく、保険会社の人を駐車場でよく見かけたりします。そのたびに、日々患者さんやそのご家族に向かい合っておられるのだな、と尊敬しつつ、何かサポートできることはないかな、と考える日々です。

そういう風に信頼して尊敬していただけに、今日の出来事はショックでした。

私は先生方に直接面会してお話ができる良いポジションにいることに感謝して、少しでも依存症が先生方にとって身近になることを願って啓発活動していきたいと思います。

そのために、私は自分が依存症であることを決して隠したりしたくないと思います。

私の人生の一部です。過ちであったとしても、依存症は私の大切な血肉です。それ無くして私の今までの人生は語れない。隠して語ったとしたら、それは嘘です。私は嘘は嫌いです。

そして、依存症になった背景もすべてひっくるめて、自分を認めて歩いていきたい。

精神疾患を抱える人々は、自己肯定感が低く、日々を一生懸命耐えて生きている。

そういう病んだ部分を抱える人間が再び顔をあげて明るいところを歩んでいくには、今まで歩いてきた陰の道をちゃんと認めてあげること、自分自身で受け容れることなくして実現しないのではないでしょうか。

それを信じ見守ることこそ、精神科医や心療内科医である先生方の使命の一端ではなかったでしょうか。

失望させないでほしいです。

参考文献として、今勉強している『ASKアルコール通信講座 基礎クラス』テキストを推奨いたします。すごくよくまとまっていて、勉強になります。一部引用させていただきました。興味のある方はぜひ受講してみてください。

(http://www.a-h-c.jp/course/4638)

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コメント

  1. MICHAEL より:

    大変残念な経験をされましたね。

    私も自分や家族の診察で、何人もの精神科医と出会いましたが、素晴らしい方がおられる反面、人としてどうかと思われる方にも会いました。医者もピンキリです。

    むしろ医者のような高学歴の職業は、ASDの方が多いのではないか、と言う印象を持ってます。他にも教師とか警官とか、教条的な認知の仕方や思い込みの強さ、共感のなさ、ルーティンに強い所などが共通するように思います。

    私も偏見や差別をなくしたい思いから、自分が依存症であることを打ち明けたりしてます。自分と言う人間を知ってもらった上で、相手を観察して大丈夫そうだと判断してからですが、時々判断を誤って痛い思いをしています。
    医者って外面がいいんで、騙されるんですよね。

    • ちあき より:

      コメントありがとうございます。様々な人がいますよね。
      依存症はいまだに医療関係者にこそ偏見があるものと考えて、地道に活動していけたらなと思っています。